ブロックチェーンは地方の未来を変えるのか:熊本ブロックチェーンカンファレンス2019

by BITTIMES

「熊本日日新聞」と「株式会社かんのんざか」主催のもと"ブロックチェーンは地方の未来を変えるのか"をテーマにした「熊本ブロックチェーンカンファレンス2019」が、2019年10月19日に熊本県熊本市の「びぷれすイノベーションスタジオ」で開催されました。この記事では、カンファレンスで行われた合計4名の講演の内容を紹介します。

こちらから読む:「熊本ブロックチェーンカンファレンス2018」の記事はこちら

ブロックチェーンは地域をどのように変えるのか?

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アステリア株式会社の代表取締役CEOでありながら、ブロックチェーン推進協会(BCCC)の代表理事でもある平野 洋一郎(ひらの よういちろう)氏は「ブロックチェーンは地域をどのように変えるのか?」をテーマに講演を行いました。

講演を始めるにあたって来場者に直接質問を行なった平野氏は「"Libra"のことを聞いたことがあるか?」「ブロックチェーンと仮想通貨の関係性を理解しているか?」ついて質問を行いました。「Libra」に関しては参加者の大半が"聞いたことがある"としたものの、「ブロックチェーンと仮想通貨の関係」について理解しているのは半数ほどとなっていました。

ブロックチェーンに対する誤解について

講演の始めにブロックチェーン技術について簡単な説明を行なった平野氏は、世間で「仮想通貨の価格下落によってブロックチェーンも終わるのではないか?」という意見が出ていることに対して、ブロックチェーンは仮想通貨の"基盤技術"であるため、"仮想通貨価格の上下"は"ブロックチェーンの価値の上下"に直接的には関係しないと説明しました。

また、仮想通貨取引所のハッキング事件が相次いでいることに対して「ビットコインは堅牢なのか?」と疑問を抱いている人々への回答として「2009年の運用開始以降"ビットコインそのもの"がダウンしたことはない」ということ、「ハッキングはあったがビットコインそのものがハッキングされたわけではない」ということを説明しています。

「ブロックチェーン技術は仮想通貨の基盤技術であり、仮想通貨はブロックチェーンを活用した一つの事例でしかない」と説明した平野氏は、ブロックチェーンの国内市場が「67兆円」である一方で、"仮想通貨・ポイントプラットフォーム"が占める割合は「その中のわずか1兆円(約1.5%)」であるということを強調しました。

経済産業省が調査して出した数字(2016年4月時点)では、ブロックチェーンの国内市場は67兆円規模になっています。この市場の大きさも非常に重要ですが、ここでより重要になるのは「仮想通貨やポイントのプラットフォームとしての市場はこのうちの1兆円しかない」ということです。

つまり、それ以外のサプライチェーン、取引管理、シェアリングエコノミーなどの市場が非常に大きいということです。仮想通貨だけでも非常に大きなインパクトを与えましたが、それ以外にも非常に大きな市場があります。ブロックチェーンはこれらの市場に対して今後貢献していくことになります。

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「ブロックチェーン推進協会」加盟団体は増加傾向

平野氏は、自身が代表理事を務めている「ブロックチェーン推進協会(BCCC)」には、現時点で260社以上が参加していると報告しています(2019年10月19日時点)。BCCCには金融・保険・銀行などを含めた様々な業界の組織・団体が参加しており、企業の中にはリクルート・熊本電力・エイベックス・デンソー・オリックスなども含まれているとのことです。

同氏は、2018年に「仮想通貨取引所のハッキング」などが相次いだことによって、協会を退会する企業が増えたものの、その一方では"新たな参加企業"が続々と加盟しているため、全体で見ると"加盟数は減少していない"ということを説明しました。これは「仮想通貨業界でネガティブなニュースが報じられてもブロックチェーンへの関心は高まっている」ということを示しています。

