「ブロックチェーン技術を活用した投票システムを導入する」というニュースで話題を集めていたアメリカ合衆国のウエストバージニア州は、11月に予定されている中期選挙での「不在者投票」のために構築されたBlockchainベースの「モバイルアプリケーション投票システム」を実際に使用し始めたと報告されています。
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ウエストバージニア州の「ブロックチェーン投票システム」とは
アメリカ・ウエストバージニア州はブロックチェーン技術を活用することによって、選挙投票に透明性をもたらし、国外での任務に配属された軍人などでも投票に参加できるようにすることを主な目的としています。
ボストンに拠点を置くアプリ開発企業「Voatz(ボーツ)」によって開発されているこのアプリケーションには「顔認証技術」なども取り入れられており、あらかじめ定められている基準をクリアした人のみが実際に投票に参加できるように設計されています。
このアプリケーションは投票時の匿名性などにも配慮した革新的な設計となっているものの、従来の”紙ベースの投票制度”を完全に置き換えるためのものではないため、参加者はどちらの方法で投票を行うかを選択することができるようになっています。
ブロックチェーン投票システムに対する反対意見
ブロックチェーン技術を用いた遠隔投票システムは、2018年3月に導入に向けたテストが開始されており、5月の時点では問題なく完了したと報告されています。安全性などの問題はこれまでに続けられてきたテストの結果を元に『実際に導入することができる』という判断が下されているものの、選挙投票は国の今後にも大きく影響する重要なものでもあるため、いくつかの問題点を懸念する声も出ています。
民主主義技術センターのチーフ・テクノロジー・ディレクターであるJoseph Lorenzo Hall(ジョセフ・ロレンソ・ホール)氏は、セキュリティ面などの観点から”モバイル投票”という新しい投票方法が誕生したことに対して「恐ろしい考え方」だと述べています。
また、選挙保全監視団(Verification Voting)のMarian K. Schneider(マリアン・K・シュナイダー)氏は、ブロックチェーン技術を活用した「モバイル投票」は良いものだと思うか?という質問に対して、はっきり『ノー』と回答しており、「Voatzアプリ」のセキュリティが確保されていても「モバイル投票」では攻撃領域がはるかに広いと説明しています。
世界各地で導入される「ブロックチェーン投票」
ブロックチェーン投票に対する批判的な声は依然として多く報告されているものの、すでにアメリカだけでなく、ロシア、ウクライナ、ケニア、日本などの地域でも、具体的な活用にむけた研究なども進められています。
日本で進められているのは選挙投票のための投票システムではなく、茨城県つくば市の取り組みの企画提案の最終審査で導入されています。
これらの先進国がすでに実際に活用し始めていることを考えると、ブロックチェーン技術を用いた「電子投票システム」は、今後もより多くの地域で実際に活用し始められることになるのは間違いないと考えられます。
今のところこのシステムによる大きな問題などは報告されていませんが、「伝統的な選挙投票の形を大きく変えることになる新しい投票システム」であることは間違いないため、今後も大きな議論の対象となるのは避けられないと考えられます。具体的にどのような国や地域がこの投票制度を採用していくかには、各地域がどのような考え方を示しているのかがはっきりと現れてくることになるでしょう。
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