2026年4月10日、日本政府は、暗号資産を金融商品取引法(金商法)の規制対象に加える改正案を閣議決定しました。暗号資産は、2017年の改正資金決済法施行以降、主に「決済手段」として扱われてきました。しかし、国内口座数が1,300万を超え、預託金残高も5兆円以上に拡大した現在では、決済よりも投資を目的とした利用が中心になっています。
改正案が成立すれば、暗号資産にもインサイダー取引規制や情報開示義務が導入されます。これまで資金決済法の枠内で扱われてきた暗号資産が、株式や債券に近い性質を持つ「金融商品」として整理される形です。
さらに、2025年12月の税制改正大綱で示された申告分離課税20%の適用は、この金商法改正の施行を前提としており、現行の最大55%の総合課税から税負担が大きく下がる可能性があります。
この記事では、暗号資産(仮想通貨)における金商法改正の全体像から7つの主要変更点、申告分離課税の適用時期、投資家・事業者への影響、海外との比較、施行までのスケジュールまでをに解説しています。
仮想通貨の税制改正はいつから
なぜ金商法に移行するのか?資金決済法との限界
資金決済法は「決済手段」としての規制だった
日本は2017年4月、改正資金決済法を施行し、世界でも早い段階で仮想通貨(暗号資産)を法律上の制度に組み込みました。この法律では、暗号資産を「決済手段」として定義し、仮想通貨取引所に登録制を導入しています。
当時の暗号資産市場は現在ほど拡大しておらず、資金決済法を中心に規制する考え方には一定の合理性がありました。ただ、この枠組みでは、株式市場で整備されてきたインサイダー取引規制、相場操縦の禁止、発行体による情報開示義務など、投資家保護に関わる制度が十分に及んでいませんでした。
投資目的の利用が主流に変化した実態
金融庁のデータによると、2025年10月時点で国内の暗号資産交換業者の口座数が1,300万を超え、預託金残高は5兆円以上に達しています。取引動機についても、86.6%が「長期的な値上がり期待」とされており、暗号資産は決済手段というより投資対象として利用されている実態が浮き彫りになっています。
この規模は、外国為替証拠金取引(FX)や社債の保有率を上回る水準です。暗号資産が一般投資家にとって身近な投資対象になる一方で、金融庁に寄せられる暗号資産関連の苦情相談は月平均300件を超えており、詐欺的な投資勧誘や無登録業者による被害への対応も急務となっています。
金融審議会ワーキンググループの設置から閣議決定までの経緯
こうした市場環境の変化を踏まえ、金融庁は2025年6月25日、金融審議会総会で暗号資産制度の見直しを正式な審議事項として提示し、ワーキンググループ(WG)の設置を決定しました。WGでは2025年9月から12月にかけて計6回の会合が開かれ、資金決済法から金商法へ移行する制度設計が議論されました。
第2回会合(2025年9月2日)では、金融庁事務局が「暗号資産は原則として金商法のみで規制するのが適当」との見解を示し、二重規制を避ける方向性が明確になりました。その後、2025年11月26日に報告書案が取りまとめられ、12月10日に最終報告書が公表されています。
この最終報告書の内容を踏まえ、2026年4月10日に改正案が閣議決定されました。片山さつき金融担当大臣は閣議後の記者会見で、金融資本市場の変化に対応して成長資金の供給を拡大するとともに、市場の公正性・透明性及び投資者保護を確保する」と説明しています。
仮想通貨(暗号資産)の基本解説
金商法改正案の全体像|7つの主要変更点
①「暗号資産交換業者」から「暗号資産取引業者」へ名称変更
改正案では、登録業者の名称が「暗号資産交換業者」から「暗号資産取引業者」に変更される方向です。名称の変更には、暗号資産の位置づけが「交換・決済」から「取引・投資」へ移っている実態を、制度上の表現にも反映させる狙いがあります。
新たな登録カテゴリーには、第一種金融商品取引業に相当する規制水準が適用されるとみられます。暗号資産を扱う事業者には、証券会社に近い管理体制が求められることになり、既存の第一種金融商品取引業者が暗号資産取引業を行う場合も変更登録が必要とされています。
②「特定暗号資産」の新定義