2018年に見られた「価格急落」や「ハッキング事件」などに対しては、悲観的な意見が多数出ているものの、平野氏はブロックチェーンの将来性や可能性をみている企業は現在もブロックチェーン技術を見続けていると語っており、2018年は"企業のふるい分け"になったと表現しました。

BCCCは現在、実ビジネスへの適用を推進する「金融部会・スマートシティ部会・トレーサビリティ部会・ゲーム部会」、技術の普及に向けた活動を行う「教育部会・リスク管理部会・広報部会」、未来を見据えて模索する「技術応用部会・トークンエコノミー部会」という合計9つのテーマで部会活動を行なっています。

平野氏は『ブロックチェーン技術は"繋がってなんぼ"の技術だ』と述べており、BCCCのような協会に参加することによって「1社だけでは難しい様々な活動を共同で実施し、成果を共有することができる」と説明しています。

ブロックチェーンを活用する際に重要なこと

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ブロックチェーンの"特長"は、
・データ改ざん不可(書き換えられない)
・単一障害点の排除(システムが落ちない)
・コストダウン(安く上がる)
ブロックチェーンの"特徴"は、
・データのかたまりを連鎖させた構造
・非中央集権型意思決定(参加者の合意による)
だと説明する平野氏は、これらの特長には"向き・不向き"があり、場合によってはこれらの特長が不利に働く場合もあるため、何にでもブロックチェーンを活用しようとするのではなく、必要に応じて必要な技術を適用することが重要だとしています。

最近では"Libra"のように「パブリックチェーン」と「プライベートチェーン」を組み合わせたブロックチェーンも増えてきているため、現在は用途に応じて様々なブロックチェーンを選択することができるようになっています。

このようにブロックチェーン技術は常に進化を続けており、それぞれが異なる"特長"を有しているため、平野氏は「"ブロックチェーンの活用"を前提として考えるのではなく、何が問題がある場合に"課題解決ツールの1つ"として適切なブロックチェーンの活用を検討することが重要である」と説明しました。

また平野氏は「ブロックチェーンに適していない領域があること」「ブロックチェーンは"データの正しさ"を保障するのではなく"記録されたデータが変更できないこと"を保障するものであること」「全ての分野でコスト削減に繋がるわけではないため、慎重に考える必要があること」なども協調しています。

同氏はブロックチェーンはまだ誕生して間もない技術であるため、逆に導入コストがかかってしまったり、新たな問題が発生してしまったりする可能性があるものの、将来的にはインターネットのようにブロックチェーンも有用な技術になるため、「コスト削減は時間軸を意識することが重要だ」と述べています。

21世紀は「自立・分散・協調」が重要に

平野氏は、インターネットとブロックチェーンが頻繁に比較されていることを挙げ、
・インターネットがすごい理由は「"情報の流通"を根本的に変革した」ということ
・ブロックチェーンがすごい理由は「"価値の流通"を根本的に変革した」ということ
だと説明した上で、これら2つの技術の共通点は「非中央集権(Decentralized)」であるということだと説明しています。

同氏は、非中央集権型社会に移行していくにつれて「今後は"大きな中央集権型の組織"ではなく、"小さくて柔軟に繋がることができるチーム"が大きな力を持つ」と述べており、これまでは「階層・規律・統制」によるの世の中だったものの、21世紀は「自立・分散・協調」によって組織が構築されていくようになると述べています。

自立・分散・協調を軸とした組織では、組織運営に付随する「契約」と「支払い」がボトルネックになりますが、平野氏はこの問題をブロックチェーンの「スマートコントラクト」と「トークンの移転」が解決すると述べており、ブロックチェーンは「自立・分散・協調型社会の基盤」になると強調しました。

同氏はわかりやすい例として「階層・規律・統制型の組織を"恐竜"」に「自立・分散・協調型の組織を"チーター"」に例えており、「恐竜の時代」が「哺乳類の時代」へと移り変わったのと同じように組織も変化していくだろうと予想しています。

