テザーCEO「USDTは新興国のデジタルドル」
Tether(テザー)社CEOのパオロ・アルドイーノ氏は2025年9月21日、南米ボリビアのトヨタ、BYD、ヤマハ各ディーラーが、米ドル連動型ステーブルコイン「テザー(USDT)」による車両購入代金の支払いを受け入れていることを明らかにしました。
この発表を通じて、アルドイーノ氏はUSDTが単なる仮想通貨(暗号資産)ではなく、実社会での決済手段として広く利用されつつある点を強調しています。
アルドイーノ氏は自身のX(旧Twitter)の投稿で、USDTを新興国で数億人が利用する「デジタルドル」に例え、その普及力と存在感の大きさを改めて示しました。
Toyota, BYD, Yamaha accepting USDT in Bolivia
"Tu vehiculo en dolares digital"
USDT is the digital dollar for hundreds of millions in the emerging markets.
Ubiquity. pic.twitter.com/0X0SH3USXX— Paolo Ardoino 🤖 (@paoloardoino) September 21, 2025
ボリビアでは、トヨタ、BYD、ヤマハの各ディーラーがUSDTでの車両購入を受け付けています。
「あなたの車をデジタルドルで」
USDTは、新興国で何億人もの人々に利用されるデジタルドルです。その普及は広がり続けています。
近年、ボリビアではデジタル通貨の経済への統合が進んでおり、こうした背景から、USDTのような安定した価値を持つステーブルコインが、自動車購入などの実生活での決済手段として注目を集めています。
深刻な外貨不足やインフレに直面するボリビアでは、自動車販売におけるUSDT決済の導入が、従来の決済手段に代わる「デジタルドル」としての新しい支払い手段になることが期待されています。
4年間続いた仮想通貨禁止令を解除
ボリビアで拡大するUSDT決済と経済変革
アルドイーノ氏が強調するUSDTの普及力と存在感
アルドイーノ氏のX投稿には「USDTは新興市場で数億人にとってのデジタルドルです」とのメッセージが記されており、新興国経済におけるUSDTの役割が強調されています。
投稿に添付された写真にはスペイン語で「あなたの車をデジタルドルで」と書かれたスローガンが掲示されており、USDTによる車購入という新たな潮流を示唆するものです。
アルドイーノ氏はこうした事例を通じて、USDTが実社会で「デジタルドル」として機能しうることを示しているとみられます。
ボリビアの通貨不安と仮想通貨・USDT需要拡大
ボリビアでは自国通貨ボリビアーノの信頼低下と深刻な米ドル不足を背景に、資産保全や決済手段としての仮想通貨需要が急拡大しています。
実際、同国の国営エネルギー企業YPFB(ボリビア石油公社)は、燃料輸入代金の決済に仮想通貨を活用する計画を進めており、政府から正式な承認を得たことがロイターで報じられました。
こうした経済環境の下、安定した価値を持つUSDTなどのステーブルコインが一般国民にとって日常的に利用しやすい決済手段として注目を集めています。
中央銀行データが示す仮想通貨取引急増
ボリビア中央銀行も仮想通貨取引の急増を公式に認めています。
同行が公表した最新データによると、2025年上半期(1〜6月)の国内仮想通貨取引額は約2億9,400万ドル(約435億円)に達し、前年同期の約4,650万ドル(約68.7億円)から5倍以上(約530%増)に拡大しました。
同国では過去に厳格な仮想通貨規制が敷かれていましたが、2022年6月の規制緩和以降は市場環境が改善し、2024年6月に約4年間にわたって続いた仮想通貨の禁止令が解除された経緯があります。
こうした規制緩和の追い風もあり、USDTを含む仮想通貨がボリビア国内で急速に浸透しつつあるとみられています。
ボリビア大手銀行が始めたUSDT対応サービス
国内の金融機関も、ステーブルコインの受け入れに動いています。
ボリビアの大手銀行Banco Bisa(バンコ・ビサ)は2024年10月、テザー社のUSDTに対応したカストディ(託管)サービスを開始し、同行の顧客は銀行を通じてUSDTの購入・保管・送金を安全に行えるようになりました。
銀行が公式にUSDTの取扱いを開始したことは、同国でステーブルコインが一定の規制下に組み込まれつつあることを示しています。
また、仮想通貨取引所のデータ分析によると、ラテンアメリカでは法定通貨の価値下落に備えてドル連動型ステーブルコインを利用する動きが広がっており、2025年7月時点では仮想通貨交換取引全体の90%以上がUSDTやUSDコイン(USDC)などのステーブルコインで占められていたとの報告もあります。
このように、ボリビアを含む新興市場においてUSDTは実需に根差した決済手段・価値保存手段として存在感を増しており、テザー社としても各国の現地企業と協調しながら利用機会を拡大しています。
2025年仮想通貨決済トレンド
USDTと新通貨USA₮で拡大するテザー社の成長戦略
こうした新興国でのユースケースが広がる一方、テザー社は先進国市場への対応も進めています。
2025年9月12日、テザー社は米国居住者向けの新たな米ドル連動型ステーブルコイン「USA₮(USAT)」を2025年末までに発行を開始する計画を発表しました。
USA₮は同年7月に米国で成立したステーブルコイン規制「GENIUS法」に完全準拠した設計となっており、裏付け資産の100%を現金および米国債で保有し、月次で準備金を開示するなど、厳格な基準を満たす形で運用される予定です。
アルドイーノ氏はこの新プロジェクトについて「USDTとUSA₮という二本柱で、新興国と先進国の双方にデジタルドルを提供していく」と強調し、既存のUSDTも新法に基づく透明性を確保した上で国際的な役割を維持する方針を示しています。
USDTの流通量(時価総額)は2025年9月時点で1,690億ドル(約25兆円)を超え、名目上、ボリビアのGDPを上回る規模にまで拡大しています。
テザー社はこうした規模と信頼性を背景に、規制当局との協調や新たなプロダクトの展開を通じて、自社ステーブルコインのユビキタス(どこにでも行き渡る)な価値を世界中の市場に提供し続ける方針です。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.18 円)
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Source:パオロ・アルドイーノ氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像





























