ブロックチェーンに迫る「量子コンピュータの脅威」IBM幹部らが警告
量子コンピュータがブロックチェーンや仮想通貨に深刻な問題を引き起こす可能性がある、という意見は以前から世界各地で指摘されており、これまでにも重要なトピックの一つして扱われてきました。2019年のはじめに世界で初めて"量子コンピュータの商用化"を発表した「IBM」の関係者たちは、実際にその脅威が間近に迫っていることを警告しており、早急な対応を取るべきだと説明しています。
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量子コンピュータが「ウォレット・秘密鍵」最大の脅威に
IBMの幹部たちは仮想通貨とブロックチェーンに対して量子コンピューターが与える脅威について議論しています。
IBMが開催した「IBM Think 2019」の中でIBMのブロックチェーン・デジタル通貨担当副社長であるJesse Lund(ジェシー・ルンド)氏は、量子コンピュータが仮想通貨の「ウォレット」や「秘密鍵・公開鍵」に深刻な影響をもたらす可能性があると警告しています。
量子コンピュータは「将来的に公開鍵から秘密鍵をリバースエンジニアリング(*1)することができるようになる」と言われており、もしそうなった場合には、既存の仮想通貨に深刻な問題になる可能性あると考えられていますが、ルンド氏は現在公開されているすべてのブロックチェーンのうち少なくとも半分が影響を受ける可能性があると語っています。
(*1)リバースエンジニアリング:ソフトウェア・ハードウェア製品の構造を分析して、製造方法、構成部品、動作、ソースコードなどといった技術情報を調査し明らかにすること
秘密鍵をリバースエンジニアリングすることは「ウォレットを管理すること」を意味します。あなたの秘密鍵は本質的にあなたの資産を保護するウォレットにあたります。そしてそれは本当の脅威だと思います。
ビットコインは公開されている元帳です。つまり外部から「どの公開鍵が多くの残高を保有しているのか」を確認することもできるようになっているため、攻撃者はそのような何千ものビットコインをターゲットにすることができます。私はこれが短期的な脅威であるとも思います。
仮想通貨も「早急な対策」が必要
伝えられるところによると、量子コンピュータの脅威は「通信/スマートカー/パーソナルデバイス/個人用・政府用データベース」といったほぼ全ての暗号化システムに影響を及ぼすとされているため、IBMのチームは「ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を含めたほとんどの仮想通貨は量子コンピュータの脅威を軽減するための対策を取る必要がある」と考えています。
「IBMデータセキュリティサービス」の最高技術責任者であるNev Zunic氏は、コード担当者は今からでも「量子コンピュータの脅威」に対処するための取り組みを始めるべきだと述べています。
企業は製品のライフサイクルにおける"ある時点"でハッキングされることのないように、今のうちから量子コンピュータやそれがもたらす潜在的なリスクを認識しておく必要があります。
また、スイスの「IBM Research」でセキュリティおよびプライバシーグループのマネージャーを務めているMichael Osborne(マイケル・オズボーン)氏は、量子コンピュータは仮想通貨に「タイムリミット」を設けることになるため、事態が深刻化する前にしっかりとした計画と対応を取るべきだと警告しています。
すべての人々が参加する必要があることによって「移行するのが複雑なシステム」なのであれば、より早めに考え始める必要があります。実際に脅威となるまで待ってから移行する方法を考え出すことはできません。これらのことに関しては十分に余裕を持って計画を行うべきです。
私たちにはもう30年も残されていません。リスクはあまりにも大きすぎます。量子コンピューティングの利点はそれよりも古いものを破壊することになるでしょう。
ブロックチェーンの「改ざん不可能」は通用しない?
Zunic氏は、量子コンピュータによる脅威が実際に私たちの身に及ぶまでには10年以上かかる可能性があると述べていますが、「今日送信されている暗号化されたデータも、後で量子コンピュータの影響を受ける可能性がある」と付け加えています。
もう一つの考慮すべき事項は「現在行われている暗号化された通信は、今日傍受されて後で変更を加えるために保存される可能性がある」ということです。
つまり、政府機関、組織、金融取引などで機密性の高い通信が行われている場合には、それらの通信も傍受され、保存された上で将来的に変更される可能性があります。
そのため、組織はこれらのことを今のうちに理解して、将来「量子攻撃」を受けた際に自分自身を証明できるようにするために、今のうちから行動を起こす必要があります。
量子コンピュータは、ここ数年で社会に知られるようになってきた存在でもあるため、その具体的な仕組みや機能を理解している人はほとんど限られています。しかし、これらの技術を理解している専門家の人々は以前から「量子コンピュータがもたらす脅威」に対して警告を発し続けており、多くの人々が早急な対応を取ることを勧めています。
現時点でも量子コンピュータへの耐性を備えた仮想通貨は複数存在していますが、発行されている仮想通貨全体でみるとそのような耐性を備えた通貨はごくわずかです。しかしながら量子コンピュータの実用化は確実に進んでおり、2019年1月8日にはIBMによって世界初となる商用量子コンピュータ「IBM Q System One」が発表されています。
これらのテクノロジーは急速な成長を続けていますが、仮想通貨に関わりを持つ人々は特にこれらの技術に今のうちからしっかりと向き合っていくことが重要であると言えるでしょう。
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