業界では「ブロックチェーン技術が主流になり、分散型社会が実現した場合には"大企業が不要になる"」とも言われていますが、平野氏は『このような兆候はすでに現れ始めている』と述べており、儲からなくなっているから大企業の不正事件が起こり始めていると説明しています。

地方創生におけるブロックチェーン活用

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ブロックチェーン技術の活用例としては「金融・取引・公的記録・本人証明・各種証明・有形資産の鍵・無形資産の鍵」などのほか、「流通・製造・公共・医療」などといった様々な分野での活用法が紹介されましたが、"地方創生"の分野で特にインパクトをもたらす分野としては、
・地域通貨
・トレーサビリティ
・行政サービス
・STO(セキュリティ・トークン・オファリング)
が挙げられました。

平野氏は「ブロックチェーン技術は地方創生における様々な分野にイノベーションを起こす可能性を秘めている」と語っているものの、ブロックチェーン技術はあくまでも地方創生の"ツール"であり、実際に実行するのは"人"であるため、技術を活用する人々の考え方やコンセプトが重要になると強調しています。

ブロックチェーンの基本的な解説、新しく誕生してきている技術の説明、具体的な活用事例などについて詳しく説明を行なった平野氏は、今回のテーマである「ブロックチェーンは地方の未来を変えるのか?」に対するまとめとして、『ブロックチェーンはまだまだ進化中であり、フィンテック以外の様々な分野にも可能、今後は地方だけでなく組織・社会の有り様を変えていくものであるため、地方創生のツールにもなり得るものの、未来を変えるのは技術ではなく"人"であるため、「〜すべき」ではなく「〜したい」でプロジェクトを進めていくことが重要だ』とまとめました。

この理由として平野氏は「〜すべきは"義務感"であり"必須価値"」「〜したいは"期待感"であり"付加価値"」であるからだと説明しています。同氏は「新しい分散型社会で重要となるのは、自分たちが成し遂げたい目標に向かって"違いのある人々"が繋がっていくことだ」としています。

第1部として行われた「平野氏の基調講演」に続いて、カンファレンスは第2部となる「合計3名の講師による事例紹介」に移ります。

セキュリティトークン(STO)による地域資源の再生

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MBKブロックチェーン株式会社の代表取締である小貫 英樹(おぬき ひでき)氏は「セキュリティトークン(STO)による地域資源の再生」をテーマに講演を行いました。

マーチャント・バンカーズ株式会社(MBK)について

MBKブロックチェーン株式会社の親会社である「マーチャント・バンカーズ株式会社(MBK)」は、創業72年、上場から70年の歴史ある企業です。不動産事業を中心として幅広いサービスを提供している同社は、
・不動産事業(レジデンス・ホテル)
・投資およびM&A(ブロックチェーン・AI・再生医療)
・オペレーション事業(ボウリング・インターネットカフェ・病院食・アパレル雑貨販売)
などを手がけています。

日本全国に24物件(約100億円)を保有している同社は、都心部を中心としたレジ物件、Rホテルイン北九州エアポートなどのホテル事業、PurtとHotelを組み合わせた「Potel(ポテル)」、ボーリンング場やインターネットカフェ、婦人服・子供服販売などの事業に携わっていますが、2018年4月にはブロックチェーン技術の実用性や将来性に着目し、100%子会社として「MBKブロックチェーン株式会社」を立ち上げています。

設立当初はビットコインなどのユーティリティトークンに着目していたものの、現在は特に「セキュリティトークン(STO)」に着目しているとのことです。

STOの利点を「不動産事業」に

セキュリティトークンは、各国金融当局の法令に従って発行される「金融商品」をブロックチェーン化したもののことであり、法令に従って発行される「新しいカタチの証券」として注目が集まっています。セキュリティトークンの初回発行はSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)と呼ばれます。

