ブロックチェーンが物流業界にもたらす可能性とは?
ブロックチェーンの技術は現在世界的に大きな注目を集めており、各国の大手企業や金融機関だけでなく、国の政府なども力を入れ始めています。そんなブロックチェーンの最大の活用方法の一つが物流への適応です。後の具体的な魅力について紹介します。
ブロックチェーンの活用方法
ブロックチェーン上に保存されたデータは基本的には誰でも閲覧することができますが、改ざんすることは極めて難しいのが特徴です。さらにわかりやすくいえば、世界中の商人たちが何千年にもわたって拠り所としてきた『帳簿』をデジタル化し、暗号化することで、より安全にしたものです。
この革新的な技術の開発はまだ始まったばかりであるため、ブロックチェーンの世界は悪徳商法や詐欺なども非常に多く懐疑論も根強いのが現状です。
また『分散型』を支持する人々がブロックチェーンを活用している「問題」に関しても、分散化することの利点をうまく活用できていないことも多いのが事実です。
「Long Island Iced Tea」というアイスティーをつくっている会社が、社名を「Long Blockchain Corporation」に変えた途端に、勘違いした投資家のおかげで株価が6倍に跳ね上がったというジョークのようなニュースさえも報じられています。
その一方、サプライチェーンの分野はこの技術の活用方法として理に適っているものの一つであり、『モノ』の移動を世界規模で追跡することができます。
しかしどれだけ活用すべき利点があったとしても実際にそれらに技術を適用し運用していくことは大仕事でもあるため、具体的に実用化に至るまでには、少なくともあと数年はかかるだろうと言われています。
アナログで非合理的なシステム
現在の宅配サービスでもいくつかの通知機能などがついているものもありますが、それらのサービスにはまだまだ多くの要望や改善を望む声も寄せられています。
多くのメールが送られてきても、実際に顧客が知ることができるのは荷物の現在位置とその履歴だけです。
またそのプロセスが複雑なものも多いため実際に利用しているユーザーもそれほど多いわけではなく、それらの画期的な追跡機能を十分に活用できていないようにも感じられます。
特に衣類や食料品、ブランド物などのような商品を世界中に販売するためには、世界各地で何十人もの人や業者が絡んでくるためそれらすべてを適切に管理することは容易なことではありません。
具体的な工程としては、生産地から港や空港に運ばれコンテナなどに収納して荷積みを行なったのちに、税関の職員が必要な書類に署名する必要などもでできます。輸送する際に商品に傷がついたり、問題が発生しないように誰かが注意を払っている必要もあります。そして、こうしたやり取りのほとんどはいまだにアナログで行われています。
これらの問題点は『関係者が多すぎる』ことであり、それらの人々が『相手からの連絡をただ待っていること』です。
スマートコントラクトの可能性
世界的に見れば物流業界では、原産地証明書、請求書、保険証書、船荷証券などの必要書類は未だに紙ベースであることも多いと言われています。IBMによると、こうした書類業務は輸送コスト全体の5分の1を占めています。ここにはデジタル化が進む一方で、実際の導入が追いついていないという問題が現れています。
しかしブロックチェーンを活用すれば、必要書類をデジタルで作成すると同時に、関係者全員が荷物の現在位置を把握できるようになります。
これらのシステムはアプリで簡単に操作できるようにすることで、QRコードをカメラでスキャンしたり、必要な情報を埋め込んだRFタグ、ネットに接続したセンサーなどのようなほかの技術を組み込むことができます。
代表的なブロックチェーン技術のひとつに、契約を自動化することができる『スマートコントラクト』と呼ばれるものがあります。この技術は特定の条件を満たしたとき、何かを自動で実行することができます。
例えば、商品が届け先の港に着いた時などには、自動的に送り主への支払いを行うようにすることもできます。またブロックチェーン上の情報は簡単に書き換えることができないため、重要書類の処理にも活用することができます。
『分散化』がもたらすものとは?
これらの利便性を最大限に活用するためには、将来的にサプライチェーン内の誰もが同一のデジタルシステムを使っていることが理想的です。ブロックチェーン技術は、RFタグやネットを利用したセンサーシステムといったほかのツールとともに、輸送状況をリアルタイムで追跡することにも活用することができます。
例えば、バナナが傷むことを防ぐためにコンテナ内部の温度を監視するセンサーの場合では、温度管理のデータはブロックチェーンに記載されて誰もが確認できるため、改ざんすることはまず不可能です。またその他にもバナナが腐り始めるようなことがあれば、それがいつ、またなぜ起きたのかまでも特定することができます。
では、もし誰かがこれらのデータを実際にごまかそうとした場合にはどうなるでしょうか?
ブロックチェーンは『分散型の合意システム』であるため、誰かひとりが牛耳っているわけではありません。
これらのほとんどは世界中に公開されており、全ての人々の手によって成り立っているため、システムを開発した企業ですら全体をコントロールすることはできません。データを改ざんしようとすれば必ずわかるだけでなく、下手をすればシステムが機能停止に陥る可能性もあります。
「分散型」という仕組みは、これまでプラペートに保護していた情報を逆にオープンにすることによって、新たな安全性と可能性をもたらすことができます。
ある企業は以前に、別の企業が開発したソフトウェアメーカーの開発したプラットフォームを使っていたものの、そのメーカーが競合に買収されたために、自社のデータをすべて失ったといいます。その時にブロックチェーンが利用されていれば、そのような自体にはならなかったはずです。
物流に活用するための2つの課題
物流分野にサプライチェーンを導入するためには2つの大きなハードルがあります。
どちらもテクノロジーそのものに関する問題ではないものの、まず初めに何十社という企業を含むサプライチェーン上のすべてのプレイヤーに、この新しいシステムへの移行を納得させなければいけません。
次に直面するのは管理統制の問題です。
ブロックチェーンは中央集権型ではないため、維持管理をどうするかについては慎重に考える必要があります。
- データを使えるのは誰か
- データを見られるのは誰か
- データの分析を行うのは誰か
- 分析したデータは共有するのか
このようなすべての問題ついて、全員が満足するようなやり方を見つける必要があります。
こうした問題を解決し規制当局の合意を取り付けるまでには、おそらくあと何年かはかかると予想されます。
また、商品の品質を重視する人も多いものの『安ければそれでいい』という人もまた多いため、そのような意見のどちらが大多数を締めることになるかにも、関係してくるでしょう。
しかし品質の問題を抜きにしてもブロックチェーンの技術は大きな可能性を秘めています。