暗号資産の「規制明確化・税制変更」を求める要望を提出:新経済連盟
楽天やサイバーエージェントなどインターネットを通じたサービスを提供している大手企業が多数参加している経済団体「新経済連盟」は、2019年2月14日に金融担当大臣宛に「暗号資産の新たな規制に対する要望」を提出したことを発表しました。仮想通貨業界の健全な発展に向けた提案が複数記載されているこの申請内容をよりわかりやすく解説します。
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暗号資産の新たな規制に対する要望
仮想通貨関連のサービス提供に向けた準備を進めている「楽天」や「サイバーエージェント」などを含めた大手企業が多数参加している「新経済連盟」は2019年2月14日、現在もさらなる改善が進められている「仮想通貨規制」に関する内容にいくつかの変更や修正を求める「暗号資産の新たな規制に対する要望」を提出したことを発表しました。
この申請書には、
・投資型ICO
・決済型ICO
・カストディ業務
・デリバティブ取引
・税制
などに関する規制やルールに変更を求める内容が記載されており、業界の発展を促進できるより良い規制を実現するための提案が記されています。
「新経済連盟」が金融担当大臣に提出した要望は、以下の5点に分類されます。
【投資型ICO】「第一項有価証券」となる対象の明確化
「投資型ICOについて」では、これまでは広く流通する可能性が高いことなどから「第一項有価証券」として扱われるとされていたイニシャル・コイン・オファリング(ICO)で発行される投資型のトークンを「第一項有価証券」として全て一律に扱うのではなく、トークンを扱う権利などが特定の投資家に制限されている場合などには「第二項有価証券」として扱えるようにし、具体的な例外は「政令や府令」などで規定するようにすべきだと提案されています。
また「第一項有価証券」に該当する場合には、それらのトークンを扱うために「第一種金融商品取引業者」としての登録が必要となるため、参入の障壁が著しく高まってしまうことも指摘されており、新しい技術の発展を妨げることのないように留意すべきとも指摘されています。
【決済型ICO】発行体と交換業者の責任の明確化
「決済型ICOについて」では、これまではICOトークンを取り扱う仮想通貨交換業者に対して「トークン発行者に関する情報や事業計画書、プロジェクトの進捗情報、事業の実現可能性」などの情報を取引所利用者に対して提供すべきとされていた内容を「発行体」と「交換業者」に分類して、それぞれの責任を具体的に明確化すべきと提案されています。
仮想通貨関連の問題が発生した場合などには「仮想通貨交換業者」が責任を問われるケースも見られますが、より正確に言えば「トークンの発行体」がメインの情報源であるため"交換業者の責任の範囲を限定する"といった、より具体的な内容を定める対応をとることによって、仮想通貨交換業者の責任が過大になり過ぎないように留意すべきと説明されています。
また「トークンを取得する人数が少ない場合」や「少額発行の場合」「適格機関投資家や富裕層を対象とする場合」などのように一定の条件を満たす場合には、ICO規制の適用対象外にすべきとも提案されており、仮想通貨にはステーブルコインなどのように様々な種類や特性があるため、それぞれのトークンの性質を考慮したルール設計をすべきとも指摘されています。
【カストディ業務】規制対象となる業務範囲の明確化
「カストディ業務について」では、これまでは仮想通貨の保管・管理などを行うカストディサービスを扱う事業者に対して仮想通貨交換業者に適用される「顧客の仮想通貨の管理に関する規制」が適用されることになっていたのに対して、カストディ業務には様々な形態のものが存在するため、規制対象となる業務の範囲を明確にすべきと提案されています。
これに関しても、特定のケースでは規制を暖和させることが提案されており、一定の業務にはリスクに応じた規制を適用するか、カストディ規制の適用対象外として、具体的な範囲は「政令・府令」などで規定すべきとされています。
【デリバティブ取引】第一種金商業による取り扱いの実現
「デリバティブ取引について」では、これまでは金融商品取引法(金商法)が適用されるのと同時に「仮想通貨の現物取引と共通の課題が内在した取引であるため」という理由から仮想通貨交換業者に求められている対応が求められていた「仮想通貨デリバティブ取引」に関する要望が記載されています。
この項目では、「第一種金融商品取引業者」が"現物仮想通貨の引き渡しを行わない"デリバティブ取引を扱う場合には、仮想通貨交換業者としての登録を行うことなく「第一種金融商品取引業の範囲内」としてサービスを提供できるようにすべきということが記されています。
この理由としては、仮想通貨のデリバティブ取引には"現物仮想通貨を扱わないもの"も存在しており、そのようなサービスでは仮想通貨の引き渡しを行うわけではないため「現物取引と共通の課題が潜んでいる」とまではいえないと説明されています。このような理由から、仮想通貨のデリバティブ取引を扱う全ての業者に「仮想通貨交換業者」としての登録を求めるのは"過剰規制である"と指摘されています。
【その他】税制の変更3点
「その他(税制)」では、仮想通貨に関する現在の税金制度に関して「税制の適用」が暗号資産への投資の"阻害要因"にならないように3つの措置を講じることを検討すべきと提案されており、
・総合課税から「申告分離課税」への変更
・仮想通貨同士の交換は「非課税」にする
・「損益通算」や「損失の繰越控除」ができるようにする
という3点が挙げられています。
また一つ目の「申告分離課税」に変更することに関しては、税率を株やFXと同じ「20%」にすることが提案されています。
要望が承認されるとどうなるのか?
今回提出された要望が承認された場合には、ICOなどの仮想通貨プロジェクトや仮想通貨投資・取引などの発展を大きく促進することができると考えられます。
これら5つの要望は基本的にはどれも「仮想通貨関連規制の明確化」を求めるものであるため、これまでに重視されてきた"投資家保護"のための制度を維持しつつ、業界の発展や成長を阻害せずに、より理想的な規制環境を構築するための重要なステップとなる可能性があります。
これまでは急速に発展する仮想通貨業界に"最低限必要とされる大枠での規制"が定められていた印象も強いため、今回提案されたような「より詳細な規制」が作成されるのは時間の問題であるとも考えられます。世界規模で見ても特に厳しく仮想通貨に関するルールを設定している日本では、これまでの数年間で「安全な仮想通貨取引環境作り」が進められてきましたが、今後はこれらの技術を扱える開発者の育成を含めて、失われつつある関心を再び高めて「健全な仮想通貨業界」を発展させていくことが重要になると予想されます。
「新経済連盟」が提出した要望全てが承認されるとは限りませんが、これらの一部が実際に採用されるのであれば業界の発展を後押しする重要な基盤になると期待されます。今回の提案に対する回答や、今後発表される規制内容には大きな注目が集まります。
「新経済連盟」が公開している提案の詳細情報は以下の公式発表書類をどうぞ。
>「新経済連盟」が提案した内容はこちら