米商務省、公式GDPデータを複数チェーンで公開
米国商務省は2025年8月28日、Chainlink(チェーンリンク/LINK)とPyth Network(パイスネットワーク/PYTH)の技術を活用し、米国の国内総生産(GDP)データを9つの主要ブロックチェーン上で公開したと発表しました。
この取り組みは、連邦政府機関が公式経済データをブロックチェーン上で公開する初の事例で、経済情報の透明性向上とアクセス性拡大を目的としています。
公式声明によると、第2四半期(2025年4〜6月)の米国実質GDP成長率は年率3.3%に改定されており、その数値とハッシュ値が複数のブロックチェーンに書き込まれ、誰もが検証できる形で公開されています。
米商務省はブロックチェーン技術で政府データの保護と公共利用の促進を両立させ、この施策を同省のイノベーション戦略の一環に位置付けています。
なお、記事執筆時点で商務省が直接ブロックチェーンに公開しているのはGDPデータのみとなっています。一方、ChainlinkやPythを通じて、個人消費支出(PCE)価格指数や実質最終販売など複数の経済指標がオンチェーンで参照できる体制も整えられています。
ブロックチェーンで米GDP統計公開
GDP速報を9チェーンで同時配信、他経済指標データも対象拡大へ
GDPデータをBTCやETHなどの主要チェーンに書き込み
公式声明によると、米商務省は2025年第2四半期のGDP速報に合わせて、経済分析局(BEA)が公開したGDPレポートのSHA-256ハッシュ値と主要数値(ヘッドラインのGDP成長率)を、複数のチェーンに書き込みました。
対象となったのは以下のパブリックブロックチェーンです。
各チェーンでは実装方法が異なり、トランザクションのメモ領域に記録する方式や、スマートコントラクトへ埋め込む方式などが採用されました。
ビットコインではトランザクションのメモ領域を使ってデータを記録し、イーサリアムやポリゴンなどスマートコントラクト対応のチェーンでは専用コントラクトに格納する方式が採用されています。
この書き込み作業にはCoinbase(コインベース)、Gemini(ジェミナイ)、Kraken(クラーケン)など米国の大手仮想通貨取引所も協力し、商務省と分散型オラクルとの調整を支援しています。
商務省長官「米国の経済真実を不変に」
米商務省は今回のGDPデータのブロックチェーン公開を「政府全体に広げるための新たな概念実証(PoC)」と位置付けています。そして今後は、他の経済指標にも段階的に対象を拡大し、対応チェーンやオラクル、連携企業の範囲を広げる方針です。
ハワード・ラトニック長官は「経済統計をブロックチェーンで公開するのは理にかなっています。米国の経済的真実を不変かつグローバルに提供し、世界のブロックチェーン首都としての地位を確立します」と述べました。
また、Chainlink共同創設者のセルゲイ・ナザロフ氏は「米政府が透明性のためにブロックチェーンを活用する決定は、世界のリーダーになる意思の表れです」と述べました。さらに、政府データのオンチェーン化は新たな金融商品や予測市場の創出を後押しすると評価しています。
チェーンリンクとパイスネットワークの技術的役割
技術面では、Chainlink(チェーンリンク)とPyth Network(パイスネットワーク)のオラクルネットワークが中心的役割を担っています。
商務省は公式データを自ら書き込みつつ、オラクルを介してスマートコントラクトから参照可能なデータフィードも提供する構成としています。
Chainlinkは今回の提携により、実質GDP水準や前期比成長率、PCE価格指数(インフレ率)、民間最終購買支出など、計6種類の経済指標をオンチェーン配信します。これらはイーサリアム、アービトラム、ベース、アバランチ、オプティミズムなど10のブロックチェーン上で利用可能です。
一方Pyth Networkは、100以上のブロックチェーンに接続する独自ネットワークを用いてGDPデータの検証と配信を担っています。さらに、過去5年分の四半期GDPを遡及公開する計画に加え、将来はGDP以外の指標にも対象を広げる方針を示しています。
Pyth開発元であるDouro Labs創設者のマイク・ケイヒル氏は「商務省との協力により新たな時代が始まった」と述べ、公式データのオンチェーン化は透明性と革新性の向上につながると評価しました。
商務省は「今回の取り組みは出発点に過ぎず、今後も複数の経路を活用して重要統計の公開範囲を段階的に広げていく」と強調しています。
米政権、BTCマイニング支援表明
トランプ政権下で加速する「ブロックチェーン先進国」路線
米国政府はブロックチェーン活用以外にも、仮想通貨(暗号資産)分野でも新たな方針や規制整備を相次いで打ち出しています。
2025年8月、米司法省(DOJ)は暗号資産を巡る法執行方針を見直し、「悪意なくコードを書いただけのソフトウェア開発者は起訴対象としない」との考えを示しました。
この方針は、分散型取引所(DEX)開発者が無免許営業罪に問われるリスクを抑える効果があるとされ、トルネードキャッシュを巡る議論にも影響を及ぼしています。
さらにSEC(米証券取引委員会)も、直近で複数の仮想通貨企業や経営者に対する訴訟を取り下げています。こうした動きは、トランプ政権下で規制当局の姿勢がソフト路線に転じつつあることを示しています。
同様にFRB(米連邦準備制度理事会)も、8月15日に銀行の仮想通貨関連業務に適用していた特別監視プログラムを終了しました。
今後は通常の監督体制で管理していく方針を示しており、銀行による仮想通貨・ブロックチェーン関連サービスへの過度な制約が緩和されるとの見方が広がっています。
米国政府は法整備と技術活用の両面から仮想通貨・ブロックチェーン分野への関与を強めており、「ブロックチェーン先進国アメリカ」を掲げる動きは一段と加速しています。
トランプ政権関連の注目記事はこちら
Source:米商務省公式声明
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