小貫氏は、証券はこれまで「証券会社」でしか取引することができなかったものの、ブロックチェーンでトークン化することによって以下のような多くのメリットが生まれると説明しています。

  • 証券化できなかったものが証券化できる
  • 流動性が生まれて資産価値が上がる
  • 証券化はコストがかかるが、トークン化は比較的安値
  • 海外の証券が購入しやすくなる(海外の投資家も購入しやすくなる)
  • 証券の所有権が容易に移動できる
  • 小さい単位でも購入することができるようになる

セキュリティトークンは「株式・不動産・美術品」などといった様々な資産に活用することができると期待されていますが、MBKブロックチェーンは自社の強みを生かして"不動産のSTO化"に注目しているとのことです。

また小貫氏は、今回のテーマとなっている「地方創生」や「地域資源」などにもSTOを取り入れることができると語っています。具体的な例としては「地域再生・観光・復興」などにもSTOを活用していくことができるとし、熊本城の復興やシャッター街などにSTOを活用して、民間からのアイデアを受けながら、STOに参加したトークン保有者に還元していける仕組みを作ることによって将来の可能性を高めていくことができる可能性があると説明しています。

STO参入で期待できるメリット

小貫氏は「STO参入で期待できるメリット」として、
・最先端の挑戦を行うことで企業の信頼性・認知度が高まる
・地方企業に大きなビジネスチャンスがある
・新しい地方創生の資金調達が可能
・海外の投資家などに企業や資源の認知を広めることができる
・少額投資家などのこれまでとは違う層からの資金調達も期待できる
などを挙げています。

ブロックチェーンや仮想通貨は特に20代〜30代の若い層に支持されており、日本の物件に関しては海外からの注目も高まっているため、STOの仕組みを活用することによって可能性のある新たな投資家からの資金調達が可能になると期待されています。

一般の人々でも簡単に参加できる資金調達方法としては「クラウドファウンディング」などがありますが、小貫氏は「STO」は"安全性"などの面で注目されていく可能性があると説明しています。

「STOは資金調達が目的ではない」と語る小貫氏は、STOは正確には「資金調達を多様化させる為の"手段の1つ"だ」と説明しており、今までになかった資金調達が可能になったことによって、本事業やその他事業への資金投入ができるようになり、大手企業だけでなく地方企業も成長や地域資源再生へと導くことができると説明しています。

デジタル地域通貨の応用事例(自治体ポイントとの連携)

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株式会社フィノバレーの代表取締役社長である川田 修平(かわた しゅうへい)氏は「デジタル地域通貨の応用事例(自治体ポイントとの連携)」について講演を行いました。川田氏は、昨年行われた「熊本ブロックチェーンカンファレンス2018」でも講演を行なっています。

フィノバレーは「デジタル地域通貨」や「スマートフォンアプリ」などの開発を手がけており、昨年はバス乗車アプリである「BUS PAY」や岐阜県飛騨地域で使用されている地域通貨「さるぼぼコイン」などが紹介されています。川田氏は講演の最初に同社の説明として「お金の流れや情報などといったデータの流れを変えることによって、地域を活性化することができる」との考えから、自社の技術をそのような分野に活用する取り組みを続けていると説明しました。

岐阜県飛騨地域の地域通貨「さるぼぼコイン」

「さるぼぼコイン」は、フィノバレーが岐阜県飛騨地域で展開している地域通貨です。この通貨は高齢化社会が進み、東京などの地域に若者が集まってきている現代社会で"地方の経済をどのように保っていくか"という課題を解決するための取り組みとして始まったものだと説明されています。

同社は、東京などに人やデータが集中化している現代社会では「お金だけでなくデータも"地域循環型"にしていくことが重要である」と考えており、地域通貨を発行してサービスを展開することによって、観光客なども巻き込みながら地域の発展を促進していくことができると期待しています。

