マカフィー・アンチウイルスの創始者であるJohn McAfee(ジョン・マカフィー)氏は18日、Twitter上で『ICOにはもう一切関与しない』と発言しました。これまでにも数々の仮想通貨に価格の高騰をもたらしてきた同氏の発言は、それらに関連するトークンや仮想通貨の将来に厳しい現実が待ち構えていることを示唆しています。
John McAfee(ジョン・マカフィー)氏の影響力
ジョン・マカフィー氏は仮想通貨の世界に特に大きな影響力を持つ人物として世界的に有名です。”ブロックチェーンと仮想通貨の伝道者”とも言われるマカフィー氏は、これまでにも数多くの仮想通貨に信じられないほどの影響を及ぼしてきました。
彼の名前を轟かせるきっかけとなった最初のツイートでは「2,000種類のコインのほとんどはゴミや詐欺である」とされており、その日から彼が紹介する仮想通貨の多くはかなりの価格上昇が記録されることとなりました。
「私は毎日ユニークなアルトコインについて話します。2,000種類のコインのほとんどはゴミや詐欺です。私はすべてのホワイト・ペーパーを読みました。私と繋がる数少ない関係者へ伝えます。他の人はその立場にありません。これらのコインは世界を変えるでしょう。そしてあなたはその変化をサポートすることができるのです。」
その発言が与える影響力の大きさから、マカフィー氏によるコメントは『マカフィー砲』としてその名を轟かせています。
マカフィー砲は一発1,100万円
マカフィー砲とは、John McAfee氏が自身の Twitter上で2017年12月21日から行なっていた「特定の仮想通貨に関するツイート」のことを指します。『今日のコイン』という見出しと共に紹介された数々の仮想通貨は、彼のツイートと共に2倍から3倍にまで一気に価格が上昇していました。
最初のマカフィー砲となったのはBURSTCoinでした。ツイートが投稿された当時は、およそ5000人以上がこの話題についてつぶやいており、大きな反響を生みました。その結果、それまでは大きな動きのなかったBURSTCoinは、ツイートされた瞬間に約2倍以上も価格が高騰しました。
その後もDigibyte(DGB)、Reddcoin(RDD)、TRON(TRX)、DogeCoin(DOGE)などの様々な仮想通貨の価格を高騰させており、Vergeトークンに至っては彼が「数ヶ月先には2倍になる」と発言したのちに、最終的には150倍まで価格が高騰する結果となりました。このような数々の事例によって『マカフィー砲』は大きな注目を集めることとなりました。
マカフィー氏はこれまでに「仮想通貨の未来はICOにある」とも発言しており、自身のツイッターで仮想通貨やICO関連のプロジェクトや製品を宣伝する場合には、1件につき10万5000ドル(約1,157万円)を要求することも発表していました。
今年の1月には「仮想通貨の将来は、新興のコイン技術とICOを通じて現れる創造的なアイディアにある」とも語っており、マカフィー氏は仮想通貨やICOに大きな影響を与える人物の一人として現在も世界中から多くの注目を集めています。
しかしそんなマカフィー氏はこれまでのそのような発言から180度意見を変え、6月18日に「ICOにはもう関わらない」と発言しました。
ICO規制の現実
それまでは”ICOを通じて現れる創造的なアイディア”を高く評価していたマカフィー氏は18日、米国証券取引委員会(SEC)の脅威を理由に、ICOへの関わりを断つことを宣言し、「ICOを推進する人たちは逮捕されるのを楽しみにした方が良い」とまで発言しました。
和訳:SECの脅威があるため、私はもうICOに関わらないし推薦もしません。ICOを推進する人たちは逮捕されるのを楽しみにした方が良い。不公平ではあるがこれは現実です。私はSECの監視が届かないICOの代わりとなるものについて現在記事を書いています。もう少し待ってください。
この発言に対してSECはコメントを拒否していますが、SECが最近発表した内容では、ほとんどの仮想通貨や
ICOによって発行されたトークンが証券に分類される可能性が高いことが明らかになっています。
米国証券取引委員会(SEC)による脅威
ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)は特定の機関によって集権的に管理されていないことから『証券ではない』と判断されたものの、ICOで発行されたトークンはもちろんのこと、リップル(XRP)、イオス(EOS)、カルダノエイダコイン(ADA)などの主要な仮想通貨も証券に分類される可能性が非常に高いとみられています。
