米投資企業、仮想通貨「SUI」を財務戦略資産に採用
2025年7月28日、米国の投資企業Mill City Ventures III(ミル・シティ・ベンチャーズIII)は、仮想通貨SUI(スイ)を自社の財務戦略資産として採用することを発表しました。
同社の発表によると、約4億5,000万ドル(約670億円)規模の第三者割当増資を実施し、その調達資金の約98%でSUIトークンを取得する計画です。
今回の資金調達は非公開の増資(PIPE取引)として行われ、普通株式8,302万5,830株が1株5.42ドルで新たに発行されます。これにより、調達総額は約4億5,000万ドルに達する見通しです。
出資ラウンドはロンドン拠点の仮想通貨ヘッジファンドKaratage OpportunitiesとSui財団が主導し、ギャラクシー・デジタルやパンテラ・キャピタルなど複数の著名な投資会社も参画することが報告されています。
この発表を受けてミル・シティ社の株価は一時、前日比で20%上昇しており、市場は同社の戦略転換を好意的に受け止めていると見られています。
「SUI」が時価総額トップ5に入る可能性
SUI財務戦略採用の背景とミル・シティ社の狙い
調達資金の98%をSUI取得に充当予定
ミル・シティ社は短期融資を主業とする米国の金融企業であり、今回の発表により、事業の軸足をSuiブロックチェーンへ大きく移す方針を明らかにしました。
調達した約4億5,000万ドルのうち約98%は、市場での直接取得やSui財団との合意に基づきSUIトークンの購入に充てられる予定です。
残りの2%については従来の短期融資事業に回す予定であり、提供手数料等を差し引いたうえで大規模なSUI取得が行われる計画です。この結果、SUIは同社の主要な財務準備資産となる見通しとなっています。
増資の引受団を率いたKaratage Opportunitiesは、仮想通貨に特化したヘッジファンドであり、創業者のマリウス・バーネット氏とスティーブン・マッキントッシュ氏が、増資完了後にそれぞれミル・シティ社の会長兼CEO、および最高投資責任者(CIO)に就任予定とされています。
Sui財団との連携で戦略推進を加速
Sui財団は今回の増資においても積極的に関与し、ミル・シティ社に対して技術動向やエコシステムの成長に関する情報提供など、戦略的支援を行うことを明らかにしました。
同社は、機関投資家に対応した体制を構築することでSuiエコシステムへの投資機会を確保する意向を示しています。あわせて、Suiネットワークを中核とした財務戦略への本格的な移行を進めています。
経営陣と財団が語るSUIへの期待
Karatage社のマッキントッシュ氏は「仮想通貨市場とAI技術の双方が臨界点に達するこの重要な時期に本戦略を開始する。Suiは高速かつ効率的で、AIワークロードに適した技術構造を持つ」と述べ、SUIへの強い期待を示しました。
また、Sui財団のクリスチャン・トンプソン氏も「Suiはスケーラビリティ、速度、セキュリティを備え、ステーブルコインやAI、ゲーム、金融など広範なユースケースを支える」とコメントしており、企業・消費者向け活用に自信を見せています。
リアルユースケースに対応するSUIの優位性
Suiネットワークは、2022年にMeta社の元開発者らが創設したMysten Labsによって立ち上げられた高性能ブロックチェーンです。独自の並列処理アーキテクチャ(Move言語によるオブジェクトモデル)により、1秒あたり数千件のトランザクション処理を可能としています。
高い処理能力と低コストの取引手数料を備えるSuiネットワークは、決済、ゲーム、AIデータ活用といった実用的なユースケースに適した技術基盤と評価されています。また、Sui財団は米大手資産運用会社フランクリン・テンプルトンとの戦略的提携を通じて、信頼性の向上を図っています。
スイ(SUI)とは?
SUI(スイ)エコシステムの成長と市場展開
SUI現物ETF申請で進む金融商品化
SUIトークンを取り巻く環境も、2025年夏にかけて大きな展開を見せています。特に規制面では金融商品化が進展しており、3月には米投資会社Canary Capitalが、米国初となるSUI現物ETFをSEC(米証券取引委員会)に申請しました。
加えて、5月にはスイスに拠点を置く大手仮想通貨運用会社21SharesがSui財団との提携を発表し、SUI現物ETFの米ナスダック市場への申請を行いました。これにより、SUIの金融商品化と機関投資家向けの採用が一段と加速しています。
提携大とETF報道がSUI価格を押し上げ
21SharesはSui財団との提携のもと、SUIに関する調査レポートや製品統合を共同で推進する計画を明らかにしています。こうした動きを背景に、SUI価格は直近数ヶ月で大幅な上昇を見せました。
3月6日、エリック・トランプ氏らが関与するプロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」がSui財団との提携を発表し、準備金にSUIを組み入れる方針を明らかにしました。これを受け、SUI価格は約2.63ドルから2.99ドル(約440円)まで急騰しています。
さらに7月下旬には、21SharesによるETF申請を受けて投資資金が流入し、SUIは一時1日で15%以上上昇して4.23ドル(約630円)を記録しました。記事執筆時点では3.9ドル前後で推移しており、年初来安値からの大幅な反発となっています。
ラウル・パル氏「SUIは時価総額ランキング5位入りも」
著名投資家のラウル・パル氏は6月28日、X(旧Twitter)上で「SUIは2025年後半にかけて成長を続け、時価総額ランキングでトップ5に入る可能性がある」と強気な見解を示しました。
同氏は「SUIは今年前半に乱高下したが、今後さらなる上昇余地がある」とも言及しており、ビットコイン(BTC)価格の上昇とともに、主要アルトコインの中でも有望なパフォーマンスを見せる可能性があると分析しています。
Suiエコシステムで進む技術革新
Suiエコシステムでは技術革新が進められており、アドレスを変更することなく量子コンピュータ耐性を実現できる新たなウォレット移行技術が、Mysten Labsによる研究論文として発表されました。
Sui上ではDeFiやNFTゲームの稼働数も増加しており、Mysten Labsは5月にSuiブロックチェーン上でリリース予定の高品質ゲーム11タイトルのパートナー企業を発表するなど、ユースケースの広がりが進んでいます。
ロックアップ解除が招く短期リスク
一方で、市場全体の変動やトークンのロックアップ解除スケジュールが短期的な価格変動に影響を与えるリスクも懸念されています。実際に、7月1日には約4,400万SUI(1.7億ドル/259億円相当)のロックが解除され、一時的な売り圧力が生じました。
ただし、Suiチームは多くのトークンを2030年までロックアップしたうえで、段階的に市場へ放出する計画を示しており、供給過多による価格下落リスクは抑えられると見られています。
仮想通貨市場で拡大するSUIの存在感
長期的には、Suiの技術基盤やコミュニティの成長に加え、ミル・シティ社をはじめとする企業による導入の拡大が後押しとなり、SUIは仮想通貨市場における存在感を一層高めると予想されています。
各国における規制動向や他のレイヤー1ブロックチェーンとの競争状況にも関心が集まっており、今後のエコシステムの発展がSUIの価値形成に与える影響についても注視されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.62 円)
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Source:Mill City Ventures III公式発表
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