マスターカード、ステーブルコイン決済が可能に|仮想通貨で日常決済が現実化
Mastercard、ステーブルコイン決済導入へ
決済大手マスターカード(Mastercard)は2025年4月28日に、同社の世界中の加盟店ネットワークでステーブルコインによる仮想通貨決済を可能にすることを発表しました。
これによりユーザーは、自身の仮想通貨(暗号資産)ウォレットから実店舗やオンライン加盟店で直接支払いができ、加盟店側もステーブルコインで代金を受け取れるようになります。
公式発表によると、Mastercardは仮想通貨取引所OKXおよび決済企業Nuvei(ヌーヴェイ)と提携し、仮想通貨ウォレットから加盟店での支払いまで一貫して行えるステーブルコイン決済システムを構築する計画です。
OKXとの提携でユーザーが仮想通貨を日常の買い物に直接使える「OKXカード」を発行し、同時にNuveiやステーブルコイン発行元のCircle社との協業によって、加盟店が米ドル連動型ステーブルコイン「USDC(USDコイン)」などで支払いを直接受け取るオプションを提供する内容となっています。
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Mastercardが変えるステーブルコイン決済インフラ
Mastercardが発表した今回の取り組みは、ステーブルコインによる支払いを「ウォレットからチェックアウト(店舗での支払い)まで」包括的に実現する点に特徴があります。
同社は今回の発表で、ステーブルコイン対応を強化する4つの領域を示しました。
ウォレット有効化とOKXカードの発行
まずウォレットの有効化とカード発行では、仮想通貨ウォレット内の資金を簡単に利用できるカードの発行により、ユーザーが保有するステーブルコインを世界中の1.5億以上のMastercard加盟店で日常的に支払えるようにします。
仮想通貨取引所OKXとの提携により「OKXカード」を発行し、OKX利用者が自身の仮想通貨を直接従来のカード決済として使えるようになる予定です。
加盟店のステーブルコイン決済対応
次に加盟店での決済対応では、決済代行大手のNuveiおよびステーブルコイン発行企業のCircle社(USDC発行元)との連携を通じて、加盟店が取引代金をステーブルコイン「USDC」で直接受け取れるオプションを提供します。
これにより、消費者がどのような支払い方法を選んでも、裏側で加盟店側がステーブルコインによる決済を完結できるようになります。
オンチェーン送金の簡略化と安全性向上
さらにMastercardは、ステーブルコイン発行会社パクソス(Paxos)とも緊密に協力し、この機能をパクソス発行のステーブルコイン「USDP」など他の仮想通貨にも拡張対応するとしています。
オンチェーン送金(ブロックチェーン上で行われる国際送金)の分野では、既存のステーブルコイン送金が抱える手続きの煩雑さやアドレス間違いリスクを解消すべく「Mastercard Crypto Credential(クリプトクレデンシャル)」と呼ばれる仕組みを導入します。
これにより、仮想通貨取引所のユーザーは複雑なウォレットアドレスの代わりに信頼性のあるシンプルなユーザー名でステーブルコインを送受信できるようになり、取引の検証や透明性を担保しつつクロスボーダー送金が容易になります。
独自ブロックチェーンで決済効率化
そして効率的な決済インフラとして、Mastercardは独自のブロックチェーンネットワーク「マルチトークン・ネットワーク(MTN)」を活用し、リアルタイムの決済および償還(換金)を可能にする取り組みも進めています。
MTNは各国通貨や銀行預金をトークン化してオンチェーン上でやり取りするプラットフォームであり、Ondo Financeなどのパートナーがこれを用いて資産のトークン化ソリューションを展開しています。
仮想通貨の送受信をより簡単・安全に
大手銀行も推進する仮想通貨決済
またJPモルガン・チェースやスタンダードチャータード銀行といった大手銀行も既にMTNに接続済みで、従来の銀行預金口座を新たな仮想通貨のユースケースと結びつける試みが行われています。
Mastercardの最高製品責任者ヨーン・ランバート氏は声明の中で「ブロックチェーンと仮想通貨の主流ユースケースにおける利点は明白だ」と述べています。
その上で、こうした利点を活かすには「加盟店がステーブルコインで支払いを受け取り、消費者がステーブルコインを使うことを容易にする必要がある」とし、ステーブルコインがバリューチェーン全体の決済効率を高める潜在力を信じていると強調しました。
また同氏は「ユーザーや加盟店が日常的に簡単に使える環境を整えることが、ステーブルコイン普及の鍵だ」と述べており、今回の取り組みが急速に変化する世界に適応する上で核となるものだと位置付けています。
「ステーブルコインは魅力的なデジタル商品」
規模拡大を見せるステーブルコイン市場
Mastercardは以前から仮想通貨企業との提携を通じてデジタル通貨分野に参入しており、Kraken(クラーケン)やBinance(バイナンス)、Crypto.comなどと協力して仮想通貨対応のカード発行を進めてきました。
昨年には、ユーザーが従来型のMastercardでステーブルコインによる支払いを行える取り組みをすでに開始しており、今回の発表はそうした流れを一段と押し進めるものといえます。
競合するPayPalも2025年4月24日に、ステーブルコイン「PYUSD」の普及促進のためCoinbase(コインベース)との提携拡大を発表し、VisaもCircle社のUSDCを用いた決済高速化を進めています。
一方、規制面に関しては、SEC(米国証券取引委員会)が「米ドル連動型のステーブルコインは証券には該当しない」との公式見解を示すなど、規制面の不確実性の解消も進んでいます。
ステーブルコインの取引規模は急拡大しており、昨年のオンチェーン取引額は累計33兆ドル(約4,700兆円)以上でVisaやMastercardの決済総額を上回ったとの分析も報告されています。
米大手銀行シティグループは、ステーブルコインの時価総額が2030年までに最大3兆7,000億ドル(約525兆円)に達する可能性があると予測しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=142.83円)
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Source:Mastercard公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像