金融庁「暗号資産仲介業の新設・所属制の採用」を検討|実現するとどうなるのか?

by BITTIMES

暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)の新設を提案

金融庁が暗号資産(仮想通貨)の媒介のみを行いたい事業者の要望に応えるために、暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)を新たに創設することを検討していることが明らかになりました。

この検討は2024年11月21日に行われた金融審議会「資金決済制度等に関するワーキング・グループ(第5回)」の中で行われたもので、現在は金融庁公式サイト内で関連する説明資料も公開されています。

暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)に関する内容は説明資料5〜10ページに記載されており、現在既に存在している「暗号資産交換業」とは別に、より規制を軽くした「暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)」を新設することが提案されています。

仮想通貨取引の媒介に関する現在の問題点

仮想通貨業界では、ゲーム会社や通信会社などが自社アプリやウォレットなどに「仮想通貨取引所を介した仮想通貨の売買機能」を追加しようとする動きが出ています。

しかし、既存の国内規制ではこのような仮想通貨取引の仲介行為が資金決済法上の「媒介」に該当するため、仲介する形でこれらのサービスを提供する場合も暗号資産交換業者などの登録が必要となっていました。

暗号資産取引の媒介に関する具体例と指摘(画像:金融庁説明資料)暗号資産取引の媒介に関する具体例と指摘(画像:金融庁説明資料)

イノベーションを阻害しないための解決策

暗号資産交換業者は「仮想通貨同士の交換、仮想通貨と法定通貨の交換、ユーザーの資産管理、仮想通貨取引の媒介・取次ぎ・代理」などといった様々な行為を行う事業者であるため、資金洗浄対策(AML/CFT)などを含む厳しい規制が定められています。

しかし、事業者の行為が「媒介」に限定されている場合は、その事業者が仮想通貨取引の当事者となるわけではなく、ユーザーの資産を預かることもないため、"利用者に生じるリスクは限定的になり、AML/CFT規制を仲介業者に課す必要性も下がるのではないか"との考えが示されています。

比較的リスクが低い仮想通貨取引の仲介を行う事業者に仮想通貨交換業者と同じ規制を課した場合には、Web3関連のイノベーションを阻害する可能性があるため、「業務内容を考慮して柔軟な規制を整備し、リスクに応じた規制・監督を行っていくこと」が提案されています。

暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)が新設されると、暗号資産交換業者の登録を行うことなく仲介業者としての登録で「仮想通貨売買・交換の仲介サービス」を提供できるようになるため、仮想通貨取引機能をゲームやウォレットなどに導入しやすくなり、Web3業界の成長を促進させることができると期待されます。

暗号資産の媒介のみに関する規制の考え方と仕組みの見直し案(画像:金融庁説明資料)暗号資産の媒介のみに関する規制の考え方と仕組みの見直し案(画像:金融庁説明資料)

暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)に関する具体的な規制案(画像:金融庁説明資料)暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)に関する具体的な規制案(画像:金融庁説明資料)

「所属制」と呼ばれる仕組みの提案も

今回の議論では、暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)の導入で「所属制」と呼ばれる仕組みを採用して、所属先の暗号資産交換業者に"仲介業者の指導・監督"を求めることも提案されています。

所属制を採用する場合は、ユーザーに損害が生じた際に所属先の暗号資産交換業者等が原則として損害賠償責任を負うことになるため、仲介業者にユーザー資産の預かりが禁止されることも踏まえて「財務要件は不要」との見解が示されています。

所属制の採用に関する説明資料(画像:金融庁説明資料)所属制の採用に関する説明資料(画像:金融庁説明資料)

暗号資産仲介業が新設されるとどうなるか?

暗号資産・電子決済手段仲介業(仮称)が実際に新設されると、ゲームウォレットなどに仮想通貨取引機能を実装する際のハードルが下がることになるため、事業者は仮想通貨取引機能を実装しやすくなり、ユーザーはゲームやウォレットなどの各種サービスで仮想通貨取引機能を利用できる機会が増えることになると期待されます。

現在はゲーム内通貨やゲーム内アイテムなどで暗号資産を利用するサービスも増えてきていますが、それらの暗号資産を売買・取引するためにはやや面倒なプロセスを辿る必要があったため、仲介業の導入でそのような問題が改善に向かう可能性があります。

実際にこれらの仕組みが採用された場合には「各事業者がどの暗号資産交換業者に所属するか」なども重要となり、所属先によってはユーザーの仮想通貨取引環境にも変化が生じる可能性があるため、今後は各取引所の対応などにも注目です。

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Souce:金融庁説明資料
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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