サトシ関連含む47兆円の休眠BTC、匿名原告らが「遺失物法」で所有権主張

サトシ関連含む47兆円の休眠BTC、匿名原告らが「遺失物法」で所有権主張

この記事の要点

  • 匿名原告ら、サトシ関連を含む「休眠BTC約47兆円分」の所有権訴訟をNY州裁に提起
  • 「秘密鍵消失で価値10ドル未満」と主張し遺失物法での権利取得を狙う
目次

休眠BTC47兆円の争奪戦、匿名原告がNY州裁判所へ提訴

「ノア・ドウ」と名乗る匿名の人物とワイオミング州法人2社が、休眠状態のビットコイン(BTC)ウォレットを巡る所有権確認訴訟を、ニューヨーク州最高裁判所に提起したことが明らかになりました。

原告側は、対象ウォレットの私有鍵(秘密鍵)が失われており、資産を移動できない状態にあることから、各ウォレットの価値は10ドル(約1,600円)未満にとどまるとの専門家鑑定を提出し、ニューヨーク州の遺失物法に基づく所有権の確定を求めています。

一方、デジタル資産運用大手Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)は、対象となった39,069のアドレスが現在の市場価格ベースで約2,935億ドル(約46.7兆円)相当のビットコインを保有していると分析しており、評価額を巡る認識には極めて大きな隔たりが生じています。

訴訟対象には、ビットコインの考案者とされるサトシ・ナカモト氏に関連するとみられるアドレス群も含まれており、巨額資産の所有権を匿名の原告が主張する異例の法廷闘争として関心を集めています。

サトシBTC含む45兆円「放棄資産」とする法的根拠

37カ国・820媒体で周知、原告が主張する「合理的努力」

原告側は休眠状態のウォレットを「放棄された財産」と位置付け、ニューヨーク州の遺失物法を根拠に所有権の取得を主張しています。

訴状によると、ノア・ドウ氏は対象ウォレットのアドレス一覧を保存したUSBドライブをニューヨーク市警(NYPD)の第17分署に提出し、遺失物として届け出たうえで所有権取得の手続きを開始しました。

続いて、ブロックチェーン上へ短いデータを書き込める「OP_RETURN」を利用して各ウォレットへ通知を送り、所有権主張の内容を掲載したウェブページへ誘導したとしています。

通知では2025年10月10日までの90日間を異議申し立て期間として設定し、その期間内に反応がなかったウォレットについては「放棄された資産」とみなす考えを示しました。

原告側は2025年8月にプレスリリースも配信しており、37カ国・820超のメディアで報じられたことを根拠に、所有者へ連絡するための合理的な努力は尽くしたと主張しています。

「移動不能=10ドル未満」の論理、Galaxy試算とのギャップ

こうした手続きの背景には、ニューヨーク州人格的財産法(パーソナル・プロパティ・ロー)第7-B条に設けられた「10ドル未満の遺失物」に関する規定があります。

同法では、所有者を探す合理的な努力を行っても見つからない場合、価値が10ドル未満の遺失物については拾得者がより短期間で所有権を取得できる仕組みとなっています。

原告側は、対象ウォレットの秘密鍵が失われており資産を移動できない以上、その価値は一律で10ドル未満にとどまると主張しており、所有権はすでに自分たちへ移転したとの立場を示しています。

しかし、Galaxy Digitalの分析では、対象アドレス群は合計約380万BTCを保有しており、現在価格では約2,935億ドル(約47兆円)相当に達するとされています。

この中には、採掘パターンからサトシ・ナカモト氏に関連すると考えられている「パトシ・アドレス」約2万1,923件(約109万6,000 BTC)が含まれているほか、2011年のマウントゴックス(Mt.Gox)流出事件に関連するとされる7万9,957 BTCや、送金不能なバーンアドレスの2,131BTCも対象に含まれています。

裁判所が秘密鍵の喪失による利用不能性を重視するのか、それとも市場価値を基準に判断するのかが、この訴訟における重要な争点となっています。

勝訴しても秘密鍵は戻らず、原告が狙う「法的支配権」

ただし、仮に原告側の主張が認められたとしても、それだけで対象となるビットコインを自由に動かせるようになるわけではありません。

裁判所の判決によって失われた秘密鍵が復元されることはなく、ブロックチェーン上のビットコインは引き続き移動不可能な状態に置かれるとみられています。

そのため本件で争われているのは、ビットコインそのものの技術的支配権ではなく、既存の金融システムとの接点で行使できる法的権利としての効力だと指摘されています。

将来、対象ウォレットの正当な所有者が保有するビットコインを中央集権型取引所や金融機関へ移した場合、原告側は判決を根拠として資産や口座の凍結を求める余地を得る可能性があります。

一方で本来の所有者は、自らの権利を維持するために身元を明かしたうえで所有権を立証する必要に迫られる可能性があり、この非対称性が本件訴訟の特徴の一つとなっています。

なお原告は、身体的危害や誘拐の危険があると主張した結果、キャシー・J・キング判事から匿名での訴訟進行を認められており、自身の匿名性を維持したまま訴訟を進めています。

反論なき法廷、欠席判決が夏にも動き出す可能性

この異例の訴訟はすでに送達段階へ進んでいますが、被告として指定されているのは身元不明のブロックチェーンアドレスであり、通常の民事訴訟のように代理人が出廷して反論する展開は想定しにくい状況となっています。

Galaxy Digitalは、オンチェーンでの送達から約30日後にあたる2026年6月下旬にも被告不出廷による欠席が成立し、その後は欠席判決に向けた手続きへ進む可能性があると見込んでいます。

ただし、欠席が成立したとしても原告側の主張がそのまま認められるとは限らず、今回の分析をまとめた同社のリサーチ責任者アレックス・ソーン氏は「今回の訴訟について法的根拠は弱い」との見方を示しています。

ソーン氏は、「10ドル未満」という評価を前提に、サトシ・ナカモト氏に最も近いとされる保有分を含む巨額のビットコインの権利を匿名の当事者へ認める判断は極めて異例だと指摘しており、裁判所がこれを受け入れる可能性は低いとみています。

原告が求めているのはCPLR第3001条に基づく所有権確認判決であり、前例の乏しい請求に対して裁判所がどのような判断を示すのかに注目が集まっています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=159.29 円)

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Source:ニューヨーク州最高裁 訴状(NYSCEF) / Galaxy Digitalレポート
サムネイル:AIによる生成画像

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