
MANTRA(マントラ)、OMトークンが90%暴落|インサイダー取引疑惑の真相とは
MANTRA「OM」大暴落の衝撃
2025年4月14日、仮想通貨プロジェクト「MANTRA(マントラ)」の独自トークンOMの価格が急落し、約90%もの大幅下落が発生しました。
OMトークンは同日、約6.3ドルから0.50ドル未満まで値を下げ、時価総額もおよそ60億ドル(約8,600億円)から90%以上減少しました。
一部の市場参加者からは、この急落について「過去最大級のラグプル(詐欺的撤退)ではないか」との声が上がりました。数時間で数十億ドル規模の価値が消えたこの出来事について、2022年のLUNA/UST崩壊以来の深刻な暴落だとする見方も広がっています。
「MANTRA(マントラ)」は、分散型金融(DeFi)とRWA(現実資産)のトークン化に力を入れた仮想通貨プロジェクトで、ブロックチェーン上で不動産や証券などの実際の資産をデジタル化し運用できる基盤を提供しています。
MANTRA「OM」の急成長と暴落の真相
MANTRAへの期待が高まりOMトークンが急騰
今回の暴落前、OMトークンは市場で例を見ないほどの高騰と急成長を見せていました。
OMは2024年初めには0.02ドル未満とほとんど知られていない存在でしたが、その後の約1年で価格が9ドル(約1,300円)近くまで跳ね上がり、下落前には30,000%を超える目を見張る上昇率となっていました。
MANTRAは現実資産のトークン化(RWA)を得意とするレイヤー1ブロックチェーンとして注目を集め、Google Cloudとの提携やドバイの大手企業との協力など、大きなプロジェクトを次々と発表してきました。
今年1月にはドバイの不動産開発大手DAMACグループと10億ドル(約1,430億円)相当の資産をMANTRAチェーン上でトークン化する契約を結び、2月にはドバイ金融当局(VARA)から仮想通貨サービス事業者として正式に認可を受けました。
こうした実際のビジネスでの活用や規制面での前進が続いたことで、OMトークンは2025年に入ってから投資家から熱い支持を受け、市場全体が弱い動きを見せる中でも急激な上昇を続けていました。
MANTRAチェーンをローンチ
エアドロップ実施などによる売り圧力への懸念
しかし、この急激な値上がりに対しては早い段階から心配する声も出ていました。OMトークンは総発行量が10億枚弱と決まっている一方、そのうち6割以上がすでに市場に出回っており、一部の大きな資金を持つ投資家に集中しているという指摘もありました。
また、2025年3月には5,000万OMという大量のトークンをコミュニティ向けにエアドロップ(無料配布)する計画があり、この新たな供給が価格を押し下げる可能性も懸念されていました。
エアドロップ実施後の大量売却リスクが指摘されたものの、配られる新しいOMは既に市場にある量と比べると少なく、一定期間は売却できない仕組みになっていたため、当初はそれほど大きな影響はないだろうという見方もありました。
それでも市場では「エアドロップ目的の買い」が一巡すれば売りが出るという見方が強く、専門家からは高値に注意するよう警告が出ていました。さらに、ブロックチェーン上のデータからも気になる動きが見られていました。
ブロックチェーン分析によれば、今年2月頃から「「スマートマネー」と呼ばれる大きな資金を持つ投資家が次々とOMトークンを取引所に移し、直近1か月で合計4,250万ドル(約61億円)相当のOMを売却したことが確認されています。
特に暴落直前の1週間では、約5億9,000万ドル(約850億円)相当のOMが個人ウォレットから大手取引所に送られており、これは一般的に売却準備の動きと見られています。
大口による売り抜け示唆
こうした内部者や早期投資家による利益確定の売却が密かに進んでいたことで、市場の流動性が低下し、価格が下落しやすい状況になっていた可能性があります。
暴落の直接のきっかけについては、MANTRA共同創設者のジョン・パトリック・マリン氏がX(Twitter)スペース内で言及がありました。マリン氏は暴落直後の緊急対談で「週末にとある取引所で大規模な強制売却(ロスカット)が行われたようだ」と述べています。
名指しは避けつつも「特定の取引所が複数のポジションを一方的に処分した」と見解を示しており、これが突然の市場崩壊の原因となった可能性があると説明しました。
プロジェクト側は現在、この取引所で何が起こったのか詳細を調査中であり、取引所名を含め公表できる情報が揃い次第公表するとしています。
MANTRA(マントラ)の公式声明
この異例の価格暴落を受けて、MANTRAプロジェクトチームは14日早朝に公式声明を発表しました。
同声明によると、OMの市場価格が大きく変動したのは「中央集権型取引所による強制売却」が原因で、取引が少ない早朝の時間帯に、事前の警告なしに大量の取引が一斉に決済されたためだと説明されています。
この大量売りが起きたのは日本時間14日の早朝で、取引所側のミスか意図的な市場操作の可能性があると指摘しています。
さらにチームは「今回の市場混乱は、決して当プロジェクトチームや関連投資家による売却が原因ではない」と強調し、チーム保有のOMトークンは既定のベスティング(権利確定)期間に従ってロックされており、依然ロック状態にあることを明らかにしています。
発表では、OMトークンのトークノミクスは崩壊前から変更なく維持されているとも説明され、公式に公開されたウォレットアドレスでチーム保有分を確認できるとしています。現在、プロジェクト側は更なる詳細調査を進めており、追って追加情報を共有するとしています。
OM暴落後の混乱とコミュニティの反応
急落に直面したOMホルダーや仮想通貨コミュニティからは、すぐさま怒りと困惑の声が噴出しました。
SNS上では「プロジェクト運営が保有するトークンを市場で売り払ったのでは?」「プロジェクト運営による詐欺事件だ」といった怒りの投稿が相次ぎました。
突然の暴落により多くの投資家が巨額の損失を抱えたことから「故意のマーケット操作だとすれば刑事事件だ」「関係者は法的責任を追及されるべきだ」といった厳しい意見も出ています。
一部のユーザーは、この出来事を「Terra(LUNA)の再来だ」と呼び、OMが無価値になることへの恐怖感を露わにしました。公式テレグラム(Telegram)チャットが一時新規投稿を制限したことも相まって「運営がコミュニティとの連絡手段を削除し逃亡したのではないか」との憶測まで飛び交う事態となりました。
こうした混乱に対し、MANTRAチームは迅速にコミュニティの沈静化を図っています。
共同創設者のJPモリン(ジョン・パトリック・マリン)氏は自身のXアカウントで「私たちはここにおり、どこにも行きません」と表明し、プロジェクト継続の意思を強調しました。
Guys let's get a couple things straight:
— JP Mullin (
- The TG was not deleted.
