RLUSDがUSDT・USDCを上回る「A評価」に
Ripple(リップル)社の米ドル連動型ステーブルコイン「Ripple USD(RLUSD)」が、非営利の評価機関Bluechip(ブルーチップ)から最高評価の「A」ランクを付与されたことが明らかになりました。
BluechipはRLUSDを「業界の新たな信頼とコンプライアンスのベンチマーク」と評価しており、これにより、RLUSDは同社の格付けランキングにおいて初めてUSDコイン(USDC)やテザー(USDT)を上回り「最も信頼できるステーブルコイン」として位置付けられました。
今回の評価では、RLUSDが厳格な規制遵守体制を備え、安全性の高い準備資産を有している点が強調されており、特に世界最大の資産カストディ銀行であるBNYメロンがRLUSDの準備資産を保管していることなどが高い評価につながったと報じられています。
一方USDTとUSDCはこれまで、市場規模や信頼性で上位を占めていましたが、Bluechipによる今回の評価ではUSDTが「D」、USDCが「B+」にとどまり、RLUSDが両者を上回る格付けを獲得しています。
ステーブルコイン規制「GENIUS法案」成立
BluechipがRLUSDを格付け「A」にした背景
BNYメロンとNY州認可が信頼性を担保
RLUSDが最高評価に選ばれた背景には、その構造的な信頼性の高さが評価されたことが挙げられます。
RLUSDは、1RLUSD=1米ドルの価値を維持することを目的に設計された企業向けステーブルコインです。裏付け資産には、米国財務省短期国債や政府系マネーマーケットファンド、銀行預金などが用いられており、すべてが信用・金利リスクの極めて低い資産で構成されています。
RLUSDの準備資産は、金融安定理事会によって「システム上重要な金融機関(G-SIB)」に指定されているBNYメロンに信託されており、同銀行の厳格な管理の下で保管されています。このような資産保全体制が、RLUSDの高い安全性を裏付ける要素として評価されています。
さらにRLUSDは、リップル社がニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の認可を受けた信託会社を通じて発行する、数少ないステーブルコインのひとつです。
準備資産は、発行体の通常業務に使用できないよう分別して保管されており、仮に発行元企業が破綻した場合でも、RLUSD保有者の資産は保護される体制が構築されています。
これらの要素が総合的に評価された結果、Bluechipは「RLUSDの構造は他のステーブルコインとは一線を画す強固な保護をトークン保有者に提供している」との見解を示しました。
USDT・USDCが直面する信頼性の課題
一方、USDTやUSDCがRLUSDよりも低評価にとどまった背景には、安全性や透明性に対する懸念が複数挙げられています。
USDCは一定の信頼性も規制面に課題
Circle(サークル)社発行のUSDCは、米短期国債や現金によって100%裏付けられており、一定の信頼性があると評価されています。
ただし、発行主体がNYDFS(ニューヨーク州金融当局)の規制下にないため、発行体の破綻時に準備金が完全に保全されるか法的に証明されていない点が課題とされています。
BluechipはUSDCについて、準備資産が破産隔離されていることを明示し、あわせてNYDFS規制下の発行体に求められるような透明で合理的な償還ポリシーを利用規約に明記すれば、格付けが「B+」から「A-」へ引き上げられる可能性があると指摘しました。
USDTの準備金構成が抱える懸念
一方で、市場最大手のTether(テザー)社発行のUSDTは、流通量が約1,600億ドル(約23兆7,000億円)と圧倒的であるものの、Bluechipの格付けでは最下位クラスの「D」に位置付けられました。
この評価の背景には、USDTの準備金構成や情報開示において依然として不透明な点が残されていることが挙げられます。
テザー社は、米ニューヨーク州司法当局や商品先物取引委員会(CFTC)から複数回にわたって調査および罰金処分を受けています。
表向きにはUSDTが常に1米ドルで裏付けられていると主張しているものの、実際には一部の準備金が社債や貸付、金(ゴールド)、ビットコイン(BTC)などのリスク資産に投資されている点や、全準備資産の内訳およびカストディ先が完全には開示されていないことが課題と指摘されました。
さらに、USDTの準備金証明は現時点で四半期ごとのアテステーションに限定されており、独立監査法人による包括的な財務監査報告が未公表である点も、信頼性を低下させる要因と見なされています。
Bluechipはこれらの課題を踏まえ「USDTは流動性や通貨ペアの豊富さから利用価値はあるが、一般投資家にとっては、より透明性が高く規制に準拠した代替手段の方が望ましい」との見解を示しました。
RLUSDの市場拡大に向けた次の一手
これらのことから、RLUSDは規制対応、準備資産の質、情報開示の透明性において他の主要ステーブルコインを上回っており、これが今回の最高格付けにつながった要因とされています。
RLUSDは発行からまだ約半年と日が浅く、市場規模も約5億ドル(約760億円)とUSDTやUSDCに比べて小規模ですが、この短期間で急成長を遂げてきました。
BluechipはRLUSDの課題として、現在は機関投資家のみが発行元と直接発行・償還を行える一方で、一般ユーザーは取引所やDeFi市場を介した二次流通でしかRLUSDを利用できない点を指摘しています。
今後、リップル社が一般ユーザー向けにも直接RLUSDの発行・償還に対応する体制を構築すれば、利便性のさらなる向上が期待されるとの見方が示されています。
6.8兆ドルの国債需要を解き放つ可能性
RLUSD、各国で採用拡大と事業連携が進展
RLUSDはその信頼性評価の高さから各国で利用環境が広がっており、規制面・事業面での進展も相次いでいます。
中東ドバイ金融局がRLUSDを正式承認
2025年6月3日、中東においてドバイ金融サービス局(DFSA)は、RLUSDをドバイ国際金融センター(DIFC)内で利用可能な「公認トークン」として正式に認可しました。
この認可により、DIFC管轄下の金融機関や企業は、決済や資金管理など多様な仮想通貨関連サービスにRLUSDを活用できる体制が整いました。
DFSAはすでにXRPも公認トークンとして承認しており、今回のRLUSD承認もリップル社が推進する規制対応型デジタルトークン戦略の一環と位置付けられています。
同社ステーブルコイン部門SVPのジャック・マクドナルド氏はDFSA承認に際し「RLUSDは最高水準の信頼性・透明性・実用性を備えたステーブルコインを目指して設計されており、今回の承認はその取り組みの成果を示すものだ」とコメントしました。
また、同氏はRLUSDが企業向けに設計された規制準拠型トークンであることも強調しています。
MiCA対応でRLUSDが欧州市場へ拡大
また、リップル社はRLUSDの欧州市場展開にも注力しており、EUの新たな仮想通貨規制「MiCA」への対応を目的として、ルクセンブルクにおいて電子マネー機関(EMI)ライセンスを申請中と報じられています。
このライセンスが取得されれば、RLUSDをはじめとするリップル社の仮想通貨サービスが欧州経済領域(EEA)加盟の30か国全域で提供可能となり、欧州におけるステーブルコイン市場への本格的な参入が実現する見通しです。
ルクセンブルクは主要グローバル銀行が集積する金融センターであり、リップル社がRLUSDの保管提携先とするBNYメロンも現地に拠点を持つことから、欧州規制下での準備金分散管理などの要件にも柔軟に対応できる利点があります。
今後、RLUSDが市場での存在感をさらに高め、USDTやUSDCが長年独占してきたステーブルコイン市場において、信頼性と規制遵守を強みにシェアを拡大できるかどうかに注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=148.49 円)
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Source:Bluechip格付け評価
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用





























