ホワイトハウス、仮想通貨政策の包括報告書を公開
米ホワイトハウスは2025年7月30日、仮想通貨規制の全体像を網羅した包括的な報告書を公表しました。
この報告書には、仮想通貨の市場構造や銀行規制、ステーブルコインの活用、仮想通貨課税に加え、SEC(米国証券取引委員会)およびCFTC(米商品先物取引委員会)の管轄整理など、幅広い政策提言が盛り込まれています。
本報告書は、トランプ大統領が掲げていた「米国を仮想通貨の世界的ハブにする」との公約を実現するロードマップとして位置付けられており、米国が「ブロックチェーン革命を主導し、仮想通貨の黄金時代を迎えることが可能になる」と強調されています。
米政府の仮想通貨政策「70%以上が支持」
仮想通貨政策に関する包括戦略を策定
今回の報告書は、約半年間にわたる検討の成果としてまとめられたものであり、仮想通貨産業の発展と規制の両立を目指す包括的な戦略が示されました。
SEC委員長のポール・アトキンス氏や財務長官のスコット・ベセント氏らが参加する仮想通貨タスクフォース(作業部会)は、報告書の中で「合理的な規制枠組みこそが、イノベーションの促進と投資家保護に資する」との見解を示しています。
仮想通貨規制でSECとCFTCの役割明確化
仮想通貨市場に即した規制枠組みの構築が、報告書の主要テーマの一つとされており、連邦議会には「CLARITY法案」の早期成立を促しています。
報告書では、商品的性質のトークンはCFTCが、証券的性質のトークンはSECが担当するという明確な役割分担の構築が提案されました。
また、SECやCFTCなどの規制当局に対しては、既存の権限を活用し、カストディや記録管理に関する明確なガイダンスを速やかに示すよう求められています。
革新的な金融商品の迅速な市場投入に向け、セーフハーバーや規制サンドボックスの導入も推奨されており、これによって法的な不確実性の解消が図られるとしています。
チョークポイント2.0終結と銀行規制改革
トランプ政権は就任後、仮想通貨関連企業に対する銀行サービスの排除政策として問題視されていた「チョークポイント2.0」を終結させる方針を打ち出しました。
報告書では、仮想通貨の保管やトークン化、ステーブルコインの発行といった銀行業務の範囲を明確化し、それらを適切なリスク管理の下で認可するよう勧告がなされています。
連邦銀行免許の取得手続きの透明化に加え、自己資本規制についても実態に即した見直しが推奨され、参入障壁の緩和が目指されています。
2025年には、FDIC(米連邦預金保険公)が仮想通貨業務の事前承認制を撤廃し、OCC(米通貨監督庁)もカストディ業務を正式に許可する意向を表明したことで、規制緩和の動きが一段と加速しました。
ステーブルコインで決済インフラを刷新
報告書では「米ドルの役割強化」が重要な柱として掲げられており、ステーブルコインの普及を通じて米国の決済インフラを近代化する方針が示されました。
2025年7月18日には、米国初のステーブルコイン規制法「GENIUS法」が成立し、トランプ大統領はこの法案を「経済的機会の拡大につながるもの」と位置づけています
また報告書では、この法律の迅速な実施を財務省や銀行当局に求める一方、公的なCBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入には明確に反対する立場が示されました。
さらに、CBDCの恒久的禁止に向けて「CBDC導入阻止法案」の可決も議会に要請しており、民間主導によるドル連動型トークンでの覇権維持が戦略の中核に据えられています。
仮想通貨のAML対策強化と透明性確保
AML・CFT(マネーロンダリング対策とテロ資金対策)の分野では、銀行秘密法(BSA)に基づく報告義務の明確化や、仮想通貨取引の透明性向上が求められています。これらは、財務省および関連当局への要請事項として盛り込まれています。
分散型金融(DeFi)やセルフカストディの領域においては、プライバシーの尊重を前提としつつ、必要な規制整備を段階的に進める姿勢が示されました。
また、合法な個人取引にまで過度な規制が及ばないよう、権限の濫用を防止する姿勢が示されており、慎重な監督が求められています。
業界関係者からは、革新的サービスの発展と市民の権利保護を両立させるバランスの取れた方針として高く評価されています。
仮想通貨税制の見直しと新たな資産区分の提案
税制面では、仮想通貨に関する税務ガイダンスの迅速な明確化が重要課題とされており、財務省および国税庁(IRS)に対して具体的な対応が要請されています。
報告書では、最低法人税(CAMT)の適用範囲やトークンのラッピング取引、少額取引の非課税条件といった制度面の整備が急務であると指摘しています。
さらに、マイニングやステーキングによる報酬の課税タイミングの見直しに加え、仮想通貨を連邦税法上で新たな資産クラスとして定義するための立法措置も提案されました。
証券と同様の損益通算規則(ウォッシュセール規制)の見直しを含む実務重視の税制改正は、仮想通貨業界の持続的成長を後押しすると期待されています。
仮想通貨法案3本を可決で規制が本格化
仮想通貨で覇権を狙う米国政策
今回の包括的レポートは、米国政府が仮想通貨分野での主導権を再び握ろうとする明確な意思を示すものであり、国内外の規制環境に大きな影響を与えると見られています。
SECやCFTCによる監督権限の明確化に加えて、銀行や民間企業との連携強化も進展しており、法的安定性と金融イノベーションの両立を目指す政策が着実に進行中です。
今後はCLARITY法案の成立やステーブルコインの運用実績が鍵となり、米国が再び仮想通貨の中心地となるかどうか、国際社会からの大きな注目が集まっています。
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Source:ホワイトハウス発表資料
サムネイル:AIによる生成画像




























