バイデン大統領:米SECによる仮想通貨の会計規則「SAB 121」の撤回を拒否
SAB 121の廃止法案に拒否権を発動
アメリカのジョー・バイデン大統領は2024年5月31日に、米国証券取引委員会(SEC)による仮想通貨の会計処理に関する規則「SAB 121」の撤回を求める決議に対して拒否権を行使したことを正式発表しました。
SAB 121は、米SECが2022年3月発表した指針のことであり、暗号資産(仮想通貨)の保管を検討している機関に対する規制当局の会計ガイドラインの概要を示したものとなっています。
このガイドラインでは、企業が顧客から預かった暗号資産を自社の貸借対照表上で負債計上し、対応する資産も時価評価で計上することが求められており、銀行が顧客の代わりに仮想通貨を保管することを禁止する内容も含まれていたため、各所で批判的な意見が多数出ていました。
米国では「SAB 121の撤回を求める決議案」が下院・上院の両方で可決され、ホワイトハウスに送られていましたが、今回の発表ではバイデン大統領がこの法案を拒否したことが正式発表されています。
「SECの権限を弱体化させるリスクがある」と説明
公式発表では「SAB 121は暗号資産を保管する特定の企業の会計義務に関するSECスタッフの技術的見解を反映したものである」と説明した上で「このような形でSECスタッフの慎重な判断を覆すことは、会計実務に関するSECの広範な権限を弱体化させるリスクがある」とコメントされています。
また、バイデン氏は「我が政権は消費者と投資家の幸福を危険にさらす措置を支持しない」とも述べており、「暗号資産イノベーションの潜在的な利益と機会を活用するためには、消費者と投資家を保護する適切なガードレールが必要だ」と強調しています。
バイデン大統領が拒否権を行使することは以前から予想されていましたが、今回の公式発表を受けて仮想通貨業界からは不満の声が数多くあがっています。
仮想通貨業界では、ここ最近で「バイデン政権は次の大統領選に向けて仮想通貨を支持する姿勢に方向転換した可能性がある」との意見も出ていましたが、今回の拒否権発動によってバイデン政権が仮想通貨に後ろ向きであることがより強調された形となっています。
なお、拒否権を覆すためには議会両院における再投票で3分の2以上の賛成票を得る必要があるとのことで、具体的には下院で290名、上院で67名の賛成を得る必要があると伝えられています。
以前の投票結果は「下院が228対182、上院は60対38」だったと報告されているため、今後の動きなどにも注目が集まっています。
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