「さるぼぼコイン」は、サービス開始から1年9ヶ月で加盟店が1,200、ダウンロード数は約20,000、利用者数は約10,000人にまで成長していると説明されています。このサービスが提供されている地域の人口は約11万人ほどとなっているため、 現時点でも多くの人々に浸透してきていると考えられます。

地域通貨プラットフォーム「MONEY EASY」

フィノバレーは、さるぼぼコインのような地域通貨をより簡単に発行できるようにするために"デジタル地域通貨プラットフォーム"である「MONEY EASY」を立ち上げています。このプラットフォームを使用すれば、各地域でより簡単かつ短期間に地域独自のデジタル通貨を発行することができます(最短2週間)。

このサービスでは、日本円からスマホアプリにチャージするための手段として、
・窓口で直接チャージする方法
・ネットバンキングでチャージする方法
・専用機械でチャージする方法
・カードのQRコードを読み取ってチャージする方法
という4つの方法が提供されています。

電子マネー系のサービスはここ数年で急速に増加してきていますが、その一方では「スマートフォンを使いこなせている人が少ない」という問題もあるため、フィノバレーはできるだけスマホだけでは完結させず、物理的なものを挟むようにしているとのことです。

また同社の地域通貨サービスは、個人間の送金だけでなく「加盟店間での送金」もできるようになっているため、支払いとして顧客から受け取ったコインを業者間での支払いに利用することもできるとされています。このコインはクレジットカードなどとは違い、顧客から受け取った瞬間に業者間などでの支払いに利用できるため、地域内での資金移動を高速化することができると川田氏は説明しています。

「MONEY EASY」のプラットフォームは千葉県木更津市の「アクアコイン」でも使用されており、実証実験が行われた事例としては、
・ハウステンボスの「テンボスコイン」
・愛媛県松山の「IYOGIN Co-in」
・新宿「シネバルコイン」
などが挙げられています。

「自治体が参加するデジタル地域通貨」のメリット

川田氏は、デジタル地域通貨に"自治体"が参加することよって以下のようなメリットが生まれると述べており、このような利点が特に重要だと説明しています。

  • キャッシュレス推進
  • アプリを通じた情報発信
  • データ活用による分析の高度化
  • 決済アプリと連動した新たなICTサービス開発による、効率化や市民サービスの高度化
  • この取り組みを通じたICT(情報通信技術)の推進

フィノバレーは「スマートフォンを使いたいけど、教えてくれる人がいない」という人々のために"スマホ勉強会"なども同時開催することによって、地域のスマホ利用・デジタル通貨利用者増加を図っているとのことです。

またこの他にも、地域で発行されている商品券にデジタル通貨を組み合わせることの利点なども紹介されています。従来の商品券は基本的に"紙ベースのもの"となっており、偽造防止のためのホログラムなども必要となるため、発行に多額の経費がかかるという問題点があります。しかし、これらをデジタル通貨に置き換えることによって大幅に経費を削減することができると期待されています。このような取り組みは木更津市の「アクアコイン」で進められているとのことです。

その他サービスとの連携

川田氏はその他サービスと連携するプロジェクトの例として、
・歩数計アプリと連携してポイントを付与するサービス
・位置情報と連携したサービス
・地域スポーツと連携したサービス
・災害情報連絡のインフラ・義援金としての活用
・祭りなど地域イベントへの活用
・観光関連サービスへの活用
など挙げ、今後はこのような取り組みを行っていく予定だと語りました。

地域通貨で地域をつなげる

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筑邦銀行の企業本部デジタル戦略グループに所属している入戸野 真弓(いりとの まゆみ)氏は「地域通貨で地域をつなげる」をテーマに講演を行いました。

入戸野氏は「メガバンク・ネット専業銀行・地方銀行」全てで働いた経験を有している経験豊富な人物であり、今回の講演では自身の経験を生かした貴重な意見を語りました。

「地方金融機関の存在意義」について

LINEPay(ラインペイ)などの普及によって、銀行の存在意義を指摘する意見が実際に自身の耳にも届いていることを明かした同氏は、このような現代社会における"地域金融機関の役割"の1つとして「地域のお金をその地域に還元すること」を挙げています。

