仮想通貨「カントンネットワーク(CC)」ウォール街が採用した新世代基盤を解説

仮想通貨「カントンネットワーク(CC)」ウォール街が採用した新世代基盤を解説

2026年3月25日、仮想通貨取引所SBI VCトレードが、国内で初めてカントンコイン(Canton Coin/CC)の取扱いを開始しました。

同じ時期、ウォール街では世界最大の証券清算機関DTCCが、カントンネットワーク上で米国債のトークン化に向けた実証を進めています。月次4兆ドルを超えるレポ取引も、すでに本番環境で稼働しています。

カントンネットワーク(Canton Network)は、ゴールドマン・サックス・HSBC・BNPパリバ・ユーロクリアなど、世界の大手金融機関が参加する機関投資家向けのブロックチェーンインフラです。「伝統金融のインターネット」とも呼ばれ、不動産や国債などの現実資産をデジタル化する「RWAトークン化」の基盤として存在感を強めています。

この記事では、カントンネットワークの仕組みや参加機関に加え、ネットワーク内の手数料や報酬で使われる独自トークン「カントンコイン(CC)」の特徴、日本での購入方法まで、2026年4月時点の情報をもとに整理します。

目次

カントンネットワーク(Canton Network)とは?

カントンネットワークの画像

Canton Networkの概要と開発背景

カントンネットワーク(Canton Network)は、Digital Asset社が10年以上かけて開発してきた機関向けブロックチェーンプロトコルを基盤として、2023年5月に稼働を開始しました。

2024年7月1日にはグローバルシンクロナイザー(Global Synchronizer)の本番用ネットワークが正式に稼働し、ネイティブトークンであるカントンコイン(CC)の発行も始まりました。

開発の背景には、既存の金融市場インフラが抱えてきた構造的な課題があります。銀行・証券会社・決済機関・資産運用会社は、それぞれ独自のシステムで資産や取引データを管理しており、機関同士のデータは分断されたままで、システム同士が連携しにくい状態が続いてきました。

こうした分断は、証券決済の遅延や担保の非効率な固定、手動照合に伴う人的コストなどを招いてきました。カントンネットワークは、別々の金融機関のシステムをリアルタイムでつなぎ、必要な相手にだけ情報を見せながら取引できるよう設計された仕組みです。

その位置づけは「パブリック・パーミッションドブロックチェーン」とされており、ビットコインイーサリアムのような完全なパブリックチェーンでも、特定企業が管理する完全なプライベートチェーンでもない、中間的な構造を採用しています。

公式サイトはcanton.networkで公開されており、カントン財団がネットワーク全体のガバナンスを担っています。

「ネットワークのネットワーク」という設計思想

カントンネットワークは、単一の巨大なブロックチェーンではありません。「ネットワークのネットワーク(Network of Networks)」という考え方のもと、各参加機関が独自の「サブレジャー(同期ドメイン)」を運用しながら、必要に応じて相互接続できる構造を採用しています。

たとえばGoldman SachsとHSBCがそれぞれ独自のドメインで資産を管理しつつ、両者の間で取引が発生した場合には、グローバルシンクロナイザーを通じてアトミック(分割不可能)に決済が完了します。

ここでいう「アトミック」とは、取引の全工程がまとめて成立するか、あるいは全て取り消されるかのいずれかであり、一方だけが先に履行されることはありません。片側の送金だけが完了し、相手側の受け取りが失敗するような決済リスクを構造的に抑えられる仕組みです。

この設計はインターネットの考え方に近いとされています。インターネット自体は公開されたインフラですが、各企業のウェブサイトやシステムへのアクセスには認証が必要です。同様にカントンネットワークでも、ネットワーク自体はオープンでありながら、各アプリケーションごとに個別のアクセス制御を設定できます。

Global Synchronizer(グローバルシンクロナイザー)の役割

グローバルシンクロナイザーは、カントンネットワーク全体を支える中核コンポーネントです。

各同期ドメイン間でやり取りされる取引メッセージに順序を付け、取引内容そのものを共有せずにネットワーク全体の整合性を維持します。つまり、機密情報を外部に開示することなく、異なる機関のシステム間でアトミックなクロスアプリケーション取引を成立させる仕組みです。

このグローバルシンクロナイザーは、「スーパーバリデーター」と呼ばれる複数の独立機関によって運営されており、一部に障害や不正があっても、全体として正しい判断を維持できる仕組みを採用しています。全体の3分の2以上のスーパーバリデーターが同意した場合にのみ取引や重要な決定が確定するため、単一障害点を持たない分散型の運営体制が確保されています。

