バイデン政権「仮想通貨リスク軽減のためのロードマップ」を発表
バイデン政権は2023年1月27日に、ホワイトハウスの公式サイトで「仮想通貨のリスクを軽減するためのロードマップ」を発表しました。バイデン政権は暗号資産のリスク軽減に向けて複数の取り組みを行っているものの、昨年起きた複数の事件などから『今のままでは不十分』との見解を示しており、「規制当局の権限拡大・仮想通貨企業の透明性強化・仮想通貨と伝統金融の適切な距離感」などが必要であることなどが説明されています。
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仮想通貨のリスク軽減に向けて複数の行動
バイデン政権は2023年1月27日に、ホワイトハウスの公式サイトで「仮想通貨のリスクを軽減するためのロードマップ」を発表しました。
記事の冒頭では「2022年5月に起きたLUNC・USTCの暴落」や「暗号資産取引所FTXの経営破綻」などに触れた上で『2022年は仮想通貨にとって厳しい年だった』とコメントされていますが、『ステーブルコインの暴落や主要取引所の破綻で多くの投資家が深刻な損失を被ることになったものの、今のところ仮想通貨市場の混乱はより広範な金融システムにはほとんど悪影響を及ぼしていない』とも説明されています。
バイデン政権は「仮想通貨が金融の安定性を損なうことがないようにして、投資家を保護し、悪意のある人物に責任を負わせること」に焦点を当てているとのことで、『我々はバイデン大統領の指示を受けて過去1年間に渡って仮想通貨のリスクを特定し、行政府が持つ権限を使用して、それらのリスクを軽減するために行動してきた』とも説明されています。
具体的には『政権全体の専門家が、デジタル資産がもたらすリスクに対処しながら、安全かつ責任ある方法でデジタル資産を開発できるようにするための史上初のフレームワークを提示した』と説明されていますが、『一部の仮想通貨事業者は金融規制や基本的なリスク管理を無視している』とも指摘されており、『仮想通貨プラットフォームとプロモーターは消費者を誤解させたり、利益相反を引き起こしたり、適切な開示を怠ったり、あからさまな詐欺を犯したりすることがよくある。業界全体でセキュリティが貧弱であるため、北朝鮮のミサイル計画の資金確保で10億ドル以上が盗まれた』とも指摘されています。
また『各機関はその権限を用いて適切な場合には執行を強化し、必要な場合には新たなガイダンスを発行している』とも説明、『銀行機関は今月、リスクの高いデジタル資産を銀行システムから切り離すことの重要性について共同ガイダンスを発表したばかりだ』とも報告されています。
政府機関全体では「仮想通貨投資のリスクを消費者が理解できるようにするための啓蒙プログラム」を立ち上げているとのことで、『我々は、金融機関がデジタル資産のリスクにさらされることを抑制するための取り組みも含め、規制当局がこうした取り組みを継続することを推奨する』とも記載されています。
「デジタル資産の研究開発に関する優先事項」も発表予定
バイデン政権はこのように仮想通貨関連のリスク軽減に向けて複数の取り組みを行ってきているとのことですが、今回の発表では『この1年間の出来事はより多くのことが必要であることを強調している』とも説明されています。
各機関は仮想通貨関連の詐欺に対処するための取り組みを強化しているとのことで、マネーロンダリングやテロ資金調達の撲滅に関してもデジタル資産を含めた違法行為に対抗するためにより多くのリソースを投入しているとも報告されています。
今後数ヶ月以内には米国政府から「デジタル資産の研究開発に関する優先事項」が発表される予定とのことで、『これは暗号資産を支える技術がデフォルトで消費者を保護するのにも役立つものだ』とも説明されています。
規制当局の権限拡大・仮想通貨企業の透明性強化も必要
今回の発表では『議会も仮想通貨のリスク軽減のための取り組みを強化する必要がある』とも説明されており、具体的な例としては「顧客資産の不正利用などを防止するために規制当局の権限を拡大する必要がある」「投資家がリスク関連でよりより多くの情報に基づいて判断できるよう、仮想通貨関連企業の透明性や開示要件を強化することも必要」と説明されています。
議会もまた、その取り組みを強化する必要があります。例えば、投資家を傷つけ、価格を歪める顧客資産の不正使用を防止し、利益相反を緩和するために、議会は規制当局の権限を拡大する必要があります。また、投資家が財務リスクや環境リスクについてより多くの情報を得た上で判断できるよう、仮想通貨関連企業の透明性や開示要件を強化することも必要でしょう。
法執行を支援するために不正資金規制違反に対する罰則を強化し、仮想通貨仲介業者に「犯罪者への情報提供禁止」を課すことができます。国際的なパートナーを含め、法執行の能力強化に資金を提供することも可能です。また、金融安定化監視委員会が最近の報告書で示した手順に従い、ステーブルコインのリスクへの対処を含め、仮想通貨が金融システムに与えるリスクを制限することも可能です。
「暗号資産と伝統金融の適切な距離感」の重要性も強調
また、仮想通貨関連の法律に関しては『法律は年金基金のような主流の機関が仮想通貨市場に真っ向から飛び込むことを許可すべきではない』ともコメント、『この1年間は伝統的な金融機関が仮想通貨に触れる機会が限られていたため、仮想通貨の混乱がより広範な金融システムに伝染するのを防止できたが、これを逆手にとって仮想通貨と広範な金融システムの結びつきを深めるような法案を制定することは大きな間違いだ』と説明されています。
米政府は仮想通貨の技術的な利点などは認めているものの、投資家保護や金融安定性の維持などを重要視しており、昨年起きた複数の事件を踏まえてより厳しく仮想通貨関連のルールを定めていく方針を示しているため、今後も米国では仮想通貨関連の規制がより明確に定められていくことになると予想されます。