金融庁は改正案の説明資料で、発行者がいる暗号資産を「特定暗号資産」として新たに定義する方針を示しました。特定暗号資産は「特定の者のみが当該暗号資産を発行する権限を有するもの」とされ、IEOトークンのように発行者が存在する銘柄が対象になります。
一方、ビットコイン(BTC)のように発行者が存在しない暗号資産は、特定暗号資産には該当しません。その場合は、当該銘柄を取り扱う暗号資産取引業者が情報公表義務を負う設計です。発行主体の有無によって責任の所在を分けることで、実態に合わせた規制を行う考え方が採られています。
③インサイダー取引規制の導入と課徴金制度
今回の改正で特に注目されるのは、暗号資産を対象とするインサイダー取引規制の新設です。現行の金商法には暗号資産のインサイダー取引を直接規制する規定が置かれておらず、取扱開始や大量売買などの未公表情報をもとにした取引は、明確な取り締まり対象になっていませんでした。
改正後は、新規上場計画やセキュリティ上の重大な脆弱性情報など、投資判断に影響を与える重要情報が規制対象として扱われます。重要事実の公表方法についても、SNSでの発信は認めず、暗号資産取引業者や自主規制団体(JVCEA)のウェブサイト上で公表する仕組みが想定されています。
相場操縦の禁止(見せ板や価格操作など)や、不公正な取引に対する課徴金制度も新たに整備される予定です。証券取引等監視委員会には犯則調査権限が与えられるため、暗号資産市場に対する監視はこれまでより踏み込んだものになります。
④情報開示義務の新設
特定暗号資産の発行者には、募集・売出しにあたって、性質・機能・供給量・基盤技術などの基本情報を事前に公表する義務が課されます。さらに、年1回の定期情報と、重要な事象が生じた際の臨時情報の公表も必要になります。
虚偽記載に対しては、有価証券と同等のエンフォースメントが適用されます。具体的には、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科、課徴金、民事責任が定められており、発行者や取締役等について立証責任が転換された過失責任の規定も整備されています。
⑤無登録業者への罰則強化
無登録で販売を行った業者への拘禁刑は3年以下から10年以下に引き上げられ、罰金も300万円以下から1,000万円以下に引き上げられます。投資セミナーやオンラインサロンで特定の銘柄を推奨する行為についても、金商法上の「投資助言・代理業」や「投資運用業」の規制対象になることが確認されています。
証券取引等監視委員会には、裁判所に対して無登録業者の活動差し止めを申し立てる「緊急差止命令申立権限」も付与されます。詐欺的な勧誘が広がる前に行政側が対応しやすくなる点は、利用者保護の面でも重要です。
⑥不正流出時の責任準備金積立義務
不正流出が発生した際の顧客補償原資として、責任準備金の積立が義務付けられます。具体的な積立率は、管理する暗号資産の残高やセキュリティ水準を踏まえ、今後の内閣府令で定められる予定です。
この制度が導入されれば、取引所がハッキング被害に遭った場合でも、利用者補償に充てる原資を事前に確保しやすくなります。新規口座開設直後のアンホステッド・ウォレットへの即時移転を制限する熟慮期間の設定や、ステルスマーケティング規制の対象追加も、同じく利用者保護を意識した措置です。
⑦銀行等の暗号資産保有の条件付き容認
金融審議会WGの最終報告書では、投資目的であっても十分なリスク管理態勢が整備されていることを前提に、銀行や保険会社による暗号資産の保有を容認する方向性が示されました。
銀行や保険会社の子会社についても、暗号資産の売買・仲介や投資運用業が明確に認められる方向です。伝統的な金融機関がWeb3市場に参入するうえで、これまでより制度上の見通しを立てやすくなります。
申告分離課税20%はいつから?税制改正との連動
現行の総合課税(最大55%)から一律20.315%へ
現在、暗号資産の売却益は「雑所得」として総合課税の対象になっています。給与所得など他の所得と合算されるため、所得税45%と住民税10%を合わせて最大55%の税率が課されます。株式やFXの税率(一律約20%)と比べて負担が重く、業界団体や投資家からは長く見直しが求められてきました。
