Levi’s:ブロックチェーンベースの「労働安全衛生マネジメントシステム」導入へ
デニムジーンズのブランド「Levi's(リーバイス)」で知られる米国の大手衣料品メーカー「Levi Strauss & Co.(リーバイ・ストラウス)」は、工場の安全衛生監査を強化するためにブロックチェーン技術に基づいた新しいシステムを導入するための取り組みを開始しています。
こちらから読む:Levi'sが工場の安全衛生監査に活用する「ブロックチェーン技術」とは
工場作業員の「健康状態・幸福度」を正確に管理
Levi's(リーバイス)の工場にブロックチェーン技術を導入するプロジェクトは、
・ConsenSys(コンセンシス)
・New America(ニューアメリカ)
・ハーバード大学公衆衛生大学院(HSPH)
の協力によって進められており、導入される新しいシステムには「ConsenSys」が提供するブロックチェーン・ソリューションが使用されています。
また、開発が進められる「ブロックチェーンベースの労働者福祉システム」は、ハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)の衛生管理イニシアチブである「SHINE」に基づいて構築されており、このシステムの開発のために2年間に渡る共同作業が行われると伝えられています。
「SHINE」は、2015年以来「Levi Strauss&Co.」の工場で労働者の健康と幸福指数を監査してきており、これまでには9,000人以上のスタッフが調査を受けていると伝えられています。今回のプロジェクトでは、情報の改ざんが極めて困難とされる「ブロックチェーン技術」を取り入れることによって、匿名で安全に工場作業員の「健康状態」や「幸福度」をより正確に測定し、追跡できるようにすることを目的としています。
2019年内には、5,000人の労働者を雇用しているメキシコの3つの工場でテストが行われる予定となっており、2020年には別のテストが行われる予定となっています。また、最終的には「外部の労働安全衛生監査員」を「労働者による"自己申告型"のインフラストラクチャ」に置き換えていく予定であるとも説明されています。
情報管理を合理化する「革新的ソリューション」
「ハーバード大学公衆衛生大学院」のEileen McNeely(アイリーン・マクニーリー)博士は、このブロックチェーンシステムは「企業に新しい革新的なソリューションを提供する」と語っています。
過去25年間、サプライチェーンでの作業は主に監査員によって監視されてきました。私たちはこれまでの研究の結果、深刻な外傷的事象があることからこのシステムだけでは十分な効果が得られないことを理解しています。
ブロックチェーン技術に基づいた分散型のシステムは、新しい解決策を提供します。サプライチェーンにおけるブロックチェーンのユースケースの大部分は「資材の追跡」を目的としているため、この技術を「人間の状態の評価」に活用することはエキサイティングなイノベーションだと言えるでしょう。
「New America」の「Blockchain Trust Accelerator」創設者であるTomicah Tillemann(トミカ・ティルマン)氏は、このソリューションを使用することによって「労働者のデータをより正確に収集・分析することができる」と説明しています。
このソリューションを使用すると、安全かつ標準化された状態で監査することができる透明性の高いプラットフォームで労働者の調査データを集約・分析することができます。
ブロックチェーン技術は、工場労働者の健康と幸福度をより正確に測定し追跡するための革新的な方法を提供しています。
ConsenSysの創設者であるJoseph Lubin(ジョセフ・ルービン)氏は「イーサリアムの技術を活用することによって、重要な情報を安全かつ匿名で共有するための環境を構築することができる」と説明しています。
イーサリアムは、二者間の信頼に対する障壁を減らし、重要な情報を安全かつ匿名で共有するための透明な環境を作り出します。
私たちは、従業員・サプライヤー・消費者が、工場・製品・ブランドに関する十分な情報を理解した上で決定を下すことができるシステムの開発・テストを行い、より良いシステムを構築していくことを目標としています。
ブロックチェーン技術は現在、非常に幅広い分野で応用されており、従業員や作業員の情報管理にも活用され始めています。一部の専門家からは「実用的なユースケースは限られている」との意見も出ていますが、実際にどのような効果が得られるかを検証するための取り組みは、今後も幅広い分野で模索されていくことでしょう。
ブロックチェーン技術のその他の活用事例はこちら