日本暗号資産取引業協会「仮想通貨送金ルールに関する改正案」でコメント募集

by BITTIMES

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2022年2月10日に、自主規制規則『暗号資産交換業に係るマネー・ローンダリング及びテロ資⾦供与対策に関する規則』等の一部改正案に関するパブリックコメントの募集を開始したことを発表しました。この改正案では「JVCEA会員の暗号資産交換業者がユーザーから依頼を受けて仮想通貨を暗号資産取引所などに送金する際には、受取人の氏名・住所などの情報を取得しなければならない」といった内容が追加されています。

こちらから読む:コインチェック、XYMの配布"16日"に実施「暗号資産」関連ニュース

暗号資産送金規制についてパブリックコメントを募集

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は2022年2月10日に、自主規制規則『暗号資産交換業に係るマネー・ローンダリング及びテロ資⾦供与対策に関する規則』等の一部改正案に関するパブリックコメントの募集を開始したことを発表しました。

パブリックコメントとは「意見公募」のことであり、今回は「暗号資産交換業者に適用される資金洗浄・テロ資⾦供与対策のための規則改正案」について一般からの意見募集が行われています。この規則は暗号資産取引所などの交換業者に適用されるものであるものの、変更が適用されれば一般の暗号資産取引所ユーザーにも影響が出るものであるため、日本の暗号資産ユーザーにとって重要な内容となっています。

JVCEAが今回公表した改正案はそのほとんどが「新しく追加された内容(以前の内容を一部変更するものではない)」となっており、具体的な内容は1989年に発足した国際組織である「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)」が定める「トラベルルール(資産移転における通知義務)」を適用するために"暗号資産の送金ルールをより厳しく設定するもの"となっています。

送金規制改正案の具体的な内容は?

暗号資産送金時に情報取得が必要になる

今回公表された改正案では「JVCEAに加盟している暗号資産取引所などの会員がユーザーから要望を受けて暗号資産交換業者などに仮想通貨を送金する場合には、以下の情報を取得しなければならない」ということが記載されています。

  1. 送付依頼人の氏名(法人の場合は名称)
  2. 送付依頼人の暗号資産アドレス
  3. 送付依頼人の住所(法人の場合は本店又は主たる事務所の所在地)又は顧客識別番号
  4. 受取人の氏名(法人の場合は名称)
  5. 送付先の暗号資産アドレス

規制対象外取引所などへの送金でも情報取得が必要

また「JVCEAに加盟している暗号資産取引所などの会員がユーザーから要望を受けて、海外取引所などというった規制対象外の暗号資産交換業者などに仮想通貨を送金する際には、以下の情報を送付依頼人から取得しなければならない」ということも記載されています。

  1. 送付先の暗号資産アドレス
  2. 受取人が送付依頼人本人か否か。本人ではない場合は受取人の氏名・住所に関する情報(法人の場合は名称・本店又は主たる事務所の所在地)
  3. 暗号資産交換業者等の名称

送金のリスク評価が必要で場合によっては拒絶対応も

さらに、今回の改正案では「暗号資産交換業者は送付先取引所や所得した送金情報など、対象となる暗号資産送付の資金洗浄リスクを評価して暗号資産を送付しなければならない」ということも説明されており、「リスクに応じて"送付拒絶"などを含めた適切な対応を行わなければならない」ということも記載されています。

つまりこの改正案が適用された場合には、日本国内の暗号資産取引所から"資金洗浄リスクがある"と評価された海外取引所などに暗号資産を送金する際には、それらの送金が拒否される可能性があることになります。

規制対象は「10万円を超えるBTC・ETHの送金」

なお、この新規則の対象となる暗号資産としては「ビットコイン(BTC)」と「イーサリアム(ETH)」が挙げられており、総金額が日本円換算で10万円を超える場合に適用されると記載されています。

今回の改正案ではBTC・ETH以外の暗号資産については触れられていないものの、将来的には規制対象となる暗号資産や送金額が拡大される可能性もあるため注意が必要です。

新規則は「2022年4月1日」から施行

今回の発表は先述した規則改正案についての意見募集となっていますが、改正案の中には『この規則は2022年4月1日から施行する』と記載されているため、今回の意見募集で大規模な反対意見や内容修正を求める意見が出なかった場合には、これらの新規則が今年の春から適用される可能性があります。

「2022年4月1日〜2022年9月30日までの期間にかけては、受取人住所などの情報取得義務は適用しない」とも記載されているため、BTC・ETHの送金で住所記載などがすぐに必要になることはないと考えられますが、今回の改正案が適用された場合にはそれほど遠くない将来に暗号資産送金で住所・氏名などの情報入力が求められるようになる可能性があると予想されます。

送金ルール改正案のメリット・デメリット・問題点

今回発表された改正案に対してはすでに暗号資産コミュニティからも様々な意見が出ており、取引所から自己管理型ウォレットに送金するとその後はこれまで通り自由に暗号資産を送金できることなどから『暗号資産送金で2回の送金手数料がかかるだけで、しっかりとした資金洗浄対策にはならず、管理・送金コストが増大し、暗号資産の利点を損なうことにもつながる可能性がある』と指摘する声も出ています。

記事執筆時点で今回の改正案について語られている意見や、メリット・デメリット・問題点としては以下のようなものが挙げられます。

送金ルール改正案のメリット

  • 資金洗浄などの犯罪行為を減らせる可能性がある
  • 詐欺・違法な人物・プロジェクト・取引所などへの送金を減らせる可能性がある
  • 犯罪者の身元情報を特定しやすくなる
  • 暗号資産の送金情報が管理しやすくなる
  • 脱税の疑いがある投資家を見つけやすくなる

送金ルール改正案のデメリット・問題点

  • 暗号資産送金時の情報入力が面倒になる
  • 暗号資産を送金するために相手の住所・氏名を聞かなければならない場合が出てくる
  • 場合によっては主流の海外取引所への送金ができなくなる可能性がある
  • 一度個人のウォレットに送金すればこれまで通り送金できるため意味がない可能性がある
  • 自己管理ウォレットを経由することによって送金手数料が2度かかる
  • 送金に時間と手間がかかり「素早く安く世界中に送金できる」という暗号資産の利点が損なわれる
  • 住所・氏名・保有量などが外部に漏れると、詐欺などの標的にされるなど別の犯罪リスクが高まる
  • 暗号資産が扱いづらいものになり、業界発展の妨げになる可能性がある

なお、今回公表された改正案の内容は以下のリンク先ページで確認することができるようになっており、パブリックコメントの募集期間は「2022年2月10日〜2022年3月2日24時00分まで」とされています。

>>「日本暗号資産取引業協会」の公式発表はこちら
>>「改正案の詳細」はこちら