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マレーシアで進む「不動産のトークン化」ブロックチェーンが活用される理由とは?
マレーシアの不動産弁護士でありながら「LePro Systems Bhd」の共同創設者でもあるElizabeth Siew(エリザベス・シーウ)氏は、最近開催された「World Blockchain Summit KL 2019」の中でマレーシアの不動産業界が直面している問題点を取り上げ、ブロックチェーン技術でそれらを解決する方法やそれによって得られるメリットなどについて概説しました。
こちらから読む:マレーシアの不動産業界で活用される「ブロックチェーン技術」とは
ブロックチェーンが「不動産業界」にもたらすメリット
ブロックチェーン技術の特に重要な利点としては「全ての取引に透明性をもたらすこと」や「情報の改ざんを防止できること」などが挙げられます。全ての企業や業界がこれらのメリットを必要としているわけではありませんが、マレーシアの不動産業界は積極的な姿勢でこの技術の活用に取り組んでいます。
不動産業界でブロックチェーン技術を活用することによって得られるメリットとしては、次のようなものがあると言われています。
「より詳しい情報」が管理可能になる
ブロックチェーン技術を使用すると、経度・緯度などの「2次元的な座標情報」だけでなく、高度や時間といった「4次元的な情報」を識別することができるとされています。
詳しい情報を記録・管理できることによって得られるメリットは非常に多く、過去の歴史を辿って「占有率/所有権/使用方法」といった様々な関連情報を確認することもできるようになります。
土地や不動産に「高い流動性」をもたらす
不動産の所有権が「トークン化」されることによって、以前は「流動性のない資産」と考えられていた不動産や土地に高い流動性をもたらすことができます。エリザベス氏によると、マレーシアでは過去数年間に渡って不動産を購入するための銀行ローンを承認するのは非常に困難な状態が続いており、これによってマレーシア国内で住宅の所有に関する大きな問題を生み出していたと説明されています。
ブロックチェーン技術を用いて不動産をトークン化することによって、銀行から資金を調達する際のプレッシャーを取り除くことができます。また、マレーシアではトークン化された不動産は不動産として分類されていないため、投資家は税金の支払いを回避することができるとも言われています。
「詐欺の防止」や「業務の簡素化」
スマートコントラクトを使用して取引を行えば、詐欺などの懸念に対処しながら「経理」や「キャッシュフロー管理」などのプロセスを簡略化することができるといった利点もあります。
「不動産のトークン化」に伴う懸念点
不動産をブロックチェーン技術でトークン化することによって得られる利点は多く、大きな可能性を秘めていると考えられますが、エリザベス氏は「ブロックチェーン技術はまだ成熟していないため、複数の問題点や懸念点がある」ということも説明しており、現時点ではまだ30〜40%の水準にしか達していないと述べています。
不動産トークンの価値が「無意味に高まる可能性」
エリザベス氏は「不動産をトークン化することによって"新しい価値"が生まれる訳ではない」ということを強調しています。仮想通貨ブームの時に見られたように「ブロックチェーン」や「仮想通貨」という言葉は、実際には全く関係のないものにも高い評価や価値をつけてしまう場合があります。
「トークン化する」というのは、あくまでも"不動産をより効率的に管理するための手段"であるため、「1,000万円の物件がトークン化されたことによって1,500万円になるといったことはない」ということを認識しておく必要があります。このような誤解は最終的に詐欺などの問題に発展する可能性があるため、「不動産トークンの価値」はあくまでも「不動産の評価に基づいたもの」である必要があります。
「全ての詐欺」を排除できる訳ではない
ブロックチェーン上で情報が管理されているからといって、それらの情報や不動産自体が「全て信頼できる」というわけではないということは十分に理解しておく必要があります。取引が本物であった場合でも、偽の情報が記録されていた場合でも、詐欺行為が行われる可能性はあります。
不動産弁護士としての長い経歴を有しているエリザベス氏は、「土地の権利書の偽造」や「住宅ローンの詐欺」などの違法行為や「複数の権利証が異なる銀行からの借り入れに使用されている」といったケースがマレーシアで流行していると警告しています。
ブロックチェーン技術は基本的に「一度記録された情報を改ざんすること」はできないようになっていますが、そもそも記録された情報が間違っている場合なども存在するため、現時点ではブロックチェーン上にデータを記録する前に「内容が適切であるかどうか」をしっかりと確認して、不正行為などが行われないような対策をとる必要があります。
マレーシアでは現在、3つの土地所有権をデジタル化しているものの、物理的な検証行う必要があるため、非常に長い期間を要していると報告されています。
インターネットのような「オープンシステム」ではない
最後の注意点としては「現在使用されているブロックチェーンが、インターネットのような"オープンシステム"ではない」ということが挙げられており、そのかわりにイントラネットのような"クローズドシステム"を使用していると説明されています。
そのため「自動的に他のチェーンに渡った場合には、瞬時に情報を検証することはできない」とされています。
土地や不動産の情報を適切に記録して管理するためには、トークン化する前の情報は絶対に正確なものである必要があるため、複数の懸念点に対処しながら確実に不動産を管理するためのシステムを構築するためには、閉鎖的な環境で必要な情報を扱うことも重要となります。
このようなことから、完全にオープンな環境で安全かつスムーズな取引を行うことができるようにするためには、今後も研究開発や改良が必要になると考えられます。
ブロックチェーンが解決する「3つの問題」
ブロックチェーン技術によって"解決できる可能性がある問題点"としては「財産詐欺」「財産税の脱税」「住宅の分配」の3つが挙げられています。
財産詐欺
先述したようにマレーシアでは多くの詐欺事件が発生していますが、ブロックチェーン上に正確な情報を記録して管理することができればこの問題を解決できる可能性があります。
財産税の脱税
不動産所有者が賃貸収入などを政府に報告しなかった場合には、固定資産税や不動産取得税を脱税した罪に問われることになります。ブロックチェーン上で不動産の情報を管理して各種政府機関との連携を取れば、脱税の可能性が発覚した際に容易に追跡を行うことができるようになります。
住宅の分配
マレーシア政府は「住宅の所有」を奨励するために多大な努力を行なっており、国民に対して手頃な価格の住宅を数多く共有していると伝えられています。しかしこれらの住宅の管理システムはそれぞれの州政府が管理しており、州の間で共有されていないため、一元管理できていないとされています。
そのため、人々は様々な州の手頃の金額の住宅を購入しており「適切に住宅が分配されていない」という問題があるとされています。しかし全ての情報がブロックチェーン上で管理されれば、手頃な価格の住宅を必要としている人にのみこれらの住宅を提供することができるようになります。
不動産の管理にブロックチェーン技術を活用する動きはすでに複数の国で進められています。国によって法律の内容や環境は異なるものの、ブロックチェーン技術の活用によって改善できることは多いため、今後もこの技術は様々な国や地域で活用されていくと予想されます。
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