
ガーナ政府、ブロックチェーン導入で金の違法輸出を追跡|新法案も審議で税収回復を図る
金の違法輸出対策でブロックチェーン活用
ガーナの地元メディア「Daily Graphic」が2025年3月26日に、同国政府が金の違法輸出対策の一環として、ブロックチェーン技術を活用した金(ゴールド)取引追跡システムを導入していることを報じました。
一部の採掘地域でこの追跡システムのパイロット運用が開始されており、良好な結果が報告されているとのことです。
報道によると、この内容は貴金属マーケティング公社(PMMC)のCEOであるサミー・ギャムフィ氏がテレビ番組内で明らかにしたもので、現在議会で審議中の新法案「ゴールドボード法案」にも盛り込まれています。
新たに計画されているシステムでは、全認可採掘者を国家データベースに登録し、金の生産ロットごとに固有のデジタルコードが付与されます。金が採掘者から買い手、輸出業者へと渡る全ての取引がリアルタイムでブロックチェーン上に記録され、徹底的に追跡されます。
この法案が可決されれば、新設のガーナ金取引委員会(ゴールドボード)が正式に発足します。
米政府もブロックチェーン導入を検討か
ガーナの金密輸問題の深刻な実態
ガーナはアフリカ最大の金生産国ですが、違法な小規模採掘や密輸による収益の流出が深刻な問題となっています。
2022年には約60トンもの金(約12億ドル/約1,800億円相当)が国外へ不正輸出されたと推計され、毎年約20億ドル(約3,000億円)規模の歳入を金の違法流通で失っているとギャムフィ氏が明らかにしています。
こうした違法金取引は国際的な犯罪組織の資金源にもなり得ることから、ガーナ政府は対策の強化を急いでいます。
政府はゴールドボード計画のほかにも金産業の統制を取り戻す包括的な施策を展開しており、英国との協力で国境における密輸摘発体制を強化する一方、中央銀行による積極的な金買い入れや税制優遇措置といった経済的インセンティブ策も講じています。
ガーナ政府は認可された小規模鉱山で産出された金を一括で買い上げて流通を厳密に管理することで、鉱山労働者に公正な価格を保証し、税収回復を目指しています。
ブロックチェーン活用で犯罪対策
ブロックチェーンによる資源国の不正防止対策
金のサプライチェーン管理にブロックチェーン技術を活用し、不正流通を防止する取り組みは、ガーナ以外の国々でも進められています。
ルワンダ政府は、自国が主要産出国であるレアメタルのタンタルについて、英国のブロックチェーン企業と提携し、採掘から精錬までを追跡するプロジェクトを進めています。生産履歴を透明化し、紛争地域由来の鉱物が混入しないよう保証することで、紛争鉱物の根絶に貢献すると期待されています。
また、大手ダイヤモンド企業のデビアス社は、自社のダイヤモンドについて採掘から流通までの各工程をブロックチェーンに記録し、紛争ダイヤモンドの市場流入を防ぐ試験運用を行っています。
ガーナ政府が導入したこの計画は、国家規模でブロックチェーン技術を鉱業分野に活用する同国初の事例となります。同政府はこの革新的な取り組みで違法な金取引を防止し、失われていた税収の回復と通貨の安定化を目指しており、資源国におけるモデルケースになることが期待されています。
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Source:Daily Graphic報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像