スーパーバリデーターにはChainlink Labs・SBI Digital Asset Holdings・Broadridgeなどが参加しており、金融機関とブロックチェーン企業の双方がネットワーク運営を支えています。

カントンネットワークの仕組みと技術的特徴

カントンネットワークの画像

プライバシー保護の仕組み

従来のパブリックブロックチェーンでは、すべての取引データがネットワーク参加者全員に公開されます。イーサリアムやビットコインでは、ブロックエクスプローラーを通じて誰でも取引の詳細を確認できます。

金融機関がこの仕組みをそのまま採用しにくい理由は明確です。取引相手や保有ポジション、担保の内訳、取引金額まで公開されれば、競合他社に経営上の重要情報が把握されかねません。規制当局への情報開示義務があったとしても、それは当局に対するものであり、市場参加者全体への公開とは意味が異なります。

カントンネットワークは、「サブトランザクションプライバシー」と呼ばれる独自技術によってこの課題に対応しています。各参加者が保持・閲覧できるのは、自らがステークホルダーであるコントラクト(取引)のデータに限られ、無関係な取引内容は見えない仕組みです。

取引の可視性は、関係当事者と許可された監査主体のみに限定されます。一方で、ネットワーク全体の整合性は暗号技術によって担保されており、プライバシー保護と整合性維持を両立しています。

GDPRをはじめ、各国の金融規制が求める情報管理基準への対応も、この設計によって可能になります。

アトミックコンポーザビリティと水平スケーラビリティ

カントンネットワークの技術面で注目される要素の一つが、アトミックコンポーザビリティ(複数の処理をひとつの取引として安全にまとめる)です。

複数の異なるアプリケーションにまたがる取引を、単一のアトミック操作として処理できます。たとえば、証券の引き渡し(Delivery)と現金の支払い(Payment)を同時に確定させる「DVP(Delivery versus Payment)」決済を、複数機関のシステムを横断してリアルタイムで実行できます。

スケーラビリティの面では、水平スケーリングを前提とした設計が採用されています。1本の大きなチェーンに処理を集中させる構造では、取引量の増加に伴ってネットワーク全体がボトルネックになりやすいのに対し、カントンネットワークでは独立した同期ドメインが並列で処理を行うため、規模の拡大に応じてスループット(処理できる取引量)も高めやすい構造です。

2026年3月時点で月次4兆ドル超のレポ取引を処理しているものの、ネットワークの拡大に伴って処理能力の上限が直ちに制約になりにくい設計とされています。

DAMLスマートコントラクト言語とは

カントンネットワーク上のアプリケーションは、Digital Assetが開発した「DAML(Digital Asset Modeling Language)」という専用のスマートコントラクト言語で構築されています。

DAMLはSolidityのような汎用スマートコントラクト言語とは異なり、スマートコントラクトの権限や可視性、コンプライアンス要件を細かく定義できるように設計されています。「誰が何を見られるか」「誰が何を実行できるか」をコード上で明確に記述できるため、規制要件への対応を進めやすい点が特徴です。

DAMLはオープンソースとして公開されており、Canton上だけでなく、他のブロックチェーンや既存のデータベースシステムとの統合にも使われています。金融機関がDAMLで開発したアプリケーションを、段階的にCanton上の本番環境へ移行する事例も増えています。

参加機関とユースケース:ウォール街が選んだ理由

ウォール街の画像

主要参加機関一覧

カントンネットワークには、2026年3月時点でグローバルの主要金融機関やテクノロジー企業が参加しています。

カテゴリ 主な参加機関・企業
証券インフラ DTCC(米国証券決済機関)、ユーロクリア、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)、ユーロネクスト
銀行・証券会社 ゴールドマン・サックス、HSBC、BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、ドイツ銀行
資産運用 フランクリン・テンプルトン、トレードウェブ
テクノロジー マイクロソフト、チェーンリンク・ラボ、SBIデジタルアセットホールディングス
カストディ・インフラ ビットゴー、ブロードリッジ、カンバーランドDRW
ステーブルコイン サークル(USDC発行元)、ブレイル

これらの機関がカントンネットワークを選んだ背景としては、プライバシー要件への対応、既存の金融規制フレームワークとの整合性、アトミックな決済能力の3点が共通して挙げられます。