2025年12月26日に公表された令和8年度税制改正大綱では、暗号資産取引で得られる利益を申告分離課税(一律20.315%:所得税15.315%+住民税5%)の対象とする方針が明記されています。たとえば年収700万円の個人が100万円の暗号資産利益を得た場合、税負担は現行の約30万円から約20万円へ下がる計算です。
3年間の損失繰越控除が可能に
税制改正大綱には、暗号資産取引で生じた損失を3年間にわたって繰り越し、翌年以降の利益と相殺できる制度の創設も盛り込まれています。現行制度では、ある年に大きな損失を出しても、翌年の利益と相殺することはできません。繰越控除が導入されれば、年をまたいだ損益管理が可能になります。
また、DeFi(分散型金融)を含むデリバティブ取引についても申告分離課税の対象とされる方向です。暗号資産取引業者には、取引報告書を税務当局へ提出する義務も新たに課される見込みです。
適用開始は「金商法施行日の翌年1月1日」=2028年が有力
分離課税の適用開始時期は、投資家が最も確認しておきたい点です。税制改正大綱では「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日以後」と規定されています。仮に2027年度に金商法改正が施行されれば、分離課税の適用開始は2028年1月からとなります。
そのため、金商法改正案が今国会で成立しても、投資家が20%前後の税率で申告できるのは2028年分の所得からです。2027年中の取引益には引き続き現行の総合課税が適用されるため、大きな利益確定を検討する場合は税制上の時期を慎重に確認する必要があります。
ETFと現物の課税格差問題
税制改正大綱では、暗号資産ETF(上場投資信託)から生じる所得も申告分離課税の対象とする方針が示されています。一方、業界団体であるJCBAとJVCEAは、ETFだけでなく現物取引についても同等の税制を適用するよう要望しています。
ETFだけが20%で、現物取引が55%のまま残る場合、課税の公平性を欠くとの指摘があります。この点は今後の国会審議でも論点になりそうです。なお、税制改正大綱の文面では「暗号資産取引業者の取り扱う暗号資産を譲渡した場合」が対象とされており、現物取引も分離課税に含める方向で調整が進んでいます。
仮想通貨の税金・確定申告ガイド
投資家への影響|変わること・変わらないこと
メリット:税負担軽減・損益通算・機関投資家の参入促進
金商法改正によって投資家が受ける恩恵として、まず挙げられるのが税制面の改善です。最大55%から一律約20%への引き下げに加え、3年間の損失繰越控除が認められれば、長期投資家や中間所得層にとって投資判断を行いやすい環境になります。
たとえば、2024年にビットコイン(BTC)の価格が大きく上昇した局面では、現行の総合課税制度のもとで数百万円規模の税負担が生じたケースも報じられています。分離課税が導入されれば、同じ利益でも税額は半分以下に抑えられる可能性があります。さらに、ステーキング報酬やレンディングによる利息収入を分離課税の対象に含めるかどうかも検討されています。
塩崎議員は国会で「暗号資産を金商法の中に位置づけるのが適切」と提起し、投資家保護や市場育成、分離課税実現の観点から「バランスがいい」との見解を示しました。金商法の枠組みに暗号資産が組み込まれれば、機関投資家もポートフォリオの一部として扱いやすくなります。
注意点:インサイダー規制の対象範囲と違反リスク
一方で、投資家はインサイダー取引規制にも注意する必要があります。暗号資産の上場予定や重要な技術的変更など、未公表の情報に基づいて取引を行った場合、課徴金や刑事罰の対象となります。
暗号資産業界では、SNSを通じて情報が広がることが珍しくありません。しかし、金商法改正後は、情報の内容や入手経路によって規制対象になる場合があります。特に、プロジェクト関係者やその周辺人物が上場予定などの未公表情報を知りながら取引する行為は、厳しい監視の対象になります。
既存の取引・保有資産への影響
既に暗号資産を保有している投資家にとっては、法改正によって現在の保有資産や取引所口座に影響が出るのかも気になるところです。改正案の内容を見る限り、既存の口座はそのまま引き継がれるとみられます。ただし、取引所側では新たな登録手続きや体制整備が必要になるため、一時的にサービス内容が変更されることは考えられます。