SECのロバート・ジャクソン氏は今年の4月に、「特にICOは、SECがこれまでにみてきた中でも厄介な問題に満ちており、投資家は投資と詐欺を見分けるのに苦労している」と述べています。
また、今月に入ってSECのジェイ・クレイトン委員長は「ビットコインは、ドル、円、ユーロといったものを代替しており、このタイプの通貨は証券ではない」と語り、ICOについては「証券なら規制する」と述べ、「ICOは長い間機能してきた証券の定義を覆すものではない」と発言しました。
クレイトン氏は2月に米議会公聴会の中で「SECがこれまで見てきたすべてのICOは証券とみなされる」とも語っています。
SECによって証券と分類された仮想通貨は、より厳しい規制の対象となります。
「ICO」から「STO」へ
このようなことから考えると、マカフィー氏の”ICOを推進する人たちは逮捕される”という発言も現実味を帯びてきます。実際にICO関連の詐欺事件は数多く起きており、それらの問題は今や誰もが知っている”事実”として認識されています。
マカフィー氏自身も以前に「私がSECにアドバイスするなら、”もっとやれ、すべてを規制しろ”だ」とも語っており、ICO自体に大きな問題が潜んでいることを訴えていました。
このようなことも踏まえると、これから各種仮想通貨やトークンなどの規制が本格化し『詐欺コイン』などへの対応をより厳しくなるとともに、実際に逮捕者も増えてくる可能性は十分にあると言えるでしょう。実際に日本でも仮想通貨モネロ(XMR)の不正マイニング(採掘)による逮捕者も出てきています。
日本での逮捕者も!モネロ不正採掘の現状
しかしこれらの取り締まりは、不正な取引などを行なっていないユーザーにとっては良いニュースです。これまでは『詐欺かどうかを見分けるのが難しい』とされていたICOなどに関しても一定の安全ラインを見極めるための基準にもなるでしょう。
注意が必要なのは、現時点で複数の仮想通貨やトークンを保有している人々です。今後各国の規制当局の取り締まりが本格化することになれば、現在出回っている仮想通貨のほとんどの価格が下落することもあり得るため、そうなった場合に管理できないほどの種類を保有している人は早めに整理しておく必要があると言えるでしょう。
マカフィー氏の今回の発言もそうですが、ここ最近のニュースからも不正な仮想通貨が淘汰される日も迫っているように感じられます。
さらにここ最近では、ICOではなく、新たにSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)というものも出てきています。
セキュリティ・トークン・オファリング(STO)とは
セキュリティ・トークン・オファリング(STO)とは、これまでに何度も問題として取り上げられてきた”投機的な価値を持つ”トークンを各規制機関のルールに基づいた”投資商品”として発行するようにしたものです。つまりSTOは、投資的な側面を持つユーテリティ・トークンではなく『投資用のトークン』を発行するためのものになります。
STOで発行される通貨は、パブリック・オファリング(公開通貨)として発行されます。これはSEC等の規制枠組みに基づいた上での通貨発行であるため、有望なプロジェクトのみがSTOを行うことができるようになり、スキャムコイン等のような不正な仮想通貨は淘汰されることになります。
STOはトークンを規制に基づいた金融商品として発行することによって、現在懸念されている規制強化に適切に対応しつつ、不正行為などを削減できる可能性も備えています。
しかしその一方で、STOは自由度が少ないだけでなく、参加できる投資家が限られているものもあるため、ICO特有の利点を損なうと指摘する声もあがっています。
現時点でのSTOはまだ提案段階であるため、市場にどのような影響を及ぼすのかはわかりませんが、すでにSTOを実施しているプロジェクトも実際に複数存在しています。今後はICOがSTOへと改良されていくという可能性も高いと言えるでしょう。
これまでにも価格の上昇を見事に予言してきたともいえるマカフィー氏は、”ICOを推進する人たちは逮捕されるのを楽しみにした方が良い”と述べています。この予想が当たるとは言えませんがその可能性も十分あると考えられるため、今後新たなICOへ参加する際には、STOの存在も考慮しつつ慎重に考える必要があるのは間違いないでしょう。