
韓国、年金基金の取引管理にブロックチェーン導入を検討=報道
韓国国民年金公団、ブロックチェーン導入検討か
韓国の地元メディア「ソウル経済」は2025年4月7日に、韓国の国民年金公団(NPS)が運用する巨額の年金基金の取引管理にブロックチェーン技術の導入を検討していると報じました。
報道によると、NPSは年金基金の入出金や投資取引の記録をより安全で透明に管理するため、ブロックチェーン技術導入に向けた検討を進める方針です。
NPSは近く「事前規格公開(RFI)手続き」に着手し、ブロックチェーン関連企業や専門家から意見を募ります。この事前規格公開は、政府・公的機関が事業発注前に内容や方向性を公開し、利害関係者から具体的な意見を集める韓国の大規模公共事業における標準的な手順です。
現地メディアによれば、NPSはこれらのフィードバックを踏まえ、基金会計システムへのブロックチェーン活用に関する調査研究を発注する計画です。
この調査研究を通じて、NPSはブロックチェーン導入の具体策やスケジュール、期待される効果について検討します。また、導入後の既存システムとの連携や情報セキュリティの強化策についても専門家の意見を取り入れ、年金基金のITインフラ全体の刷新を視野に議論を進める見通しです。
今回の取り組みはNPSが暗号資産(仮想通貨)に投資することを意味するものではなく、あくまで年金基金の会計システムにブロックチェーン技術を活用し、取引記録を安全かつ改ざんが困難な形で保存することが目的だと強調されています。
ブロックチェーンの仕組み
年金管理でブロックチェーンに期待される透明性
NPSがブロックチェーン技術の導入を検討する背景には、年金基金の取引データの改ざん防止と透明性の向上が求められていることがあります。
ブロックチェーンは取引情報をネットワーク参加者間で共有する仕組みであり、データの改ざんが事実上不可能とされています。そのため、約1,000兆ウォン(約100兆円)超の巨額資金を運用するNPSにとっては、取引記録の信頼性向上や管理効率化につながる可能性があると期待されています。
NPSは、年金基金の預金・引出・投資管理など一連の取引記録システムへのブロックチェーン統合を検討しており、透明性や安全性の強化を通じて不正防止や運用コスト削減の効果を見込んでいると報じられています。
特にNPSは、ブロックチェーンの共有台帳で取引記録を改ざんから守れるかに関心を寄せています。これは数百万人の国民の老後資産を預かる同公団にとって極めて重要な課題です。
ブロックチェーン活用で犯罪防止を図る
世界で広がる年金基金のブロックチェーン活用
年金基金の管理にブロックチェーンを取り入れる動きは、世界的にも徐々に広がっています。
代表例として、国連職員年金基金(UNJSPF)が2020年にブロックチェーンと生体認証を組み合わせた新アプリを導入しました。これまで紙の書類で行っていた受給者の毎年の生存証明(支給資格確認)を、顔認証とブロックチェーン上のデジタルIDで代替するもので、40か国・250名以上を対象としたパイロットテストで成功を収めています。
UNJSPFの新システムでは、退職者のデジタルIDをブロックチェーン上で作成・検証・保管して不正を防ぎ、位置情報も活用して受給者が所定の地域に居住していることを確認します。さらに給付記録などの取引を改ざん不可能な台帳に記録する仕組みを実現しています。
これにより、新型コロナ禍で郵便サービスが不安定な中でも年金給付の継続確認が円滑に行えるようになり、手続きが大幅にデジタル化・効率化されたと説明されています。
また、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2024年3月、運用多様化の調査研究の一環としてビットコインなど暗号資産に関する情報提供を民間から募る方針を発表しており、年金分野でのブロックチェーン・暗号資産活用を探る動きが世界的に広がりつつあります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1韓国ウォン=0.10033円)
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Source:ソウル経済報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像