エルサルバドル、ビットコイン含み益が急増
ビットコイン(BTC)価格の高騰により、中米エルサルバドル政府のビットコイン保有資産が大幅に価値を増し、約3億5,700万ドル(約518億円)の含み益を記録したことが明らかになりました。
ナジブ・ブケレ大統領は2025年5月19日、自身のX(旧Twitter)で同国のビットコインウォレット残高を公開し、その評価額が約6億4,440万ドル(約935億円)に達したと報告しました。
🤷🏻♂️ pic.twitter.com/05izbAR202
— Nayib Bukele (@nayibbukele) May 19, 2025
「ビットコイン購入はやめない」
エルサルバドル政府のビットコイン資産推移
エルサルバドルは2021年9月に世界で初めてビットコインを法定通貨として採用し、その後国家戦略として定期的なBTC積み増しを続けてきました。
5月19日時点で同国が保有するビットコインは6,181 BTCで、累計取得コストは約2億8,710万ドル(約417億円)に上ります。
ブケレ大統領が公開したウォレットのスクリーンショットによると、公開当時のビットコイン価格は1 BTC=103,051ドル(約1,496万円)前後まで上昇しており、この価格に基づく保有資産の評価額は約6億4,440万ドルに達しています。
これは初期投資額の約2.2倍に相当し、エルサルバドル政府は約3億5,700万ドルの含み益(未実現利益)を確保している状況です。
ブケレ大統領の投稿内容は絵文字だけの簡潔なものでしたが、公開されたデータは同国のビットコイン運用が巨額の利益を生んでいることを明確に示しています。
エルサルバドル政府はIMF(国際通貨基金)との融資合意後もビットコインの追加購入を続け、今年3月時点で6,102 BTC(当時評価額約5億5,000万ドル)を保有していました。
今回公開された6,181 BTCという保有数量は、3月以降もエルサルバドル政府によるビットコインの積み増しが継続されていたことを裏付けています。
ビットコインの法定通貨化を撤回へ
BTC戦略を巡るエルサルバドルとIMFの対立
エルサルバドルの大胆なビットコイン国家戦略は当初、IMFをはじめとする国際金融機関から強い懸念を表明されていました。
IMFは同国に対してビットコイン採用による財政・経済リスクについて繰り返し警告を発しており、2023年12月に締結した約14億ドルの融資プログラムでは「公的部門におけるビットコイン関連活動の制限」を条件として盛り込みました。
エルサルバドル政府は2024年1月、ビットコインの受け入れを民間の任意とする法改正を実施し、IMFに一定の譲歩を見せました。しかし、国家ビットコイン委員会(Bitcoin Office)を通じたBTCの買い増しは事実上継続されています。
ブケレ大統領は一貫して強気な姿勢を崩さず「1日1 BTC購入」という方針の継続を宣言していました。こうした中、今回の含み益拡大は、エルサルバドルのビットコイン戦略の正当性を国内外に証明するものとなっています。
米国の著名投資家ティム・ドレイパー氏は以前から「エルサルバドルはビットコイン投資によって将来的にIMF債務を返済できるようになり、最も裕福な国の一つに変貌するだろう」との見方を示しています。
「毎日1ビットコイン購入戦略」
各国で異なるデジタル通貨への取り組み
一方で、世界の各国はエルサルバドルとは異なるアプローチでデジタル通貨と向き合っています。
中央アフリカ共和国が2022年4月にビットコインを法定通貨に採用したものの、その他の主要国はビットコインではなくCBDC(中央銀行デジタル通貨)の研究・導入を加速させています。
中国はデジタル人民元(e-CNY)の実証実験を世界最大規模となる数億人のユーザーを対象に進めており、その累計取引額は2024年6月時点で7兆人民元(約9,870億ドル)に達しています。
各国当局は、ビットコインなどの民間発行の仮想通貨や、Meta(旧Facebook)などの大手テクノロジー企業が開発するデジタル通貨が自国通貨の主権を脅かすとして、デジタル通貨の公的管理を強化しています。
こうした流れの中で、法定通貨としてビットコインそのものを保有・活用するエルサルバドルの取り組みは際立っており、今回の含み益はその戦略に弾みをつける最新の事例です。
今後、この巨額の含み益をエルサルバドルがどのように活用し、ビットコイン市場や国際金融システムに影響を及ぼすかに注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.14円)
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Source:エルサルバドル「Bitcoin Office」
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用




