DTCCは米国証券市場で毎日数兆ドル規模の決済を担う中核インフラです。そのDTCCがカントンネットワークの採用を進めていることは、従来のブロックチェーンプロジェクトでは十分に示しきれなかった「規制対応型インフラとしての実用性」が評価されていることを示す動きとして受け止められています。

レポ取引・担保管理:月次4兆ドル規模の実績

カントンネットワーク上で最も大きなユースケースとなっているのが、レポ取引(Repo)と担保管理(Collateral Management)です。

レポ取引とは、国債などの証券を担保に短期資金を調達する金融取引であり、金融機関の日常的な資金調達手段の一つです。従来は翌営業日決済(T+1)が一般的でしたが、カントン上では24時間365日のリアルタイム決済が可能になっています。

2026年3月時点のデータでは、カントンネットワーク上での月次レポ取引処理額は4兆ドルを超え、日次では3,500億ドル規模の取引が処理されています(Canton Network公式サイト)。

担保管理の分野では、「グローバル・コラテラル・ネットワーク(Global Collateral Network)」と呼ばれる仕組みが稼働しており、複数の金融機関が保有する担保資産をリアルタイムで最適化しながら移動させることができます。

2026年1月15日には、Euroclear・Euronext・LSEG・TreasurySpring・Societe Generale・Tradeweb・Virtu Financialによるコンソーシアムが、カントン上で第3回クロスボーダーレポ取引を完了したと発表しました。この取引では、LBSEのデジタル決済ハウス(LSEG DiSH)が提供するトークン化銀行預金を決済手段として用い、複数の通貨や資産を使った国際的な短期資金取引が実現しています。

RWAトークン化:米国債・ファンドの本番稼働事例

RWA(現実資産)トークン化の分野でも、カントンネットワーク上での実運用が進んでいます。

Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)は、運用資産総額1.5兆ドルを抱える米大手資産運用会社です。同社はトークン化ファンド基盤「Benji Technology Platform」をカントンネットワークに拡張し、銀行・マーケットメイカー・トレーディング企業向けにトークン化ファンドやデジタル投資商品の提供を始めています。

また、Circle社のステーブルコインUSDCのカントン版である「USDCx」もネットワーク上で稼働しており、機関間のステーブルコイン決済に使われています。Brale社が発行する「SBC」も、カントン上のステーブルコインとして機能しています。

2026年3月時点でカントンネットワーク上に発行・処理されたトークン化資産の累計は8兆ドルを超えるとされており、機関向けRWAインフラとして世界有数の実績を持つネットワークとなっています。

2026年最新動向:DTCC米国債トークン化・Chainlink統合・BitGo対応

2025年末から2026年にかけて、カントンネットワークの機関採用はさらに進んでいます。直近の主な動きを整理します。

DTCCによる米国債トークン化(2025年12月発表)
DTCCがカントンネットワークを基盤に米国債のトークン化MVPを展開する計画を発表しました。ComposerXプラットフォームを通じて、DTC管理下の証券の一部をトークン化する取り組みで、2026年上半期の開始を目標としています。米SECからノーアクションレターも取得しており、規制の枠内で進められる計画です。

Chainlink(チェーンリンク)のCanton統合(2026年2月25日)
チェーンリンク(Chainlink/LINK)がCanton上でのData Streams・SmartData・Proof of Reserveの本番稼働を発表しました。これにより、機関向けRWAで求められるリアルタイム価格データ、担保検証、資産裏付け確認の機能が整い、Canton上のオラクル基盤(外部データをブロックチェーンに取り込む仕組み)が本格的に動き始めています。

BitGoによるCC統合カストディ(2026年3月31日)
米国の規制対応カストディ企業BitGoは、カントンコインのカストディ・OTC取引・電子決済をGo Networkで一体的に提供するサービスを発表しました。「米国初の規制準拠ワンストップCC取引インフラ」として、機関投資家向けの取扱いを拡大しています。

TransakによるフィアットブリッジCanton統合(2026年3月31日)
決済インフラプロバイダーのTransakは、カントンネットワークへのフィアット(法定通貨)入金ブリッジを統合しました。これにより、クレジットカードや銀行振込などを通じてカントンコインを直接取得できる環境が整いつつあります。

カントンコイン(Canton Coin/CC)とは?