- The Team tokens all remain in custody, verifiable at this address - mantra1yejpacug78zuqkzwwuc94c0a2al4mz4yfqquam
- We are actively figuring out why these massive forced liquidations occurred and will provide…,
) (@jp_mullin888) April 13, 2025
皆さん、2つのことをはっきりさせておきます。
・Telegram(TG)は削除されていません。
・チームのトークンはすべて保管されたままであり、以下のアドレスで確認可能です
mantra1yejpacug78zuqkzwwuc94c0a2al4mz4yfqquam
・強制清算が大量に発生した理由について、現在も調査を進めており、分かり次第すぐに詳しい情報を共有します。
・私たちはここにいますし、どこにも行きません。
また、モリン氏はチーム保有のOMトークンアドレスを公開し、暴落後もその残高に変動がないことを示すことで、チームによる売却疑惑を払拭しようとしています。公開されたウォレットアドレスには依然としてチーム割当のOMが保管されており、第三者がブロックチェーン上で確認可能な状態になっています。
さらにMANTRA公式は「今回の価格崩壊はチームの関与によるものではなく、無謀な強制売却が引き金だ」と改めて説明し、コミュニティメンバーに冷静な対応を呼びかけました。
プロジェクトのコミュニティマネージャーであるダスティン・マクダニエル氏も、Telegram上でユーザーに向けて状況を説明しています。同氏は「コアチームは事態を重く受け止めており、現在対応にあたっている」と述べ、当面Telegramグループを新規参加者に対して閉鎖する措置を取ったことを明らかにしました。
この発言により「Telegramが削除された」とのデマは訂正され、公式チャネル自体は存続しているものの、新規ユーザーの流入やスパム投稿を防ぐため一時的にロックダウンされている状況が伝えられました。
ただし、依然として今回の急落に不信感を抱く声は少なくなく、真相解明と再発防止策に向けたチームの今後の対応が注視されています。
類似の仮想通貨暴落スキャンダル
急激な価格暴落とそれに伴うインサイダー取引疑惑は、今回が初めての事例ではありません。仮想通貨(暗号資産)業界では過去にも類似の崩壊劇が起きており、その都度市場に大きな衝撃を与えてきました。
Terraエコシステムの崩壊
2022年5月、アルゴリズム型ステーブルコインとして設計されていたTerraUSD(UST)のドル連動が崩れ、関連トークンのLUNA価格がほぼ無価値になるまで暴落しました。この事件では、投資家は総計400億ドル以上(約5兆7,000億円)もの損失を被ったと推計されています。
わずか数日の間に時価総額上位にあった仮想通貨が崩壊した様は「歴史的な大暴落」として記憶され、その後の仮想通貨市場全体の信用不安を招きました。
「LIBRAトークン」スキャンダル
2025年2月、アルゼンチンのミレイ大統領が自身のSNSでプロモーションしたことで注目を集めた新興ミームコイン「LIBRA」は、一時4.50ドル近くまで急騰した後、数時間で95%以上急落する事態となりました。
ブロックチェーン分析会社ナンセンの調査では、価格急騰の局面で34の関連アカウントが合計1億2,460万ドル(約177億円)の利益を得ていた一方、大半の一般投資家は損失を抱えたことが明らかになっています。
さらに、開発元に紐づく8つのウォレットが約9,900万ドル(約142億円)相当の仮想通貨を引き出していたことも判明し、意図的なインサイダーによる売抜け(マーケット操作)との疑惑が浮上しました。この件では大統領自身が詐欺罪で告発される事態に発展し、政治的なスキャンダルとしても波紋を広げています。
$LIBRAトークンスキャンダル
OM暴落に見る仮想通貨市場の課題
OMトークンの今回の暴落劇も、こうした過去の事例と同様に投資家心理と市場構造の脆弱性を突いた形で起きたものといえます。
短期間で極端な高騰を遂げた仮想通貨は、その反動もまた急激になりやすいことが歴史的にも示されています。内部者による利益確定売りや強制清算といった要因が重なった場合、連鎖的な暴落を招くリスクが常につきまとう点において、今回のOM騒動は改めて注意喚起となりました。
業界内では、こうした事件を教訓として、プロジェクトの透明性向上や取引所のリスク管理強化を求める声が強まっています。信頼回復に向けて、MANTRAチームが今後どのような対応策と再発防止策を講じるかに注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=142.68円)
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Source:MANTRA公式声明
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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