2023年6月1日、暗号資産のトラベルルールが日本で法律上の義務となりました。
トラベルルールとは、取引所から暗号資産を送金する際に、送金者と受取人の情報を送金先の事業者へ共有することを義務づける国際的な規制です。
マネーロンダリングやテロ資金供与を防ぐことを目的に、日本では2022年4月の自主規制を経て、2023年6月の改正犯罪収益移転防止法で法制化されました。
2026年8月時点では、金融庁が通知義務の対象とする国・地域は63法域まで広がっています。
この記事では、トラベルルールの仕組みと目的を確認したうえで、送金時に必要な情報やよくある質問、情報提出を回避できるのかまでを整理します。
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トラベルルールとは?
トラベルルールとは、暗号資産の送金時に送金者と受取人の情報を共有することを義務づける国際的な規制です。資金洗浄対策で各国が協調する政府間機関「FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)」が策定した勧告(Recommendation 16)が土台になっています。
具体的には、暗号資産交換業者が利用者の依頼で暗号資産を出金する際、送金者と受取人の情報を出金先の交換業者へ通知します。取引の追跡可能性を高め、匿名性を悪用した違法取引を防ぐとともに、問題が起きた場合に送金者を特定できるようにする狙いがあります。
日本では金融庁の要請を受け、2022年4月に一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の自主規制規則として運用が始まりました。その後、改正された犯罪収益移転防止法により、2023年6月1日からは法律上の義務として位置づけられています(金融庁・施行令改正の公表資料/2026年9月時点)。国内の暗号資産取引所では、送金時に受取人情報などの提出が必要です。
対象となる国・地域は段階的に拡大しており、金融庁の指定では63法域まで広がりました(2026年8月時点)。相手国側にも日本と同等の制度が整っていることが前提となるため、対象外の国・地域への送金には制約が生じる場合があります。
金融庁がトラベルルール導入要請
仮想通貨送金時に必要になる情報
国内の取引所から外部へ暗号資産を送金する際は、主に以下の情報を取引所へ提出します。
- 受取人の氏名とフリガナ/法人名
- 受取人のアルファベット氏名/法人名
- 送付先名(取引所の名称等)
- 送付先の国・地域
- 送付先の郵便番号
- 受取人との関係性
- 送付目的
提出する情報は「受取人が誰か」「送付先が取引所かウォレットか」によって変わります。整理すると次のとおりです。
| 送金先 | 主に必要になる情報 |
|---|---|
| 自分自身の別口座(取引所・ウォレット) | 送付先の取引所名・国地域 など |
| 本人以外(第三者) | 受取人の氏名・関係性・送付目的 など |
日本国内の取引所では「送金先のウォレットアドレスを事前に登録しておき、送金時にそれを選ぶ」方式が一般的です。受取人情報はアドレス登録時に入力するため、送金のたびに入力し直す手間はかかりません。
これらの情報提出は、FATFの指針に基づいて各国の規制当局が導入した措置です。利用者にとっては手続きが一手間増えますが、取引の透明性を高め、不正利用のリスクを軽減する役割を担っています。今後はブロックチェーン技術の進化により、より効率的で安全な情報共有の仕組みが整う可能性もあります。
国内取引所間で送金できないケースも
トラベルルールに関するよくある質問
トラベルルールについては、利用者から多くの疑問が寄せられています。まず代表的な質問と結論を一覧で確認し、そのうえで各項目を詳しく見ていきます。
| 質問 | 結論 |
|---|---|
| 自己管理型ウォレットへ送金できる? | 可能(受取人情報の入力は必要) |
| 海外取引所へ送金できる? | 2026年9月時点では可能(今後の法改正で制限の可能性) |
| 対象となる仮想通貨は? | 国内取引所に上場する全銘柄 |
| 情報提出を回避する方法は? | 国内の合法な取引所では回避できない |
自己管理型ウォレットへの送金は可能?
受取先がMetaMask(メタマスク)やハードウォレットなどの自己管理型ウォレットであっても、暗号資産を送金できます。ただし送金時には、受取人情報や送金目的などの入力が必要になります。
取引所で送金先アドレスを登録する際、通常は「取引所のウォレットか」「プライベートウォレットか」の選択を求められます。ここで「プライベートウォレット」を選び、受取人(自分自身)の情報を入力すると、自己管理型ウォレットへ送金できます。
なお、自己管理型ウォレットを使う際はセキュリティ面への配慮も欠かせません。秘密鍵の管理やフィッシング詐欺への警戒を怠らず、常に最新の規制やルールを確認しながら利用することが求められます。
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海外の暗号資産取引所への送金は可能?
「海外取引所には送れなくなる?」という声もありますが、2026年9月時点では送金が可能です。例えば取引所ビットバンクでは、ウォレットアドレス登録時の「暗号資産取引所一覧」からBINANCEやBybitなどの海外取引所を選択できます。
ビットバンクの送金先アドレス登録画面(画像:bitbank)
一方で、関連法の改正により、海外への直接送金が可能な取引所は随時見直されています。今後の変更によっては「国内取引所から海外取引所への直接送金」が制限され、「国内取引所→ウォレット→海外取引所」という経路に切り替わる可能性もあります。利用前に最新の対応状況を確認しておくと安心です。
暗号資産取引所ビットバンクとは?
受取人の住所には何を入力すればいいのか?
送金先アドレスの登録時に「受取人の住所」を求められることがありますが、ここで入力するのは送金先取引所の住所ではなく、受取人本人が実際に暮らす居住地の住所です。これはマネーロンダリング防止や送金の追跡可能性を確保するために設けられた項目となっています。
受取人の住所が分からない場合は、受取人へ直接確認する必要があります。自己管理型ウォレットへ送る場合も同様に、受取人(自分自身)の住所情報が必要です。
なお、この住所情報は暗号資産交換業者が適切に管理し、不正利用の防止や犯罪捜査への協力といった目的以外では使用されません。FATFの指針に沿った措置であり、取引の透明性向上を目的としています。
対象となる仮想通貨は?
トラベルルールの対象は、国内取引所が扱うすべての暗号資産です。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの主要通貨はもちろん、アルトコインやステーブルコインまで、国内取引所に上場する全銘柄が対象になります。
そのため銘柄を問わず、国内取引所から外部へ送金する際には、指定された情報の入力が必要です。これはFATFの勧告に基づき、送金者と受取人の情報を確認して不正な資金移動を防ぐことを目的とした仕組みになります。
なお「規制の対象であること」と「実際に送金できること」は別の話です。国内取引所が採用する通知システムには「TRUST」と「Sygna」などがあり、2026年9月時点ではこれらの互換性が限られています。そのため、異なるシステムを使う取引所どうしや、システムが対応していない銘柄では、送金・受取が制限される場合があります。送金前には、利用する取引所の公式ページで対応銘柄と送金先を確認しておくと安心です。
情報提出を回避する方法は?
日本国内の法律に準拠した取引所から外部送金する際は、各種情報の提出が必須であり、回避できません。自己管理型ウォレットへ送れば「そのウォレットからの送金時」には情報提出は不要ですが、ウォレットへ送金した時点で所有者情報が交換業者に記録されます。
そのため、ウォレットの送金履歴を辿れば、その後どのアドレスへ送金したかが判明する可能性があります。トラベルルールは、不正利用があった場合に取引を追跡・特定できるようにすることを目的とした国際的な規制だからです。
匿名性を利用して違法取引や脱税のために情報提出を回避しようとする行為は、法律違反となる可能性が高いものです。暗号資産取引では、適切に確定申告を行い、納税義務を果たす必要があります。
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