カントンコインの画像

CCの役割:ユーティリティトークンとしての位置づけ

カントンコイン(Canton Coin/CC)は、カントンネットワークのグローバルシンクロナイザー上で利用されるネイティブユーティリティトークンです。

主な用途は以下の通りです。

  1. ネットワーク手数料の支払い:グローバルシンクロナイザーの利用に伴うアプリケーション手数料の支払いに使われます。ただし手数料自体はUSD建てで設定されており、実際にCCを用いるかどうかは選択可能です。
  2. 参加者へのインセンティブ:スーパーバリデーター・アプリケーションプロバイダー・バリデーターなど、ネットワークの維持に関わる参加者に対し、貢献度に応じてCCが報酬として付与されます。
  3. ネイティブ決済:Canton上のアプリケーション間ではCC建ての決済が可能で、機関同士のCCトランスファーも公開台帳上で確認できます。

CCはイーサリアム(ETH)のように「ガス代として必須のトークン」ではなく、ネットワーク参加者へのインセンティブや手数料の支払いを担うオプション型のユーティリティトークンとして設計されています。

2026年3月時点の流通量は約382億CC、時価総額は約55億ドル(CoinMarketCap)で、暗号資産全体の時価総額ランキングでは上位20位前後に位置しています。

フェアローンチ設計:プレマイン・プレセールなし

CCの特徴としてまず挙げられるのが、フェアローンチ(公平な発行)を前提にした設計です。

多くのブロックチェーンプロジェクトでは、開発者やVC、早期投資家に対して大量のトークンが事前配布(プレマイン)されます。この場合、一般投資家が取得する時点で、すでにインサイダー側に大量保有が偏っているケースも少なくありません。

カントンコインには、プレマイン・プレセール・VC配布・財団への特別配布がありません。2024年7月に完全分散型のグローバルシンクロナイザーが稼働して以降、CCはネットワークへの貢献を通じて初めてミント(発行)される仕組みになっています。

配分の初期設計では、スーパーバリデーターがインフラ運用報酬として約80%を受け取り、アプリケーションプロバイダーが約10%、残りをバリデーターが受け取る構成とされています。もっとも、この比率は初期段階のものであり、ネットワークの成熟に伴って変化する可能性があります。

最初の10年間でミント可能な総量は約1,000億CCと定められており、その後は年間25億CCの一定供給ストリームへ移行する設計です。

バーン&ミントエクイリブリアム(BME)モデルの仕組み

CCのトークンエコノミーには、「Burn-and-Mint Equilibrium(BME)」と呼ばれる独自の需給調整メカニズムが採用されています。Canton Network公式FAQページでも概要が説明されています。

仕組みは以下の通りです。

  1. バーン(消却):グローバルシンクロナイザーの手数料として支払われたCCは、その都度バーンされ、流通量から永久に除外されます。
  2. ミント(新規発行):ネットワーク参加者は、貢献度に応じてCCをミントします。ミントサイクルは10分ごとに実行されます。
  3. 均衡:ネットワークが年間25億CCをバーンする水準に達すると、流通量が安定する設計です。

ネットワーク利用が増えるほどバーン量も増え、供給の引き締まりにつながる仕組みになっています。反対に利用が落ち込んだ場合には、ミント報酬が参加者へのインセンティブとして機能し、利用を促す方向に働きます。

手数料はUSD建てで設定されているため、CCの市場価格が上昇すると、同じ金額の手数料を支払うために必要なCC量は減少します。価格が過度に上昇するとバーン量が減りやすくなることから、極端な価格上昇を一定程度抑える方向に働く設計ともいえます。

投機的な値動きに左右されやすい従来の暗号資産と比べると、BMEモデルはネットワークの実需と連動した価値形成を志向している点が特徴です。

日本での買い方:SBI VCトレードでのCC取扱い開始

2026年3月25日、SBI VCトレードが国内で初めてカントンコインの取扱いを開始しました。SBIグループが国内の暗号資産取引所として先行した形で、同社の公式プレスリリースでも「次世代金融と伝統金融の融合をもたらす革新的な銘柄」として紹介されています。

SBI VCトレードでCCを購入する流れは、基本的に次の通りです。

  1. SBI VCトレードの口座を開設する(本人確認書類が必要)
  2. 日本円を入金する
  3. CC(カントンコイン)を購入する

国内の金融庁登録取引所を利用する場合、分別管理義務など法的保護の対象となります。国内では他に取扱いが確認されておらず、2026年4月時点ではSBI VCトレードが唯一の購入窓口です。

海外取引所では、BybitやMEXC、KuCoinなどでも取引が可能です。ただし、日本居住者が利用する場合は、各取引所の規約や金融庁の登録状況を確認したうえで判断する必要があります。

