アジア富裕層、ドル離れが鮮明に
スイス金融大手UBSのアジア太平洋地域ウェルスマネジメント共同責任者エイミー・ロー氏が2025年5月13日、アジアの富裕層投資家の間で「米ドル建て資産から金(ゴールド)や仮想通貨などへの資産シフトが進んでいる」と語ったことが明らかになりました。
この発言は、香港で開催されたブルームバーグ主催のイベントで述べられたもので、UBSの富裕層顧客が徐々に米ドル資産から撤退し、金や仮想通貨(暗号資産)、中国関連資産へ資金を移していると説明しています。
「もはや保有しないことがリスク」
金・仮想通貨などの代替資産に注目が集まる
ロー氏は「金融市場の変動性(ボラティリティ)は今後も続くことは間違いない」と述べ、金融市場の不安定な状況が長期化するとの見通しを示しました。
同氏によると、米中間の貿易摩擦が高まる中、富裕層投資家たちは従来の米国中心の投資ポートフォリオから脱却し、安全資産と成長市場の双方を組み込んだ多様な資産配分へと見直しを進めています。
投資家たちは米ドル以外の通貨建て資産を積極的に検討し始め、仮想通貨や金などのコモディティといった代替資産への投資比率を高めています。
最新の市場調査によれば、アジア太平洋地域の富裕層投資家の76%以上がインフレ対策や米ドル価値の低下リスクへの対応策として、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨に投資していることが明らかになっています。
「安全資産はビットコインが主流に」
中国市場への再評価も
また、これまで敬遠されがちだった中国市場にも富裕層の関心が急速に回復しつつあります。
ロー氏によれば、ここ数ヶ月間、これまで中国への投資を避けていた顧客からも、中国市場の投資機会について積極的な問い合わせが増えているといいます。
香港の主要株価指数は2024年に世界トップクラスの上昇率を記録しており、中国関連資産の再評価を後押ししています。
こうした米ドル離れの背景には、米中対立などの地政学的リスクの高まりや市場の先行き不透明感に加え、継続するインフレ圧力や進行するドル安への警戒感もあると見られています。
グローバル投資家にも広がる「ドル離れ」現象
グローバル投資家によるドル離れの動きが明確にデータに表れ始めています。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が今年5月初旬に公表した最新のレポートによると、世界の機関投資家が保有する米ドル資産の比率は過去19年間で最低水準となる18.5%にまで低下しました。
また、モルガン・スタンレーのアジア地域ウェルスマネジメント部門のクリスティーナ・オウヤン氏は、米中両政府による関税一時緩和の合意が「投資家心理を押し上げた」と述べており、アジア富裕層の間でリスク意識が高まっていることを指摘しています。
米国と中国は5月11日、互いの輸入品に課していた関税を一時的に引き下げることで合意しており、この措置も投資家心理の改善につながったと考えられています。
「BTC・金・銀」が生き延びる手段
米ドル不安で資産シフトが加速
一方、仮想通貨が「価値の保存手段」として注目され始めている動きも報告されています。
仮想通貨取引所BitMEX創設者のアーサー・ヘイズ氏は今年4月、自身のX(旧Twitter)で「米国債や米国株の時代は終わり、今後は金とビットコインが世界の準備資産になるだろう」との見解を示しました。
米ドル中心の国際金融システムに対する不信感を表すこうした専門家の見解は、世界中の富裕層による具体的な資産シフトの動きと連動しており、金融市場における新たなパラダイムシフトの可能性を示唆しています。
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Source:ブルームバーグ報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像