この記事の要点
- Rippleが2026年4月20日、XRPL量子耐性化計画を公表
- XRPLは2028年までに量子耐性署名へ完全移行を目指す
- Google論文は楕円曲線暗号を約9分で解読可能と試算
- XRPの量子攻撃直接露出は流通量の0.03%にとどまる
まずはXRPレジャー(XRPL)を詳しく理解する
XRPL「2028年量子耐性化」4フェーズ計画を公表
米Ripple(リップル)は2026年4月20日、同社が開発するXRPレジャー(XRPL)を量子コンピューターによる攻撃から守るための4段階ロードマップを公式ブログで公開しました。
ロードマップはPhase 1からPhase 4までの4段階で構成され、同社は2028年までに本番ネットへの完全移行を終える方針を示しました。
背景には、Google Quantum AIが2026年3月31日に公開したホワイトペーパーがあります。同論文では、約50万個の物理量子ビットがあれば楕円曲線暗号を約9分以内で解読できる可能性が示され、必要な量子ビット数が従来推計の約20分の1まで縮小したと報告されています。
リップルは、XRPLのアカウントが長期間にわたって公開鍵を露出し続けるほど将来の量子攻撃リスクが蓄積すると警戒感を示し、段階的な移行戦略で臨むべき課題だと強調しました。
「注目すべき進捗」Google論文
「ハーベスト攻撃」対応、XRPLの4フェーズ実装工程
「ハーベスト・ナウ」長期保有ほど高まる量子リスク
リップルはブログで「現行の公開鍵暗号基盤が十分に高度な量子コンピューターの前では解読可能である」とGoogleの研究が示した点を強調しました。
特に警戒すべき手法として、同社は研究者が「ハーベスト・ナウ・ディクリプト・レイター(今収集して後で解読する)」と呼ぶ攻撃モデルを挙げています。
攻撃者が公開鍵などの暗号データをブロックチェーン上から現時点で収集し、量子ハードウェアが成熟した段階で資産の秘密鍵を逆算する手口だと説明しました。
XRPLではアカウントがトランザクションに署名するたびに公開鍵がオンチェーンで可視化されるため、長期保有のアカウントほど将来の量子攻撃リスクが累積するといいます。
こうしたリスクに対処するため、同社は単発のアップグレードではなく段階的な移行戦略で臨む姿勢を示しました。
「鍵のローテーション」XRPLとイーサリアムの差
またリップルは「XRPLが量子対応移行を進めるうえで、他の多くのブロックチェーンより有利な構造をすでに備えている」と強調しています。
同社によると、XRPLにはプロトコルレベルでネイティブな「キーローテーション(鍵のローテーション)」機能が実装されており、ユーザーはアカウント自体を変更せずに、脆弱になり得る鍵から新しい鍵へと段階的に切り替えられるといいます。
リップルはイーサリアムとの違いにも言及しました。イーサリアムではプロトコル層に同等の機能を備えていないため、量子対応移行の際にはユーザーが手動で資産を新しいアカウントへ移すか、スマートウォレットなど高度な手法に頼らざるを得ないとの見方を示しました。
同社はXRPLの優位性として、シードベースの鍵生成によって新しい鍵マテリアルを決定論的に導出できる点にも触れ、協調的なアップグレードや移行を実施するうえで欠かせない要素だと説明しています。
リップルは「これらの機能自体は量子対応の解決策ではないものの、他のネットワークがゼロから構築しなければならない土台がXRPLにはすでに存在する」と述べています。
4フェーズ構成、Project Elevenと検証協働
各フェーズの対応範囲と時期は以下のとおりです。
| フェーズ | 主な内容 | 時期 |
|---|---|---|
| Phase 1 | クォンタム・デイ緊急時対応計画、PQゼロ知識証明による安全移行 | 随時発動 |
| Phase 2 | NIST標準PQC評価、Project Elevenとのバリデーターテスト | 2026年前半 |
| Phase 3 | Devnet上でハイブリッド署名展開、開発者向けテスト | 2026年後半 |
| Phase 4 | 新アメンドメント提案、本番ネット量子耐性完全移行 | 2028年目標 |
ロードマップPhase 1は、現行暗号が突破された場合に備える「クォンタム・デイ(Quantum-Day)」緊急時対応の計画とリップルは説明しています。
同計画では、従来型の公開鍵署名を受け付けない強制移行を実施し、量子耐性ゼロ知識証明によって既存の鍵所有者が資金を量子安全アカウントへ安全に移せる仕組みを用意するとしています。
Phase 2は2026年前半の工程で、量子耐性署名アルゴリズム「ML-DSA」をはじめ、NIST標準の各方式をXRPLのトランザクション実環境で評価する計画です。
このフェーズでは量子耐性暗号プロジェクト「Project Eleven」との協働により、バリデーター(承認ノード)レベルでのテストやDevnetベンチマーク、量子対応カストディ(資産保管)ウォレットのプロトタイプ開発を進めているといいます。
Phase 2での検証を経て、Phase 3は2026年後半に設定されています。この段階では、量子耐性署名を既存の楕円曲線署名と並行稼働させるハイブリッド方式をDevnet上で開発者向けに展開する計画となっています。
Phase 4は2028年を目標とする本番ネットへの完全移行工程で、XRPL新アメンドメント(プロトコル改定)を提案したうえで、量子耐性署名をネットワーク全体にスケールさせるとリップルは述べています。
ビットコイン「未移行なら凍結」
BTC・ETH・XRP、主要3銘柄の量子リスク規模
量子耐性暗号をめぐっては、米国立標準技術研究所(NIST)が2024年8月13日、「ML-KEM」「ML-DSA」「SLH-DSA」の3方式をFIPS 203・204・205として最終承認しました。主要ブロックチェーンは、この3方式を軸に対応方針を相次いで示しています。
Googleの試算によると、ビットコイン(BTC)では約690万BTC(流通量の約3分の1)が公開鍵を露出した状態にあり、Q-day到来時の影響が量的に最大とみられています。
イーサリアム財団も2026年1月に量子対応専門チームを新設したと明らかにしています。同財団は、DeFi(分散型金融)やトークン化資産を含む約1,000億ドル相当のETH資産が潜在リスクにさらされるとの試算を踏まえ、移行計画を詰めていると説明しました。
BTCやETHに対し、Grayscaleの2026年4月報告書は、XRPの量子攻撃への直接露出が休眠大口2アカウント(合計2,100万XRP、流通供給量の約0.03%)にとどまると指摘し、XRPLのPQC実験的展開を「注目すべき進捗」と評価しました。
リップルが2028年完了を掲げる4フェーズ計画の初期段階で示されたこの評価は、XRPL量子対応の先行事例として業界の関心を集めています。
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Source:Ripple公式ブログ
サムネイル:AIによる生成画像



