カントンネットワークの将来性と課題

機関DeFiインフラとしての成長シナリオ

Grayscaleの2026年デジタル資産アウトルックレポートでは、RWAのトークン化が「試験段階」から「本番規模の金融インフラ」へ移る転換点として、2026年が位置づけられています。同レポートは、2030年までにトークン化資産が現在の約1,000倍規模へ拡大する可能性に触れ、その基盤の一つとしてカントンネットワークを挙げています。

Coinbaseの2026年機関市場アウトルックでも、RWAトークン化の拡大とステーブルコインの実需増加が主要テーマとして示されており、カントンが担うレポ取引・担保管理・ステーブルコイン決済の各分野にも成長余地があるとみられています。

決済分野では、マスターカードが2026年3月に設立した「クリプト・パートナープログラム」(85社以上参加)にカントンネットワークが含まれており、既存の決済網とブロックチェーンの統合が進みつつあります。

日本でも、金融庁が暗号資産担当部署を2026年7月に「課」へ昇格させる方針を固めるなど、規制整備は着実に進んでいます。デジタル証券やトークン化資産への関心が国内金融機関の間で高まるなか、Canton Foundationも日本の金融機関との連携拡大を視野に入れているとしています。

パブリックチェーン(イーサリアム・ソラナ)との住み分けと競争

カントンネットワークはしばしばイーサリアム(ETH)のライバルとして語られますが、実際には狙う市場が異なります。

イーサリアムは、完全に公開されたパブリックチェーンとして、誰でも参加できる分散型金融(DeFi)の基盤になっています。一方、カントンネットワークは、規制対応やプライバシー、コンプライアンスが前提となる機関向け領域で、「許可制アプリケーション×公開ネットワーク」という構造を担っています。

ただし、両者の境界は次第に曖昧になっています。イーサリアム基盤のDeFiでもRWAとの接続が進んでおり、MetaMask(メタマスク)Ondo Finance(オンド・ファイナンス)と提携してトークン化米国株やETFをウォレット内で取引可能にした事例は、パブリックDeFiと機関金融の距離が縮まりつつあることを示しています。

カルダノ創設者チャールズ・ホスキンソン氏は2025年12月、「金融機関がCantonで構築しようとしていることは、XRPやセキュリティトークン関連インフラがすでに実現している内容の模倣に過ぎない」と批判しました。この発言は業界内で議論を呼び、機関DeFiインフラをめぐる競争が強まっていることをうかがわせます。

XRP(エックスアールピー)も、リップル社を通じて機関向け送金・決済インフラとして展開されており、アプローチは異なるものの、同じ機関金融領域で競合関係にあります。今後は、各ネットワークの機能差や実際の採用事例を踏まえて動向を見ていく必要があります。

規制環境と今後の展望(日本・米国・欧州)

米国では2026年3月17日、SEC(米国証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)がデジタル資産の法的分類を整理した共同解釈指針を公表し、複数の主要銘柄を「デジタルコモディティ」として正式に認定しました。規制の枠組みが明確になることで、機関投資家がカントンネットワーク関連サービスを導入する際の法的リスクは相対的に下がるとみられています。

欧州ではMiCA規制が2024年末から段階的に施行されており、機関向けデジタル資産インフラに関する規制要件も整備が進んでいます。カントンネットワークのプライバシー保護設計や規制準拠の仕組みは、MiCAの要件との親和性が高いとみられています。

日本では2025年12月の金融審議会ワーキング・グループ最終報告書で、暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)の枠組みに移す方針が示されました。法改正が実現すれば、機関投資家によるカントンコインやカントンネットワーク関連商品への投資ルートが広がる可能性があります。

リスクと留意点

カントンネットワークおよびカントンコインへの投資・参加には、いくつかのリスクも伴います。

価格変動リスク:CCは2025年11月の上場後、急騰と調整を繰り返しています。2026年3月には90日間で100%超の上昇を記録しましたが、機関向けインフラトークンとして普及が進む前の段階では、投機的な値動きが出やすい状況です。

トークンアンロックによる供給増:定期的なCCのアンロック(流通量増加)が予定されており、2026年3月16日から23日にかけては約2,890万ドル相当のCCが市場に加わりました。供給増が需要を上回る局面では、下落圧力になる可能性があります。

採用競争のリスク:機関向けブロックチェーン市場では、イーサリアム系L2・XRP・Hyperledger Fabricなどとの競争が続いています。現時点では採用機関数や取引ボリュームで優位性がみられる一方、今後の技術革新によって他プロジェクトの競争力が高まる可能性もあります。

規制変更リスク:各国の規制環境は今後も変化する可能性があります。特定のユースケースに対して規制当局が新たな制限を設ける余地は残っており、DTCCの米国債トークン化がSECのノーアクションレターを取得済みであっても、解釈変更が実運用に影響する可能性は否定できません。

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よくある質問(FAQ)

カントンネットワークとイーサリアムの違いは何ですか?

