流出したNEMの資金洗浄が完了|その後の捜査状況は?
仮想通貨取引所Coincheck(コインチェック)から不正に流出した約580億円分のネム(NEM/XEM)は、ほぼ全額がほかの仮想通貨に交換されたことを複数の報道機関が専門家の話として伝えています。報道によると、北朝鮮による犯行の可能性は低いと見られている他、捜査本部が通信記録を解析した結果、流出の数時間前まで欧米のサーバーからの不審な通信記録が確認されてはいるものの、発信元の特定には至っていないとのことです。
全額が資金洗浄されるまでの経緯
今回の事件の一連の流れを分析している情報セキュリティーの専門家は、3月22日頃には犯人側のマネーロンダリング(資金洗浄)が完了したとみています。
情報セキュリティー会社エルプラスの杉浦隆幸社長が、ネット上に公開されたNEMの取引記録などから交換状況を分析した結果によると、流出後のネムは次のような経緯を辿ったとみられます。
1月26日
・流出直後にNEMの一部が無関係とみられる第三者のウォレットに送られる
2月7日頃
・匿名性の高い闇サイトであるダークウェブ上で残りのNEMの交換が開始
3月中旬
・流出したネム全体の約半分が交換される
3月20日
・NEM財団が追跡を停止したと発表した辺りから交換の動きが加速
3月22日
・午後7時頃には闇サイト上のNEMの残高がゼロになりほぼ全額の資金洗浄が完了
交換された仮想通貨の追跡は困難であるため、流出したNEMの回収は事実上不可能となりました。
捜査の進行状況
以前は北朝鮮による犯行であることが疑われていましたが、残高がゼロとなった後の闇サイトでは金正恩氏のコラージュ写真に「Thank you!!!」の文字が添えられた画面に切り替わっていたことなどから「北朝鮮による犯行はありえない」との見方が強まっています。
闇サイトに掲載されたコラージュ写真捜査関係者によると、交換されたビットコインは複数のウォレットに数億円分ずつ保管されているとのことです。
警視庁は、2月下旬に捜査本部を設置し捜査員を約100人動員しており、コインチェックのシステム通信記録(ログ)を解析するなどを行い、流出の経緯を調べています。
現時点では、ネムが流出する数時間前に欧米のサーバーが不審な通信をしていたことが確認されており、流出に関与した人物が不正にアクセスしてNEMの移動に必要な「秘密鍵(プライべーキー)」を盗んだ疑いがあるとみられていますが、発信元の特定には至っていないとのことです。
捜査本部は、取引に応じた人物から事情を聴きビットコインなどの取引状況を引き続き調査しています。
現在のNEMの価格は?
2018年3月24日現在のネムの価格は、1XEMあたり約29円となっています。今年1月には一時200円を超えたNEMはその後急激に暴落しましたが、現在は30円前後で横ばいの状態となっています。
NEMの今後はどうなる?
今回の流出事件の後、NEMに対してネガティブなイメージを抱いた方もいるようです。しかし今回の事件で問題があったのは、NEMではなくコインチェック社のセキュリティです。
NEM自体に問題が無いだけでなく、事件直後に迅速な対応を行なった「NEM財団」や「善意で捜査に協力した関係者」には、多くの賞賛の声が集まっています。
2016年12月に中国のCERT(中国の非営利サイバーセキュリティセンター)が行なった、ビットコイン/イーサリアム/リップルなどを含む、25種類の仮想通貨のセキュリティ調査では、NEMは最も安全なプロジェクトであると報告されています。
また、NEMは今年中に「カタパルト」が行われる予定でもあり、1秒間に4000件の取引を処理できるようになるとされています。
今回の騒動が落ち着くのと同時に、NEMに対する純粋な評価が価格に反映されることになるでしょう。