日米欧の先進7カ国で構成される「G7」は2020年10月13日に開催された財務相・中央銀行総裁会議で「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」に関する共同声明を発表し、国際的な通貨システムの安定において「透明性・法の支配・健全な経済ガバナンス」という3つの要素が重要であることを強調しました。今回の共同声明は「デジタル人民元などにおける取引データの恣意的な利用を牽制する狙いがある」と報じられています。
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国際通貨システムにおける「重要3要素」
G7は2020年10月13日に公開した共同声明の中で『デジタル決済技術の広範な普及は、金融サービスへのアクセス向上、非効率性の低減、コストの低下を通じて、既存の決済システムの課題に対処できる潜在性を有する』と述べているものの、その一方では『金融の安定性、消費者保護、プライバシー、課税、サイバーセキュリティ、オペレーションの頑健性、マネーロンダリング、テロ資金供与、市場の健全性、ガバナンス、法的確実性などといった関連する課題やリスクに対処するために決済サービスは適切に監督・規制されるべきである』と説明しています。
G7諸国はこのようなことを考慮して、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が与える影響やリスクに関する調査・研究を続けていますが、今回の共同声明の中でもこのことが説明されており、『国内決済システム及び国際通貨システムの安定性への信認は、透明性・法の支配・健全な経済ガバナンスに対する公的部門の信頼ある長年のコミットメントによって支えられている』と強調されています。
麻生財務相は「デジタル人民元の透明性」を問題視
今回の共同声明の中では中国で開発が進められている中央銀行デジタル通貨「デジタル人民元」に対する直接的なコメントは行われていないものの、複数の報道では『今回の共同声明はデジタル人民元などにおける取引データの恣意的な利用を牽制する狙いがある』とされています。
これについては麻生 太郎(あそう たろう)財務相も13日夜の記者会見でコメントしており、G7共同声明の意図について『中国の透明性は大丈夫かという話だ。どなたでも条件を満たしていない限りはだめだと理解してほしい』と指摘したと報じられています。
具体的には「中央銀行デジタル通貨で取引を行った際に記録される個人データが不適切に利用される可能性があること」などが懸念されており、『デジタル人民元を利用した取引データが中央銀行に筒抜けになり、国家体制の維持や国民の行動把握に利用される恐れがある』といったことが指摘されています。
中国は「デジタル人民元」のテストに積極的に取り組んでいるため、最近では「テストの一環として合計1,000万元(約1.57億円)相当のデジタル人民元を一般市民に抽選で配布したこと」なども報告されていますが、G7は『金融安定理事会(FSB)、金融活動作業部会(FATF)、決済・市場インフラ委員会(CPMI)、その他基準設定主体によるデジタル決済に関連するリスクを分析して適切な政策対応を決定するための作業を引き続き支持する』と説明しています。
また今回の共同声明の中では「Libra(リブラ)」のようなグローバルステーブルコインのサービス開始に反対することも説明されており、『G7はいかなるグローバルステーブルコインのプロジェクトも、適切な設計と適用基準の遵守を通じて法律・規制・監督上の要件に十分に対応するまではサービスを開始すべきではないとの立場を引き続き維持する』と説明されています。