イーサリアムは完全なパブリックチェーンであり、取引データは広く公開されます。誰でも参加できる開かれた分散型金融(DeFi)の基盤として機能している点が特徴です。

一方、カントンネットワークはプライバシー保護機能を備えた機関向けブロックチェーンで、取引データは関係当事者のみが閲覧できる設計になっています。金融規制への準拠やコンプライアンス対応を前提とした機関間取引に適しており、Goldman SachsやDTCCのような既存金融機関でも導入しやすい構造です。

カントンコイン(CC)はどこで買えますか?

2026年4月時点では、日本国内ではSBI VCトレードで購入できます。SBIグループが2026年3月25日に国内初の取扱いを始めました。海外取引所ではBybit・MEXC・KuCoinなどでも取引できますが、金融庁登録外の取引所を利用する場合は、各自でリスクを確認する必要があります。

カントンネットワークのGlobal Synchronizer(グローバルシンクロナイザー)とは何ですか?

グローバルシンクロナイザーは、カントンネットワーク上で異なる機関やアプリケーション間の取引を調整・同期するための中核インフラです。BFT(ビザンチン・フォールト・トレランス)コンセンサスで動作し、スーパーバリデーターと呼ばれる複数の独立機関が分散運営しています。

取引内容を共有せずに整合性を確保しながら、アトミックなクロスドメイン決済を実現します。ネットワーク利用手数料はカントンコイン(CC)で支払われ、支払われたCCはバーンされます。

カントンネットワークの現在の取引規模はどのくらいですか?

2026年3月時点のデータでは、グローバルシンクロナイザー上での月次レポ取引処理額は4兆ドルを超え、カントンネットワーク上で発行・処理されたトークン化資産の累計は8兆ドル超とされています。また、日次の米国債レポ取引は3,500億ドル規模に達しており、機関向けブロックチェーンの中でも大規模な実運用例の一つといえます。

カントンコイン(CC)のトークンエコノミーの特徴は?

カントンコインは「バーン&ミントエクイリブリアム(BME)」モデルを採用しています。ネットワーク利用に伴う手数料でCCがバーン(消却)される一方、参加者への報酬としてCCがミント(新規発行)される仕組みです。

プレマイン・プレセール・VC配布はなく、すべてのCCがネットワークへの貢献を通じて発行されるフェアローンチ設計となっています。最初の10年間でミント可能な総量は約1,000億CCで、その後は年間25億CCの一定供給に移行します。

まとめ

カントンネットワーク(Canton Network)は、ゴールドマン・サックス・HSBC・DTCC・ユーロクリアなど、世界の主要金融機関が参加する機関投資家向けのブロックチェーン基盤です。

月次4兆ドルを超えるレポ取引と、8兆ドル超のRWAトークン化実績は、ブロックチェーンが実証段階を超えて金融インフラとして使われ始めていることを示しています。

2026年3月から4月にかけては、DTCCによる米国債トークン化、Chainlinkのオラクル統合、BitGoの規制対応インフラ統合、Transakのフィアットブリッジ対応などが相次ぎ、機関向けインフラとしての整備が一段と進みました。

日本では2026年3月25日にSBI VCトレードが国内初のカントンコイン取扱いを開始しており、国内投資家にとってのアクセス環境も整い始めています。

一方で、価格変動リスクやCCアンロックによる供給増、機関向けインフラ市場での競争といった論点もあります。投資や参加を検討する場合は、技術的な特徴と実運用の実績を確認しつつ、リスクもあわせて見ていく必要があります。

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Written by

BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

仮想通貨ニュースメディア「BITTIMES(ビットタイムズ)」編集長。2016年にBITTIMESを創業し、暗号資産・ブロックチェーン・Web3領域の取材・執筆を10年近く継続。ビットコイン・イーサリアムをはじめとする主要銘柄の動向から、国内外の規制・税制・DeFi・NFTまで幅広くカバー。

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