また、分離課税の適用は2028年からと見込まれているため、2027年中に大きな利益確定を行う場合は、現行の総合課税が適用されます。投資判断を行う際には、仮想通貨の税金・確定申告に関する最新情報を確認し、税制変更の時期を踏まえて対応する必要があります。
取引所・事業者への影響|業界再編の可能性
第一種金融商品取引業への登録要件
金商法への移行に伴い、暗号資産取引業者には第一種金融商品取引業に相当する規制が課されます。自己資本規制比率の維持、顧客資産の分別管理体制の高度化、内部管理態勢の整備など、証券会社に近い実務対応が求められるようになります。
レンディング事業者についても、金商法の規制対象として再貸付先のリスク管理体制の構築や利用者へのリスク説明が義務化される方向です。これまで規制の空白地帯とされてきたレンディングサービスにも、明確な法的枠組みが設けられることになります。
コンプライアンスコスト増大と中小取引所の淘汰リスク
金商法移行による実務負担の増大は、業界再編を促す要因になり得ます。金融審議会の有識者からは「規制案が重厚すぎる」との意見が出ており、国内交換業者の約9割が赤字経営という現状を踏まえると、追加のコストをどこまで吸収できるかが課題になります。
特に中小規模の取引所では、人員増強やシステム投資といったコンプライアンス対応が経営を圧迫する可能性があります。国内ではすでに取引所の再編・統合に向けた動きが出ています。2026年5月にはSBIホールディングスがビットバンクの子会社化に向けた協議を開始しており、暗号資産取引所2社体制を構築する方針を示しています。金商法改正によって管理要件が高度化すれば、大手グループへの集約がさらに進む可能性があります。
IEO・新規上場銘柄数への影響
監査法人等による財務監査が行われていない特定暗号資産の募集・売出しについては、投資上限が設定される方向です。株式投資型クラウドファンディングと同様に、「50万円を超える場合は収入または純資産の5%まで、上限200万円」という水準が想定されています。
京都大学の岩下直行教授は、国内のIEOの多くが公募価格を大きく下回り、中には90%以上下落した例もあると指摘しています。投資家保護の観点から一定の規制強化は避けにくい一方で、発行体や取引所にとってはIEOの実施ハードルが上がるため、市場の縮小を懸念する声もあります。
JPX「暗号資産ETF早ければ来年」発言との関連
2026年5月1日、日本取引所グループ(JPX)の山道裕己CEOが暗号資産ETFの上場検討を表明しました。金融庁は投資信託法施行令を改正し、暗号資産を投資信託が運用可能な「特定資産」に追加する方向で調整を進めています。
金商法改正の成立は、国内で暗号資産ETFを組成するための制度的な前提の一つです。改正が実現すれば、SBIホールディングスが計画するビットコイン/XRP ETFや、野村ホールディングスの商品開発も具体化しやすくなります。
仮想通貨取引所の比較・解説
海外との比較|日本の金商法改正の位置づけ
米国:CLARITY法案(市場構造)とGENIUS法(ステーブルコイン)
米国でも、暗号資産をめぐる規制整備が進んでいます。CLARITY(クラリティ)法案はSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄を整理する市場構造法案で、2025年7月に下院を超党派で通過しています。
2026年5月2日にはステーブルコインの利回り規定に関する妥協案が公表され、上院での審議が前進しています。また、ステーブルコインに特化したGENIUS法は2025年に成立しており、発行体に関する規制枠組みも整えられました。
日本との違いは、米国が複数の法案を通じて段階的に規制を整備している点です。これに対し、日本は金商法へ一本化することで、暗号資産の規制体系をまとめて再構築しようとしています。
欧州:MiCA(暗号資産市場規制)
