暗号資産(仮想通貨)にかかる税金に関する議論は、日本国内で長い間議論が行われています。これまでにも数多くの人々から「税制改正」を求める声があがっていましたが、今のところ変更予定はないとされています。このような現状を打破すべく立ち向かっている藤巻 健史(ふじまき たけし)議員は、先日「国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる制度」を利用して、衆議院議長・参議院議長あてに「仮想通貨税制改正の嘆願書」を提出しました。
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「仮想通貨税制改正の嘆願書」を提出
日本維新の会に所属する藤巻 健史(ふじまき たけし)議員は、2019年6月30日に衆議院議長・参議院議長あてに「仮想通貨税制改正の嘆願書」を提出したことを報告しました。
今回提出された嘆願書では「仮想通貨を社会に広く浸透させて、ブロックチェーン技術の発展を促進するためにも、仮想通貨の税金制度を適切なものにするべきだ」ということが述べられており、具体的な内容としては以下のような4つの要望が記されています。
一 仮想通貨の売買益を最高税率55%の総合課税から20%の分離課税へ変更すること
二 仮想通貨売買損の繰越控除を可能にすること
三 仮想通貨の売買を非課税にすること
四 店頭などでの仮想通貨の少額決済を非課税にすること
「最高税率55%の総合課税」から「20%の分離課税」に
国税庁は「仮想通貨は消費税法・資金決済法で”決済手段”として定義されているため、譲渡所得ではなく雑所得だ」という見解を示していますが、現実的なことを踏まえて考えるとこの判断は適切ではない可能性があるため、現在は長期的に議論が続けられています。
譲渡所得とは『資産を譲渡することによって得られる所得のこと』であり、譲渡する資産に応じて「総合課税」または「申告分離課税」という課税方法が適用されます。一方、雑所得とは『利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得のこと』であり、こちらは「総合課税」が適用されます。
藤巻議員は具体的に、
・現実問題として仮想通貨は支配手段としてほぼ利用されていないこと
・”譲渡所得である”と立証する責任は国税庁にあるのに、明確な立証がされていないこと
・財政法の権威である金子宏教授の最新の教科書でも「暗号資産は譲渡所得」とされているにも関わらず、国税庁からそれに対する反論がなされていないこと
などを理由に「譲渡所得ではない」と反論できないのであれば『暗号資産は譲渡所得』として分類すべきだと主張しており、現在適用されている「最高税率55%の総合課税」を「20%の分離課税」に変更することを求めています。
「仮想通貨取引による損益」の繰越控除を可能に
藤巻議員は、仮想通貨取引によって発生した「損失」を翌年以降まで繰り越すことができるようにすべきだと主張しています。
現在の制度では「2018年度に200万の損失を出し、2019年度に100万円の利益を出した場合」には、2019年度は2018年度の損失を含まずに100万円の利益にかかる税金をきっちりと払う必要があります。これはつまり、全体で見るとマイナスであっても、その年に利益を得たのであれば税金を支払わなければならないということです。
しかし「株式・投資信託・FX」などの場合は、前年度の損失を翌年の利益から差し引くことができるようになっているため、藤巻議員は『公平性を保つためにも仮想通貨の取引損の繰越控除を認めるべきだ』と訴えています。
「仮想通貨間の売買」を非課税に
日本では「仮想通貨間の売買」つまり「ビットコインとイーサリアムの売買」などを行なった場合にも、その時点の「ビットコインの利益」を確定させて税金を支払わなければならない制度が適用されています。
このような制度は損益の計算をより複雑なものにする原因でもあるため、藤巻議員は『仮想通貨市場を活性化させるためにも、仮想通貨間の売買を非課税にすべきだ』と主張しています。
「店頭などでの仮想通貨による少額決済」を非課税に
現在の税制では、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を用いて支払いを行なった場合にも「ビットコインを購入した金額」と「支払いを行なった時のビットコイン価格」から損益を計算して納税する必要があります。
藤巻議員は、このような制度は仮想通貨決済の普及の大きな妨げになると訴えており、仮想通貨決済を普及させるためにも『少額の仮想通貨決済は非課税にすべきだ』と主張しています。
国民から求められる「税制改正」
現在日本で定められている税制は、高額な税金を徴収する内容となっており、仮想通貨を決済手段として広く普及させるには適していないと考えられる内容も含まれているため、税制改正を求める声は以前から多く上がっています。
今回提出された請願書は「“国民”からの国政に対する要望」であるため、これまでに報告されていた税制改正に関する事例の中でも特に重要なものであると考えられます。
日本は海外に比べると国の政策などに対して直接的には意見を語らない傾向があるため、実際に仮想通貨などにかかる現在の税制を変えていくためには、今回のような取り組みがより重要になってくると言えるでしょう。
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