デジタルドルプロジェクト:米CBDCの基盤となる「ホワイトペーパー」公開
米国の連邦準備制度理事会(FRB)が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルドル」についての調査・研究・提案などを行うプロジェクトである「Digital Dollar Project(デジタルドルプロジェクト)」は、2020年5月28日にデジタルドルの目的や使用例などを説明したホワイトペーパーを公開しました。
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デジタルドルプロジェクトとは
Digital Dollar Project(デジタルドルプロジェクト)とは、米ドルのデジタル化に向けた取り組みを推進する非営利団体である「Digital Dollar Foundation(デジタルドル財団)」と、コンサルティング大手「Accenture(アクセンチュア)」のパートナーシップによって立ち上げられたプロジェクトです。
「デジタルドル財団」は米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長であるJ.Christopher Giancarlo(J・クリストファー・ジャンカルロ)氏、LabCFTCの元ディレクターであるDaniel Gorfine(ダニエル・ゴーファイン)氏、投資家のCharles Giancarlo(チャールズ・ジャンカルロ)氏らによって設立され、連邦準備制度理事会(FRB)とは別に活動を行なっています。
このプロジェクトは、米国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)にあたる"デジタルドル"のメリットに関する研究や議論を促進し、デジタルドルの開発・テスト・採用を検討する際になど活用できるモデルを提案することを目的としていると説明されています。
ホワイトペーパーで「デジタルドル」の概要説明
今回公開されたホワイトペーパーでは、
・デジタルドルプロジェクトの概要
・中央銀行デジタル通貨(CBDC)の概要・説明
・デジタルドルの具体的な内容やメリット
・デジタルドルの活用方法
などといった様々な項目について、合計50ページの資料で詳しく説明されています。
デジタルドルプロジェクトが提案している"デジタルドル"は、現行の通貨を置き換えるのではなく、すでに流通している硬貨や紙幣と共存するものであることが説明されており、通貨の流通は"既存の2層銀行システムを維持すべきである"とされています。
デジタルドルは「金融機関間の取引で利用される"ホールセール決済"」と「企業・個人が利用する"リテール決済"」の両方で活用されることとなっており、FRBは商業銀行などの金融機関にデジタルドルを発行して流通させ、消費者の人々は自分の口座に資金を保管したり、デジタルウォレットでデジタルドルを保管したりできる仕組みとなっています。
(画像:Digital Dollar Project ホワイトペーパー )
ホワイトペーパーでは『非常に重要な公共財である米ドルのインフラをアップグレードすることによって、現在・将来の世代に柔軟性・オプション性・安定性・繁栄がもたらされると信じている』と説明されており、デジタルドルを発行することによってもたらされる利点が強調されています。
また、規制要件を満たすために「プライバシー対策・本人確認・資金洗浄対策」なども導入されることになっており、金融政策やインフレ対策に影響を与えないように、あくまでも"新しいツール"として活用していくことが説明されています。
米ドルに裏付けられたステーブルコインは既に複数発行されていますが、デジタルドルはそのような民間企業の取り組みに対抗するためのものではないとのことで、イノベーションのきっかけとなる存在を目指しているとのことです。
今後の取り組みとしては、潜在的なユースケースの調査やテストなどを実施していく予定であるとされており、パブリック・プライベート両方の主要な構成グループとの議論も行なっていくと説明されています。