日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2020年11月12日に、自由民主党の「予算・税制等に関する政策懇談会」に出席し、”暗号資産の税制改正”に関する要望書を提出したことを発表しました。公開された要望書の中では、暗号資産やブロックチェーンの重要性が強調されている他、『法制度の変化に伴い、税制上の取扱いも変化すべき』といった意見が述べられています。
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JCBA「2021年度税制改正に関する要望書」を提出
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2020年11月12日に、今月4日に開催された自民党の「予算・税制等に関する政策懇談会」に出席した上で「2021年度税制改正に関する要望書」を提出し、説明を行なったことを発表しました。この懇談会には暗号資産取引所「bitbank(ビットバンク)」の代表取締役でもあるJCBAの廣末 紀之会長と、幸 政司専務理事が出席したと報告されています。
廣末会長と幸専務理事は「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」と連盟で作成した”税制改正要望書”を提出しただけでなく、「暗号資産市場の現状」や「実社会における活用事例」などの参考資料も提出して説明を行なったとのことです。
暗号資産・ブロックチェーンの重要性を強調
要望書の冒頭では、ドイツ・インド・オーストラリア・中国などの国がブロックチェーン技術の応用に取り組んでいることなどを挙げながら、ブロックチェーン技術について『情報伝達の基盤であるインターネットに対して、ブロックチェーンは価値交換の基盤となる技術と位置付けられる』と説明した上で、ブロックチェーンや暗号資産に関する日本の状況について以下のように指摘されています。
我が国は、ブロックチェーン技術の将来性に確証が持てないとして、国家としてブロックチェーン戦略を打ち立てることができておらず、インターネットにおいて取り戻せないほどの後塵を拝した過ちを繰り返そうとしているが、現状の暗号資産に関する税制もまた、我が国が将来得られる可能性がある戦略的に優位な地位を毀損する内容となっていると思料する。
このような現状を克服し、今後見込まれる暗号資産を利用した資金決済分野の革新や、暗号資産を決済手段として用いるブロックチェーン技術の応用による経済社会の高度化の可能性に備える必要がある。
以上の視点のもと、両協会は、暗号資産の決済における利用促進、市場の活性化、関連産業の発展を期するべく、あるべき暗号資産税制について以下のとおり要望する。
法制度の変化に伴い「税制上の取扱い」も変化すべき
「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」と「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」は今回の要望書の中で『暗号資産関連の法制度は変化しているため、暗号資産の税制上の取扱いもこれに応じて変化していく必要がある』と指摘しており、具体的には以下2つの点で変更が必要だと説明しています。
- 暗号資産決済の普及の障害として少額決済においても課税の問題が生じることが挙げられていることから、暗号資産の「決済手段」としての法的地位を確立させるためには、暗号資産の少額の取引につき非課税扱いとする制度が必要である。
- 暗号資産デリバティブ取引を金商法において通貨デリバティブ取引に準じたものとして位置づけ、デリバティブ市場を通じた価格安定を期することで決済手段としての安定性を確保することとした以上は、税制においても、通貨デリバティブ取引と同等の取扱いを指向していく必要がある。
暗号資産の税制改正で「3つの要望」
このように説明している「日本暗号資産ビジネス協会」と「日本暗号資産取引業協会」は、”暗号資産の税制改正”に関する要望の要点として、以下の3点を挙げています。
- 暗号資産のデリバティブ取引について、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。
- 暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとする。
- 暗号資産取引にかかる利益年間20万円内の少額非課税制度を導入する。
日本では現在、暗号資産取引によって得られた所得は「雑所得」として分類されており、最大55%の税金が課せられているため、仮想通貨業界関係者からは『株式・投資信託・FXのように20%の分離課税にすべきだ』という意見が以前から出ていました。日本の暗号資産関連の税金は、他国と比較しても特に高いことでも知られているため、業界では税制改正を求める声が強まっています。