欧州連合(EU)では、暗号資産市場規制(MiCA:Markets in Crypto-Assets Regulation)が2024年12月に全面施行されました。MiCAは、暗号資産の発行・取引・カストディに関する包括的な規制枠組みで、EU加盟国全体に統一的なルールを適用する制度です。
MiCAでは、暗号資産を3つのカテゴリー(資産参照トークン・電子マネートークン・その他の暗号資産)に分類し、それぞれに異なる規制要件を課しています。日本の金商法改正における「特定暗号資産」と「その他」の2分類と近い部分がありますが、ステーブルコインに対する発行上限規定など、より細かなルールも設けられています。
MiCAの下では、EU域内で暗号資産サービスを提供する事業者が、一つのライセンスで全加盟国にサービス展開できるようになります(パスポーティング制度)。日本の金商法改正が国内市場を対象としているのに対し、EUは域内横断の事業展開を前提に制度を設計している点が異なります。
一方で、MiCAはDeFi(分散型金融)やNFTの一部を規制対象から除外しています。日本の金商法改正では、レンディングやIEOも含めた幅広い領域を規制対象としており、対象範囲は比較的広いといえます。その分、規制負担が市場の成長を妨げないかという点も、今後の論点になります。
日本の制度は世界と比べてどこに位置するのか
日本の金商法改正は、暗号資産を「有価証券とは別の金融商品」として位置づける点に特色があります。米国のように証券か商品かをめぐって判断が分かれる構造ではなく、暗号資産の性質を踏まえた独自のカテゴリーを設ける設計です。
また、銀行等の暗号資産保有を条件付きで容認する点も、比較的踏み込んだ内容です。片山さつき大臣が「2026年はデジタル元年」と位置づけ、証券取引所を通じた暗号資産の普及を後押しする姿勢を示していることから、日本は規制強化だけでなく、市場育成も同時に進めようとしているとみられています。
施行までのスケジュールと今後の注目ポイント
2026年通常国会での審議→成立見込み
改正案は2026年4月10日に閣議決定され、今国会に提出されています。片山大臣は「今国会におきまして、早期のご審議をお願いしたい」と述べており、政府としては会期内の成立を目指しています。
与党の税制改正大綱にも暗号資産の分離課税が明記されているため、法案に対する与党内の支持は一定程度固まっているとみられます。野党からも、暗号資産規制の整備そのものに対する大きな反対は目立っておらず、現時点では成立に向けた環境は整いつつあります。
2027年度施行・2028年分離課税適用のロードマップ
改正案が今国会で成立した場合のスケジュールは、以下の通りとなる見通しです。
| 時期 | 主なイベント |
|---|---|
| 2026年(通常国会会期中) | 金商法改正案の審議・成立 |
| 2026年後半〜2027年前半 | 政令・内閣府令の整備(責任準備金の積立率・投資上限の具体水準等) |
| 2027年度 | 金商法改正の施行(暗号資産取引業者への新規制適用開始) |
| 2028年1月 | 申告分離課税20%の適用開始(2028年分の所得から) |
| 2028年(目標) | 暗号資産ETFの国内上場 |
今後の注目:政令・内閣府令の具体的な規定内容
法律の大枠が固まった後は、政令・内閣府令で定められる細部が焦点になります。責任準備金の積立率、投資上限の具体水準、暗号資産の「分権化」の認定基準など、実務に直結する重要事項の多くは政省令に委ねられています。
特に「分権化」の認定基準は、ビットコインやイーサリアム(ETH)のように、当初は発行者が存在していたものの、現在は分散化しているとされる暗号資産の扱いに関わります。発行者が内閣総理大臣の承認を受けた場合には、継続的な情報公表義務が免除される規定が設けられていますが、その具体的な要件は今後の政省令で明らかになります。
投資家にとっては、保有銘柄や購入を検討している銘柄が「特定暗号資産」に該当するのかを把握することが、施行後の取引判断にも関わってきます。国会審議の内容に加え、政省令や金融庁の公表資料も継続して確認する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q1: 金商法改正で仮想通貨の税金はいつから安くなりますか?
