FRB、仮想通貨企業向け「決済専用口座」を提案|Fed決済網への直結が視野に

FRB、仮想通貨企業向け「決済専用口座」を提案|Fed決済網への直結が視野に

この記事の要点

  • FRBが仮想通貨向け新口座案、Fed決済網へ直結可能に
  • 残高上限10億ドル、Tier3審査は2026年内停止
目次

FRB新口座案、仮想通貨企業のFed直結が現実味

FRB(米連邦準備制度理事会)は2026年5月20日、フィンテック企業や仮想通貨企業向けの特別目的口座「Payment Account(ペイメント・アカウント)」を新設する規則案を公表しました。

新口座は地区連邦準備銀行が提供する決済専用口座で、FedwireやFedNowなどFRBの主要決済サービスへ直接アクセスできる一方、日中与信や連銀貸出制度(ディスカウント・ウィンドウ)は利用対象外とされています。

預け入れ残高への利息付与も行われず、利用可能サービスは「Fedwire」「FedNow」「NSS(国家決済サービス)」「Fedwire証券(無償振替のみ)」の4種類に限定されており、残高不足時には取引を自動拒否する仕組みも組み込まれています。

FRBは信用供与を伴わない決済専用制度として整備を進めており、従来のFedマスター口座とは異なる限定的なアクセス枠として位置付けています。

仮想通貨(暗号資産)・フィンテック企業はこれまで通常のFedマスター口座取得を求めてきたものの、預金保険対象外機関には厳格な審査が適用され、多くの申請が長期間保留されてきた経緯があります。

今回の制度案が導入されれば、対象企業は中継銀行を介さずFed決済網へ直接接続できるようになるため、仮想通貨取引所の入出金処理やドル建て送金インフラにも変化が及ぶ可能性があります。

残高制限と年内停止、賛否割れる規則案

10億ドル上限と決済4サービスの限定

今回の規則案では、リスク抑制策の一環として、営業終了時の残高に上限を設ける「Closing Balance Limit(クロージング・バランス・リミット)」が新たに設定されました。

残高上限は各地区連銀が決済規模に応じて個別設定する仕組みとなっており、上限額は最大でも10億ドル(約1,580億円)を超えてはならないと定められています。

一方、日中残高には上限を設けず、決済処理に必要な流動性は維持できる仕組みとなっており、FRBは過去5年間の地区連銀口座残高分布を踏まえ、10億ドル水準で既存口座の約97%をカバーできると説明しています。

FedACH(ACH決済網)については、債務取引と債権取引が混在する仕組み上、自動的な残高不足チェックが難しいことから今回の利用対象から外されています。

項目 Payment Account Master Account
日中与信 不可 条件付き可
連銀貸出制度 不可 利用可
残高利息 付与なし 付与あり
残高上限 最大10億ドル 原則なし
利用可能サービス 4サービス限定 全サービス
審査期間目安 90日(Tier2/3) 明示なし

Tier3審査停止と45日90日の標準化

FRBは今回の提案とあわせて、各地区連銀に対し、「Tier3」に分類される非連邦預金保険対象機関からの口座申請審査を一時停止するよう要請したことも明らかにしました。

今回の停止措置は制度確定までの暫定対応と位置付けられており、地区連銀ごとの審査基準のばらつきを抑え、新制度導入後の運用を統一する狙いがあるとされています。停止期間は2026年12月31日までが想定されています。

あわせて審査期間の目安も明文化され、Tier1(連邦預金保険対象機関)は45日、Tier2およびTier3のPayment Account申請は90日を標準処理期間とする方針が盛り込まれています。

バー理事が反対、銀行業界も警戒

今回の規則案についてはFRB理事会内でも見解が分かれており、マイケル・バー理事は新口座が不正金融に使われないための安全措置が不十分だとして反対票を投じています。

バー理事は反対声明のなかで、AML(マネーロンダリング対策)・BSA(銀行秘密法)への対応について、FRBが直接検査・点検を行う仕組みが盛り込まれていない点を具体的な懸念として挙げました。

銀行業界でも以前から、規制水準の異なる仮想通貨・フィンテック企業にFed決済網への直接アクセスを認めれば、業務運営や流動性管理に新たなリスクが生じるとの懸念が出ていました。

今回の提案は、トランプ大統領が決済口座アクセス見直しを求める大統領令に署名した翌日に公表されており、ホワイトハウス側でも金融規制見直しの動きが進められています。

Fed直結を巡る競争へ、新口座制度がパブコメ入り

米国では2026年3月、仮想通貨取引所Kraken(クラーケン)が仮想通貨企業として初めて条件付きでFedマスター口座を取得しており、今回の新口座制度を巡る議論に先行する事例となっています。

Ripple(リップル)・Anchorage Digital(アンカレッジ・デジタル)・送金フィンテック企業Wise(ワイズ)も同口座取得を目指していると伝えられており、Fed接続を巡る申請や協議は他の仮想通貨・フィンテック企業にも広がっています。

規則案のパブリックコメント期間は連邦官報掲載日から60日間とされており、銀行業界からの慎重論と仮想通貨・フィンテック業界からの賛同が交錯するなか、寄せられた意見を踏まえて制度設計がさらに詰められる見通しです。

制度確定後は、どの企業が最初にPayment Account申請へ動くのかが注視されており、Fed直接接続を前提とした決済・送金インフラ整備も各社で進められています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=円)

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Source:FRB規則案
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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