
三井住友FG・三菱UFJ、ステーブルコイン市場参入へ|初の円建て発行やRWAトークン化も
国内メガバンクがステーブルコイン市場参入
日本の金融業界で、ステーブルコイン市場への参入が活発化しています。2023年6月に施行された改正資金決済法により、ステーブルコインが「電子決済手段」として正式に認められたことを契機に、国内メガバンクが本格的に動き出しました。
銀行間の競争激化、国際送金や企業間決済の迅速化と効率化を背景に、各銀行が特色ある取り組みを開始しています。
三井住友FG:ステーブルコイン商用化を検討
4月2日、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)と三井住友銀行は、米Ava Labs(アバランチ開発企業)、Fireblocks、国内IT大手のTISと、ステーブルコイン事業化を見据えた検討を開始すると発表しました。これに伴い、具体的な利活用に関する基本合意書を3月21日付で締結しています。
この共同検討では、銀行間・企業間の大口決済で耐えうるステーブルコインの発行・流通に必要な具体的要件を定義するほか、ステーブルコインの特性を活かしたユースケースの探索も進められます。
また、国債・社債・不動産など現実世界資産(RWA)のトークン化に伴う決済手段としての需要を踏まえ、参加各社は国内外でトークンビジネスの普及を後押ししていく方針です。
SMBCグループによる先進企業との協業は、日本の金融機能の効率化・高度化につながる新たな決済インフラとして期待されています。
三菱UFJ信託銀行:国内初の円建てステーブルコイン
一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ信託銀行も、法定通貨に連動する円建てステーブルコインのサービス開始に向け、準備が最終段階にあることが報じられました。
読売新聞の報道によると、このステーブルコインは、改正資金決済法で定める「電子決済手段」として国内初の発行となる見通しで、同行が運営するデジタル基盤「Progmat(プログマ)」を活用して準備を進めています。
三菱UFJ信託の円建てステーブルコインは、まず温室効果ガス排出量の取引市場であるカーボンクレジット取引での決済手段として活用を開始し、将来的には貿易決済など企業間の大口取引への展開も視野に入れているとのことです。
三菱UFJ信託銀行の窪田社長は「コストが安く決済も早い。ステーブルコインは画期的で社会課題の解決に役立つ」と評価し、従来の複数の銀行を経由する越境送金と比べて手数料を大幅に削減できると強調しています。
同行は「Progmat Coin(プログマコイン)」と呼ばれるステーブルコイン発行プラットフォームを活用し、STANDAGE社やGinco社と共に2024年から貿易決済への応用を検討してきました。国内におけるデジタル通貨の実用化を先導し、具体的なユースケースを生み出す取り組みを進めてきたことも報じられています。
また、窪田氏はステーブルコイン事業やスタートアップとの協業など新規事業分野で2034年までに粗利益300億円規模を目指す方針を示しており「新規事業を積極的に推進することが企業の成長につながる」と意気込みを語っています。
国内銀行のステーブルコイン戦略
国内ステーブルコイン市場では、メガバンクを中心に競争が本格化しつつあります。
三井住友FGは海外の有力ブロックチェーン企業との提携を進め、企業間決済やRWAトークン化に焦点を当てています。一方の三菱UFJ信託銀行は、円建てステーブルコインの国内初の商用化を目前に控えています。
こうした動きを受け、2023年の規制緩和以降、大手銀行に加え民間企業によるサービス展開も相次いでいます。銀行の積極参入により、今後さらに市場拡大が加速すると期待されています。
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Source:三井住友FG公式発表 / 三菱UFJ信託(読売報道)
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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