仮想通貨XRPの有価証券問題に関する裁判を控えている「Ripple(リップル)社」と「米国証券取引委員会(SEC)」は2021年2月15日に、2021年2月22日に予定されている裁判前会議に向けた共同文書を裁判所に提出しました。この文書の中には『両当事者の弁護士は事前に和解について話し合いを行なったが、現時点では和解の見通しはないと考えている』と記載されています。
「裁判前の電話会議に向けた共同文書」公開
米国証券取引委員会(SEC)は2020年12月に『未登録のデジタル証券(XRP)を違法に販売した』といった内容で、Ripple社と同社のCEOであるBrad Garlinghouse(ブラッド・ガーリングハウス)氏、共同創設者であるChris Larsen(クリス・ラーセン)氏を提訴しました。
Ripple社とSECはこの訴訟に関する裁判を控えており、2021年2月22日には両当事者の弁護士が今後の日程などについて話し合いを行う「裁判前の電話会議」が予定されているため、米SECとRipple社にはその1週間前となる2021年2月15日までに以下の内容記載した書簡を提出することが求められていましたが、今回はこれらの提出された書簡の内容が公開されています。
- 原告および被告の事実および法的根拠を含む事件の簡単な説明
- 考えられる動議
- 和解への見通し
「米国証券取引委員会の主張」について
米国証券取引委員会(SEC)は『Ripple社が2013年から約8年間に渡って販売してきた13億8,000万ドル(約1,380億円)相当の「XRP」は連邦証券法に基づく”証券”であるため、XRPの販売を行うためには事前にSECに登録を行う必要があった』と主張しています。
しかしながら、Ripple社・ブラッド・ガーリングハウス氏・クリス・ラーセン氏はSECに登録届出書を提出していないため『これまでに行われた約146億XRPの販売は”未登録証券の違法販売”である』といった主張がなされており、仮想通貨が証券に該当するかを判定するための「Howey(ハウェイ)」などを判例として挙げながら『XRPの販売は”投資契約”であった』と指摘しています。
また、ブラッド・ガーリングハウス氏やクリス・ラーセン氏に対しては『両者はRipple社の違反を支援した』ということが指摘されており、『それぞれの被告が自身のXRPを売却したこと』や『XRPを”通貨”だと主張したこと』なども指摘されています。
「Ripple社の主張」について
Ripple(リップル)社は『XRPはデジタル証券ではなく、ビットコインなどのような”デジタル通貨”である』と主張しており、『日本・イギリス・シンガポールなどを含めた他国の規制当局は、”XRPは証券ではなく通貨である”ということを正しく認識している』と説明しています。
『XRPは証券ではなく”通貨”である』と主張するRipple社は『SECの主張には、法的または事実上の根拠が欠けている』と述べており、『Ripple社はXRPの価格を”コントロール”しないため、XRPの価格はRipple社の企業努力に基づいて変動するのではなく、BTC・ETHなどといった他のデジタル通貨と連動して変動する。たとえRipple社が運営を停止しても、XRPはデジタル通貨として価値を持ち続ける』とも説明しています。
さらにRipple社は『XRPを”通貨”だとラベル付けしたのは、Ripple社ではなく米司法省(DOJ)と金融犯罪捜査網(FinCEN)である』とも説明しており『これは米国政府がXRPを仮想通貨の顕著な例であるとみなしたことを示している』と語っています。
また、Ripple社側の主張の最後では『SECの訴訟によって”SECは他のデジタル資産には適用されない規制構造をXRPに課す可能性がある”という考えが広まったことによって、秩序ある市場に大混乱がもたらされた』とも指摘されており、『これによってXRPを扱う何千もの非当事者に害が及ぼされた他、Ripple社とは無関係の無実のXRP保有者に推定150億ドル以上の損失がもたらされた』と批判されています。
「和解の見通し」について
「和解の見通し」に関する項目では『両当事者の弁護士は面会を行って協議を行い、和解について話し合いを行なったものの、現時点では”和解の見通しはない”と考えている』と記載されているため、今後も両者の議論は続けられていくことになると予想されます。
ただしこの項目では『和解が成立した場合には速やかに裁判所に通知する』とも説明されており、被告側もこの点について同意しているとされています。
なお、文書の中では『この和解に関する協議は、在任中にRipple社を提訴した元SEC長官Jay Clayton(ジェイ・クレイトン)氏の元で行われた』ということも説明されています。
Ripple社に対する訴訟はジェイ・クレイトン氏が長官を務めていた時に行われていましたが、バイデン政権移行後はGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)氏が新たな長官に指名されています。
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