戦後に設立された筑邦銀行は「設立当初に、融資するお金もなく、お金も県外に流れていくという状況をどうにかしたい」との想いをもとに立ち上げられた銀行であることを説明した入戸野氏は、その時「そのような原点に戻らなければならない」と感じたことを語り『地域の中小企業を支えることができるのは"地域の金融機関"だ』との考えを語りました。

また同氏は、地域銀行の強みとして「地域のお客様と顔の見える関係を構築することができること」を挙げ、そのような「地域の人々との強い繋がり」を持つことができるのは、銀行以外の業界でも同じなのではないか?と考えていることも語っています。

地域通貨にブロックチェーンを活用する利点

「地域にお金を還元する仕組み」を実現するのが"地域通貨"だと語る同氏は、この地域通貨にブロックチェーン技術を活用する利点として、
・費用を格段に安くすることができる
・データの改ざんができない
・24時間365日稼働してくれる
・システムが落ちない
・拡張性がある
などを挙げました。また入戸野氏は「ブロックチェーン技術を使いたい」と思って地域通貨に取り組んでいるのではなく、地域通貨を運営する上でどの技術が良いかを考えた結果、ブロックチェーン技術にたどり着いたのだと説明しています。

地域通貨は「特定の地域でしか使えない通貨」ですが、入戸野氏は発想を転換し「地域通貨は通貨を地域に還元することができる"地域還元通貨"だと思っている」と述べています。

筑邦銀行が発行する地域通貨「常若通貨」

筑邦銀行は今年、ブロックチェーン技術を活用した地域通貨「常若通貨」を発行しています。この通貨は先着500名に1,000ポイントを提供する企画と共に発行されており、地域で使えるポイントを提供することによって、地元のお店に足を運んでもらうことを目的としています。入戸野氏によると先着500名分のポイントは全て完売し、好評だったと報告されています。

また、常若通貨を支払い手段として受け入れた加盟店からは、導入前は慣れていない「QRコード決済」などを不安視する意見も出ていたものの、実際には1時間程度の説明を行なっただけでスムーズに導入することができ、操作ミスや金額のうち間違えなどもなかったとのことです。

入戸野氏は"デジタル通貨の利点"として「実際に利用されている通貨のデータをリアルタイムに確認できること」も挙げています。同氏はこれらのデータを分析することによって、どのような店舗で通貨がよく利用されたか?などの情報を確認することができるため、今後の活動にも生かすことができると説明しています。

「熊本で地域通貨を発行する」という提案

入戸野氏は、このような地域通貨をさらに活用する提案として「熊本城マラソン」に活用することを提案しました。この提案は、熊本城マラソンの参加費を少し上げ、その代わりとして"火の国通貨"のような地域通貨を発行することによって、マラソンに参加した人々が参加後に熊本で食事や買い物を楽しむことができるというものです。

同氏は、このサービスをアプリで提供する際に「地域通貨が使用できる地元のお店」をアプリ上で伝えることによって、熊本に初めてきた人々に"熊本のお店"を正確に伝えることができると地域通貨の重要な利点を説明しています。

またこの他にも「地元の花火大会」や「伝統的な祭り」などといった地元の人々が昔から大事にしている行事なとと連携して地域通貨を展開していくことによって、地域通貨を利用する消費者の人々との繋がりも作ることができるということも強調しました。

地域通貨は「地域と人を繋ぐ決済ツール」

地域通貨を様々なサービスやアイデアと結びつけることによって、地域全体を活性化させ、人と人との繋がりを強化することができると語った入戸野氏は、地域通貨は単なる決済ツールではなく、地域と人をつなげるための支え合えるようなものとして捉えることによって、より地域を発展させていくことができるとの考えを語り講演をまとめました。

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