金商法改正案が今国会(2026年)で成立し、2027年度に施行された場合、申告分離課税20%の適用開始は2028年1月からとなる見込みです。税制改正大綱では「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日以後」と規定されているため、2027年中の取引益には引き続き現行の総合課税(最大55%)が適用されます。
分離課税が適用されると、暗号資産の売却益や配当に対して一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。あわせて、3年間の損失繰越控除も導入される予定で、ある年に発生した損失を翌年以降の利益と相殺できるようになります。
Q2: インサイダー取引規制とは具体的にどのような行為が対象ですか?
暗号資産の上場予定、発行者の破産、セキュリティ上の重大な脆弱性など、投資判断に重要な影響を与える未公表情報を知りながら暗号資産を売買する行為が対象になります。プロジェクト関係者やその周辺人物だけでなく、これらの情報を伝達された人が取引した場合も違反に該当します。
違反者には課徴金が科され、悪質な場合は刑事罰の対象にもなります。重要事実の公表は、暗号資産取引業者や自主規制団体のウェブサイトを通じて行う仕組みが想定されており、SNSでの発信は正式な公表方法として認められていません。
Q3: 現在の取引所の口座はそのまま使えますか?
既存の暗号資産交換業者が金商法の下で「暗号資産取引業者」として登録を完了すれば、口座はそのまま引き継がれるとみられます。ただし、取引所側では登録変更や新たな体制整備が必要になるため、一時的にサービス内容が変わる可能性はあります。
利用者側で特別な手続きが必要になるかどうかは、各取引所の対応方針によって異なります。施行日が近づいた段階で、利用中の取引所から出される案内を確認しておくことが重要です。
Q4: ビットコインなど発行者がいない暗号資産も規制対象ですか?
規制対象です。ビットコインのように発行者が存在しない暗号資産は「特定暗号資産」には該当しませんが、金商法上の金融商品として規制を受けます。発行者がいない場合は、取り扱う暗号資産取引業者自身が情報公表義務を負う仕組みです。
そのため、ビットコインやイーサリアムのような主要銘柄についても、取引業者を通じた情報開示やインサイダー取引規制の対象になります。投資家は、従来よりも情報の透明性が高い環境で取引できるようになると考えられます。
Q5: 金商法改正で暗号資産ETFは日本でも買えるようになりますか?
金商法改正と投資信託法施行令の改正が実現すれば、国内で暗号資産ETFを上場できる制度環境が整います。金融庁は暗号資産を投資信託が運用可能な「特定資産」に追加する方向で調整しており、SBIホールディングスや野村ホールディングスも商品開発を進めています。
実現すれば、個人投資家は株式ETFや金ETFと同じように、証券口座を通じて暗号資産ETFを売買できるようになります。2028年をめどに上場が実現するとの見方があり、JPXの山道CEOも「早ければ来年にも」と検討を表明しています。
まとめ
2026年4月に閣議決定された金商法改正案は、日本の暗号資産市場にとって制度面の大きな節目となります。資金決済法の「決済手段」から金商法の「金融商品」へ位置づけが移ることで、インサイダー取引規制や情報開示義務が導入され、市場の透明性と投資家保護の強化が進みます。
投資家にとって重要なのは、申告分離課税20%と3年間の損失繰越控除の導入時期です。現時点では、適用開始は金商法施行後の2028年1月からとなる見込みで、2027年中の取引には現行の税制が適用されます。
法改正の成立後は、政令・内閣府令による詳細規定の整備が焦点になります。責任準備金の積立率や「特定暗号資産」の分権化認定基準など、実務に関わる重要事項が今後明らかになるため、投資家・事業者ともに最新動向を確認しながら対応を進める必要があります。
仮想通貨の規制・税制関連記事
サムネイル:AIによる生成画像


































