ブロックチェーン先進国へ!リトアニアの挑戦「我々は負けるつもりはない」
リトアニア共和国では仮想通貨やブロックチェーンのベンチャー企業を積極的に受け入れる政策を展開しているため、仮想通貨ブームが巻き起こっています。しかしこのような地域独自の盛り上がりは周辺国にも影響を与えているため、EU諸国の各中央銀行は今の状況を心配し複数の懸念を抱いています。
首都ヴィリニュスを目指す世界のスタートアップ企業
ビットコイン(BTC)の価格が高騰してから、仮想通貨の世界はオープンで自由な状態が続いていました。しかし現在、そのような自由な環境は厳しい規制や法律に徐々に覆われています。その中でリトアニアは現在の一方的に規制を強化する傾向に立ち向かい、寛容的な規制枠組みの設定に取り組んでいるため、結果的に経済的にも景気の良い状態が続いています。
最近では多くの国が仮想通貨への規制を強化していますが、リトアニアの立法府や規制当局はブロックチェーンや仮想通貨を土台としたのビジネスを積極的に受け入れています。
国がオープンにあらゆるプロジェクトを受け入れたことによって、仮想通貨はこの国に大きな成果をもたらしており、リトアニアの国民経済は、欧州の平均である2.3%よりも高い3.1%の成長が見込まれています。
リトアニアでは昨年、仮想通貨やブロックチェーン関連の事業が多額の資金を調達しました。世界各地のスタートアップ企業は、リトアニアのこのような姿勢や環境に注目し、ビジネスを行うために首都ヴィリニュスに移動し始めています。
しかしリトアニアのこのような急速な成長や、自由な環境をEU諸国の中央銀行はあまり良く思ってはいません。
仮想通貨への期待と懸念
EU諸国の中央銀行の多くは、リトアニアが作り出した自由な環境を心配しています。各銀行の代表者らは、違法行為、テロなどの恐怖に使用されている仮想通貨について、FUD(*1)を叫んでいます。
(*1)FUD(Fear Uncertainty Doubt):『Fear(不安)Uncertainty(不確実)Doubt(疑念)』の頭文字を取ったもの。不安感をあおることで、相手を不利にさせて自分や自社の目的を達成するというアンチマーケティング手法のひとつ。
イングランド銀行(Bank of England/BoE)
イングランド銀行(Bank of England/BoE)のマーク・カーニー(Mark Carney)氏は、ビットコインについて次のように述べています。
ビットコインは今までに、伝統的なお金としての側面でほとんど失敗しています。
それは価値のあるストアではありません。
何故ならそれは図面上にあるからです。誰も交換媒体としてそれを使用しません。
ポーランド国立銀行(Narodowy Bank Polski/NBP)
ポーランド国立銀行(Narodowy Bank Polski/NBP)は、同国のYouTubeのスターであるマルシン・ドゥビエル(Marcin Dubiel)氏に、仮想通貨投資の危険性を解説するビデオの制作を依頼しました。タイトルは「私はすべてのお金を失う?」となっています。
スウェーデン中央銀行(Sveriges Riksbank)
スウェーデン中央銀行(Sveriges Riksbank)の副知事であるセシリア・スケングレー(Cecilia Skingsley)氏は「ビットコインは通貨ですらない」と述べています。
スペイン銀行(Banco de España)
スペイン銀行(Banco de España)総裁であるルイス・マリア・リンデ(Luis Maria Linde)氏は、次のように述べています。
私の意見では、現在の仮想通貨の使用は利益よりも多くのリスクをもたらしています。支払手段としての受け入れが低く、極端なボラティリティがあり、運営上に複数の脆弱性が存在し、多くの場合は不正または不法行為に関連しています。
しかしこのような批判は、リトアニアの人々に大きな不安を与えているわけではありません。
リトアニア欧州議会議員
リトアニアのMEP(欧州議会議員)であるグアガ・アンタナス(Antennas Guoga)氏は、「これはつまりリトアニアが勤勉な革新者たちを引き寄せているということだ」と語り、同国の仮想通貨への政策について次のように説明しています。
経済学的に言えば、我々はまだ西ヨーロッパには及びません。しかし、我々は負けるつもりはありません。
リトアニアでは現在多くの議論が交わされています。このように指摘をものともしない人々もいる一方で、リトアニア銀行(Lietuvos Bankas)の取締役であるマリウス・ユリラス(Marius Jurgilas)氏は、バルト国家がロシアの地下経済から恩恵を受けていることに関する懸念について話し合ったと報じられています。
ブロックチェーン先進国への第一歩
リトアニアで仮想通貨ブームが巻き起こり、仮想通貨への関心が高まったことによって、ロシアの犯罪組織がマネーロンダリング(資金洗浄)に利用する動きが活発化し、ここ最近では多くの懸念が生まれています。
ユリラス氏は、ICO投資の70%が主にロシアによるものであると指摘しており、「ロシアからの不透明な資本の流入はリトアニアの国益と一致しない」と語り、「そのことを投資家に伝えるために何度も訴えている」と述べています。
リトアニアの仮想通貨市場とロシアの地下経済
このような状況を受けたリトアニアの財務省は、6月11日に証券法の新しい解釈を概説する文書を発表しました。この枠組みはリトアニアの中央銀行が商業銀行と仮想通貨企業に関与して仮想通貨の立場を明確にするための取り組みに従ったものであり、ICOのガイドラインを提供し、欧州連合(EU)の複数の同盟国を規制の面で先導しています。
リトアニア、エストニア、ラトビアのバルト諸国では、仮想通貨を適切に扱うための環境づくりに注力しています。ビットコイン決済も一般的になりつつあるこれらの地域は、マルタ共和国のようにブロックチェーンで栄える最先端の国になるための、一つの重要なステップを迎えています。
バルト諸国の仮想通貨事情についてはこちら
組織的なマネーロンダリングなどに対し適切な規制を進め、EU諸国で巻き起こる懸念の声にも対処することができれば、リトアニアを始めとするバルト三国やその他周辺の国々は今後大きな発展を遂げることになるのではないでしょうか。「ブロックチェーン先進国」への大きな一歩を歩み始めた国々の今後の新たな政策やプロジェクトを今後も追っていきます。