米銀行団体、仮想通貨企業の「銀行化」に待った|リップルら21社に波及か

米銀行団体、仮想通貨企業の「銀行化」に待った|リップルら21社に波及か

この記事の要点

  • 米銀行団体ICBA、仮想通貨の信託銀行認可でOCC提訴
  • リップルやBitGoなど認可済み21社にも波及か
目次

仮想通貨の信託銀行認可でOCC提訴

米国の地域銀行業界団体ICBA(独立コミュニティ銀行家協会)は2026年10月2日、米通貨監督庁(OCC)とジョナサン・V・グールド通貨監督官を相手取り、ワシントンD.C.連邦地方裁判所に訴訟を提起しました。

争われているのは、OCCが仮想通貨(暗号資産)企業を国法信託銀行として認可する際の法的根拠で、ICBAは2026年に発効した最終規則と2021年発行の解釈書簡1176号(IL 1176)の無効化を求めています。

ICBAのレベッカ・ロメロ・レイニー会長兼CEOは声明で、預金業務や受託業務を前提としない企業まで信託銀行として認可するOCCの解釈は、議会から与えられた権限を超えていると批判しています。

同氏はさらに「CRA(地域再投資法)義務や統合監督、資本・流動性基準、FDIC保険を避けたい仮想通貨企業のために、議会が信託銀行認可を『裏口』として用意したわけではない」と強調しました。

ICBAはこの主張に基づき、カストディや取引、貸借などを手がけるProtego Holdings(プロテゴ・ホールディングス)にOCCが2026年2月に付与した条件付き認可についても、取消しを請求しました。

訴状によると、トランプ政権下でOCCが認可または条件付き認可した信託銀行は21社に上り、少なくとも13社が仮想通貨企業とされており、裁判所がICBAの主張を認めた場合はプロテゴ以外の認可にも影響が及ぶ可能性があります。

「認可権限・規制格差・再認可」訴訟の3争点

国法銀行法の適用範囲巡る法的争点

ICBAは、国法銀行法(NBA)の1978年改正条項(12 U.S.C. § 27(a))について、信託会社の業務に限定した認可でも違法ではないことを確認する規定であり、非受託業務まで認可を広げる根拠にはならないと主張しています。

これに対してOCCは同条項をより広く解釈し、預金を受け入れず、受託業務を中心としない企業についても国法信託銀行として認可できるとの立場を示してきました。

ICBAは反論の根拠として、OCCが認可できる国法銀行は、預金取扱銀行、バンカーズバンク、受託業務を担う信託銀行の3類型に限られると指摘しています。

OCCはこの解釈を2021年の解釈書簡1176号(IL 1176)で示した後、2026年4月1日に発効した最終規則でも規制上の文言を「受託業務」から「信託会社の業務およびそれに関連する活動」へと改めました。

地域銀行の規制負担と仮想通貨企業の格差

訴状では、資産25億ドル(約3,950億円)未満の加盟行2行について、FDIC評価金や地域再投資法(CRA)対応などの規制コストをそれぞれ年間150万ドル(約2億3,700万円)以上負担しているとされています。

これに対しICBAは、国法信託銀行として認可された仮想通貨企業には、預金保険やCRA、銀行業と一般商業の分離、ボルカー・ルールなど、地域銀行に課される一部の連邦規制が適用されないと指摘しました。

プロテゴなどの仮想通貨信託銀行は全米でカストディや取引、貸借などを手がける計画で、加盟行の資産管理部門や信託部門と同じ顧客や資産を巡って競合するとICBAは主張しています。

実際に加盟行2行は2026年に入ってから、OCCが条件付き認可した仮想通貨企業にそれぞれ数十万ドル規模の取引を失っており、ICBAは競争条件の不均衡による実害として挙げています。

失効後に再認可、プロテゴの妥当性

こうした競争関係の具体例としてICBAが個別に問題視しているのがプロテゴで、同社が2021年に取得した最初の条件付き認可は、資本・流動性要件を満たせないまま2023年に失効しました。

訴状によると、プロテゴはその後、従業員の半数以上を解雇したほか、取引先からの未払い訴訟で複数の欠席判決を受けるなど、財務面で問題を抱えています。

さらに同訴状は、プロテゴの投資家であったFTXやデルテック銀行がマネーロンダリングやサイバー詐欺との関連を指摘されてきた経緯にも言及しました。

同社は2025年5月に国法信託銀行の認可を改めて申請し、OCCは2026年2月、カストディや取引、貸借、発行者向けサービスなどを手がける計画を条件付きで認可しました。

ICBAはこの認可について、リスク管理体制や資本・流動性、消費者保護、銀行業と商業の分離などを巡って事前に示された懸念に、OCCが十分応えていないと批判しています。

GENIUS法未施行、OCC認可の問題は未解消

訴状では、米国で2025年7月に成立したステーブルコイン規制法「GENIUS(ジーニアス)法」にも言及し、同法をもってOCCによる既存の信託銀行認可の法的問題が解消されるわけではないとICBAは主張しています。

GENIUS法の施行時期は2027年1月18日、または最終規則の公布から120日後のいずれか早い時点とされ、OCCによる関連規則の公布も今後予定されています。

一方、OCCは2025年12月にリップル・ナショナル・トラスト・バンクやビットゴー・バンク&トラスト、フィデリティ・デジタル・アセッツ、パクソス・トラストなどを条件付きで認可しており、今回の訴訟はプロテゴ以外の認可にも関わる内容となっています。

ステーブルコイン規制の整備が別途進む中、今回の訴訟ではOCCがこれまで信託銀行認可に用いてきた法的根拠そのものが問われており、裁判所の判断次第では既存認可の扱いにも影響が及ぶ見通しです。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.70 円)

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Source:ICBA公式発表 / ICBA訴状
サムネイル:AIによる生成画像

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