韓国政府、仮想通貨企業をベンチャー認定へ
韓国の中小企業・スタートアップ省は2025年7月9日、仮想通貨(暗号資産)関連企業をベンチャー企業として登録可能にする法改正案を発表しました。
同改正案が成立すれば、仮想通貨取引所などの事業者も正式にベンチャー企業として認定され、税制上の投資減税や金融支援などの優遇措置を受けられるようになる見通しです。
同省は「この改正によりベンチャー生態系の活性化・拡大につながり、仮想通貨産業の育成が促進される」と説明しており、2018年の制度変更以来約8年ぶりに仮想通貨業界がベンチャー支援の対象に含まれる可能性が浮上しました。
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韓国、仮想通貨規制の見直しを本格化
仮想通貨企業「ベンチャー認定除外」背景
韓国では2018年に施行令が改正され、ブロックチェーン技術を活用した仮想通貨の売買や仲介業が、風俗営業やカジノと同様に「射幸性の高い業種」と判断され、ベンチャー企業の支援対象から除外されてきました。
この措置の影響で、当時韓国最大の仮想通貨取引所であったUpbit(アップビット)の運営企業Dunamu(ドゥナム)はベンチャー認定を取り消され、さらに1,800万ドル(約26億円)の法人税を追加で課されています。
ベンチャー認定を失うと、所得税や法人税の減免措置、技術保証基金による信用保証、政府の研究開発(R&D)支援など、主要な起業支援策を利用できなくなります。このため、Upbit社は課税処分を不服として訴訟を提起しましたが、裁判所は同社の主張を退けました。
業界関係者からは「現在の実態を無視して、仮想通貨事業者を射幸性の高い業種と同列に扱うのは不適切だ」といった批判の声も上がっていました。
政府が明確化したベンチャー認定基準
政府が方針を転換した背景には、コイン発行を目的としない技術サービス型ブロックチェーン企業の台頭に加え、市場の信頼回復に向けた動きがあるとみられています。
世界的に大手資産運用会社が仮想通貨を制度的な金融資産として扱う動きが加速する中、韓国政府もその流れを受け、仮想通貨業界を制度の枠組みに取り込む方針を打ち出しました。
一方、実体のないプロジェクトやトークンの発行のみを目的とした企業については、今後もベンチャー認定の対象外となる見通しで、政府は、形式的な要件ではなく、技術力を数値で評価する現行の認定基準を維持する方針を示しています。
今回の改正案には、ブロックチェーンや仮想通貨技術を活用する企業が、一定の技術評価基準を満たすことでベンチャー企業として公式に認定される制度が盛り込まれています。
同省はこの制度改正により「ベンチャー企業のエコシステムが活性化・拡大し、仮想通貨産業の育成が進む」と説明しています。
仮想通貨法制化に向けた李政権の動き
業界からは「仮想通貨は韓国がリードできる新たなデジタル産業だ。制度整備を急ぐべきだ」といった声もあがっており、規制緩和による産業振興への期待が広がっています。
こうした政策の方向性は、仮想通貨に前向きな姿勢を示してきた李在明(イ・ジェミョン)大統領の基本方針とも一致しています。
李大統領は2025年6月の就任直後から、ウォンと連動するステーブルコイン市場の整備を進める方針を示し、ビットコイン現物ETFの承認や国民年金基金による仮想通貨投資の解禁も公約に掲げました。
与党「共に民主党」は企業によるステーブルコイン発行を公式に認める包括法案(デジタル資産基本法)を2025年6月に国会へ提出しており、仮想通貨産業の振興と利用者保護を目的とした法整備が加速しています。
韓国与党、ステーブルコイン発行法案を提出
日本における暗号資産制度改革の兆し
日本国内でも、暗号資産(仮想通貨)に関する規制や税制の見直しが本格的に進められています。
暗号資産利益に一律20%課税案|雑所得扱いからの見直しへ
これまで、個人の暗号資産の売買による利益は「雑所得」として最大55%の総合課税が課されていました。これに対し、政府や与野党は、株式取引と同様に一律20%の申告分離課税へ見直す方向で議論を進めています。
金融庁も2025年内に必要な法改正案の取りまとめを予定しており、暗号資産をこれまでの「支払手段」ではなく「金融商品」として新たに位置づける方向で検討を進めています。
税負担の軽減や国際競争力の向上を求める声を受け、2025年度の税制改正では大幅な見直しが実施される見通しです。
ビットコインETFなども議論対象に
規制面では、金融庁が2025年6月より暗号資産規制の抜本的な改革に着手しました。
6月25日に開催された金融審議会では、暗号資産に関する監督法規を、現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行する方向で検討を開始しました。あわせて、有識者によるワーキンググループの設置も決定されています。
今回の制度見直しでは、ビットコイン現物ETFの国内承認に加えて、トークンの新たな法的分類(証券トークンと非証券トークンの区分)なども検討項目に含まれています。政府は2026年の通常国会に関連法案を提出し、2027年の施行を目指す方針です。
利用者口座数が1,200万を超え、預かり資産が5兆円規模に達するなど、国内暗号資産市場の急拡大を踏まえ、従来の枠組みを見直して投資家保護と市場育成の両立を図る重要な転換点となっています。
米ドル連動型ステーブルコインの取り扱いが本格化
日本国内でも、暗号資産ビジネスの育成に向けた制度整備や支援策が段階的に進められています。
2023年6月に改正資金決済法が施行されたことにより、海外で発行されたステーブルコインを国内の暗号資産交換業者が取り扱うことが可能になりました。
その後、2025年3月にはSBI VCトレードが、国内で初めて米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」の提供を開始しています。
Coincheck(コインチェック)をはじめとする国内の暗号資産取引所も、USDCの取り扱いに向けた準備を進めており、規制緩和を受けてステーブルコイン市場のさらなる拡大が期待されています。
石破首相がWeb3発展に意欲示す
政府・金融当局も暗号資産の位置づけを見直し、健全な発展環境の構築に取り組んでいます。
石破茂首相は2025年2月の国会答弁で、Web3を含む暗号資産の健全な発展について「極めて重要」との認識を示し「利用者保護とWeb3の発展を両立させるため、環境整備を進める」と述べました。
自民党内でも規制緩和を求める声が高まっており、塩崎彰久議員は「暗号資産を金商法上の金融商品に位置づけ20%の分離課税とするべきだ」と国会で提言しています。
こうした官民の取り組みがようやく本格化する中、日本の暗号資産市場は税制と規制の両面で大きな転換点を迎えています。これまで後手に回っていた制度対応を巻き返すかたちで、国際競争力の強化と健全な市場育成を目指す改革が加速しています。
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Source:韓国中小企業・スタートアップ省通達
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