ナイキ、NFT閉鎖で投資家が「ラグプル」訴え500万ドル超の訴訟=報道
ナイキNFT撤退で投資家が集団訴訟へ
ロイター通信は2025年4月26日に、米スポーツ用品大手NIKE(ナイキ)がNFT事業の閉鎖に伴い、500万ドル(約7.2億円)以上の損害賠償を求める集団訴訟を提起されたことを報じました。
訴訟はニューヨーク東部地区連邦裁判所に提出されました。原告団は、ナイキが2024年12月にNFT事業部門「RTFKT(アーティファクト)」を突然閉鎖したため、デジタル資産の価値が急落し損失を被ったと訴えています。
訴状によれば、原告らは購入したトークンが未登録の証券であったことや、ナイキが途中で「絨毯を引き抜く(ラグプル)」ようにプロジェクトを放棄する可能性があることを知らされていれば、当初から購入しなかったと主張しています。
未登録証券販売の疑いで「NFT関連企業」を告発
ナイキNFTの始まりと終焉
ナイキによるRTFKT買収とNFT市場への参入
ナイキは2021年末、NFT(非代替性トークン)やデジタルファッション分野の新興企業RTFKTを買収し、この領域に本格的に進出しました。
当時ナイキCEOを務めていたジョン・ドナホー氏は「今回の買収はナイキのデジタル変革を加速し、スポーツ・創造性・ゲーム・文化が交わる場所でアスリートやクリエイターに新たな価値を提供するための重要な一歩だ」と述べていました。
RTFKT社はバーチャルスニーカーやデジタルアートのNFTコレクションで注目を集め、特に日本人アーティスト村上隆氏と共同制作した「Clone X」シリーズはNFTブーム期に高額取引されるなど話題となりました。
「RTFKT」を買収
NFT市場の急落とRTFKTの閉鎖決定
しかし2022年のピーク時には1点あたり約6万3,000ドル(当時約700万円)で取引されていた同シリーズの価格は、2023年には数百ドル程度にまで急落しました。
こうした市場環境の中、2024年12月にナイキはRTFKT部門を翌年1月末までに段階的に閉鎖する計画を発表しました。
ナイキは「RTFKTが育んだ革新性は、今後も多くのクリエイターやプロジェクトを通じて継続していく」との声明を発表し、これは急速に縮小するNFT市場への対応策であると説明しています。
投資家からの批判と集団訴訟問題
突然の事業終了によってRTFKTが発行していたNFTの価格は急落し、将来的な価値向上に期待していた保有者の間には失望が広がりました。
NFT保有者らはナイキのブランド力と継続的なサポートによって価値が維持・向上すると見込んでいただけに、事業撤退は「将来的な価値の向上を期待していた投資家の信頼を裏切る行為だ」と強く批判しています。
コミュニティの一部からは、開発元がプロジェクトを見捨てて投資家に損害を与える「ラグプル」に等しい行為だったとの厳しい声も上がっており、原告グループは、RTFKT閉鎖によって所有するNFT資産の価値が急激に暴落したとして「ナイキに責任がある」と主張しています。
また「事前に法的リスクや閉鎖計画を知っていれば購入しなかった」と主張し、ナイキによる未登録証券の販売とプロジェクト放棄によって購入者が欺かれたと指摘しています。
被告のナイキ側は集団訴訟について公式な声明を出しておらず、引き続き法廷で争う姿勢を見せています。
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ナイキ訴訟で浮き彫りとなったNFT法的課題
NFTを巡る法的規制は世界的にまだ発展段階にあり、NFTが証券に該当するかどうかを巡った訴訟は近年増加傾向にあります。米国では、NFTが未登録の証券として販売されたとして、複数の訴訟が提起されています。
一方、ナイキは、RTFKTの事業終了後も、自社のNFTプラットフォーム「.SWOOSH(ドットスウッシュ)」を通じたデジタル資産戦略を続けています。
2023年6月には「.SWOOSH」上のバーチャルスニーカーを米EAスポーツのゲーム内アイテムとして取り入れる提携を発表し、NFTを活用した新しいファン体験の創出に力を入れています。
今回の集団訴訟は、企業がNFTプロジェクトを展開する際のリスクと責任を浮き彫りにしました。特にナイキという大手企業が訴訟当事者となったことで、業界関係者からの関心も高まっています。
裁判の結果次第では、NFT市場におけるビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性があります。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=143.44円)
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Source:ロイター報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像