ルミス米上院議員「仮想通貨含み益への課税除外を」財務省に要請|過剰な規制に警鐘

ルミス米上院議員「仮想通貨含み益への課税除外を」財務省に要請|過剰な規制に警鐘(Senator Lummis urges Treasury to exclude unrealized crypto gains from taxation, warning against overregulation)
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米議員、仮想通貨含み益の課税除外を要請

米共和党のシンシア・ルミス上院議員とバーニー・モレノ上院議員は2025年5月14日、企業代替ミニマム税(CAMT)の計算において、仮想通貨の未実現利益(含み益)を課税対象から除外するよう米財務省に要請したことが明らかになりました。

CAMTとは、2022年に成立したインフレ抑制法によって導入された税制で、直近3年間の平均調整財務諸表所得(AFSI)が10億ドル(約1,470億円)以上の大企業に対して、最低15%の税率を課す仕組みです。

しかし仮想通貨(暗号資産)の保有企業に関しては、新たな会計基準の適用により、売却していない資産の含み益(未実現利益)まで課税対象とみなされる可能性が浮上しており、ルミス議員らは「これは想定外の課税強化だ」と懸念を示しています。

ルミス議員は14日に、自身のX(旧Twitter)で「米国企業が海外企業より重い税負担を強いられれば、デジタル金融分野での我が国の優位性が危機にさらされる」と投稿し、競争力維持のため財務省による迅速な対応を訴えました。

米国のデジタル金融分野での優位性が、外国企業よりも米国企業に重い課税が課されることで失われる危機にあります。

バーニー・モレノ議員とともに、米国財務省に対し、米国の仮想通貨企業に対して意図せず課されている税負担の撤廃を求めました。

米国がデジタル資産分野で世界をリードするためには、公平な競争環境が不可欠です。

書簡の中で「この問題は基本的な公平性と経済的常識に関わる」「議会もFASB(財務会計基準審議会)も、企業が未実現の仮想通貨利益に課税されることは意図していなかった」と指摘し、意図せず課されている”過剰な規制”であると強調しています。

両議員は財務省のスコット・ベセント長官に対し、現行法が与えた裁量権を行使してただちに規定の明確化・修正を行うよう求めています。

仮想通貨含み益課税が米企業に与える影響

米企業を悩ます会計基準変更

今回問題となっているのは、CAMT(企業代替ミニマム税)による課税方式と会計基準の変更が重なったことで生じた「未実現利益(含み益)への課税リスク」です。

CAMTでは、企業の会計上の利益であるAFSIをもとに課税額を計算します。さらに米国財務会計基準審議会(FASB)が2023年に発表した会計基準更新(ASU 2023-08)により、企業は決算時点での仮想通貨の時価を評価し、その値上がり分を損益計算書上「収益」として計上することが義務付けられました。

その結果、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)などを保有する企業では、価格上昇による含み益がAFSIに算入され、実際に売却していない資産に対しても税金を支払う可能性が生じています。

この仮想通貨含み益への課税は、インフレ抑制法制定時には予想されていなかったもので、ルミス議員らは「企業が税金支払いのために資産を売却せざるを得なくなる」と警鐘を鳴らしています。

米企業に不利な課税の懸念

特に、海外では仮想通貨の公正価値会計が義務化されておらず含み益が課税対象とならないため、米国企業だけが不利な立場に置かれる可能性があります。

書簡ではこうした不均衡が「米国のイノベーションを阻害し、投資を冷え込ませる恐れがある」として、財務省に対しAFSIの定義から仮想通貨の評価損益を除外するよう要請しています。

具体的には、米国内国歳入法(IRC)の第56A条(c)項(15)および(e)項が財務省に与えている法的権限を活用し、規則改正や明確なガイダンス発行を通じてAFSIの算定方法を早急に見直すべきだと主張しています。

なお議員らは、財務省が過去に保険業界に対してCAMT適用の猶予措置を講じた先例(IRS通知2023-20)があることにも触れ、仮想通貨業界にも同様の柔軟な対応を速やかに行うよう求めています。

米国各州で仮想通貨の法整備が進む

米国では連邦レベルの課税ルール見直しを求める声が高まる一方で、州レベルでは仮想通貨に前向きな動きが進んでいます。

5月8日、オレゴン州のティナ・コテック知事は仮想通貨法案「SB167」に署名し、ビットコインなどが正式に商取引の担保資産として認められました。

さらにニューハンプシャー州では5月6日、州の公的資金をビットコインなどで運用できるようにする「ビットコイン準備法(HB302)」がケリー・アヨット知事の署名を経て成立し、州として初めて仮想通貨への投資を正式に制度化しています。

また、ミズーリ州議会では2025年5月初旬、仮想通貨取引を含む資産売却益に対する州レベルのキャピタルゲイン課税を全面廃止する法案が可決されました。

現在この法案は州知事の署名を待っている段階です。成立すれば、仮想通貨を含め、資産の値上がり益に対する州税がゼロとなる全米初の州が誕生し、仮想通貨業界には大きな追い風になると注目を集めています。

今回財務省に要請をだしたルミス議員らをはじめ、支持派は引き続き仮想通貨分野の明確なルール整備に取り組む姿勢を示しています。

こうした連邦・州レベルでの一連の規制改革は、仮想通貨業界にとって法的枠組みの明確化と税負担軽減につながるものであり、米国がブロックチェーンやデジタル金融分野で世界をリードするための重要なステップになると期待されています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.13円)

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Source:シンシア・ルミス上院議員X投稿
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像

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BITTIMES 編集長のアバター BITTIMES 編集長 仮想通貨ライター

2016年から仮想通貨に関するニュース記事の執筆を開始し、現在に至るまで様々なWeb3関連の記事を執筆。
これまでにビットコイン、イーサリアム、DeFi、NFTなど、数百本以上の記事を執筆し、国内外の仮想通貨ニュースの動向を追い続けている。

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