自民党:中央銀行デジタル通貨の導入・流通に向けた「法改正準備」求める
自民党の新国際秩序創造戦略本部が2020年内に政府に提言する内容を示した「中間取りまとめ」を策定したことが明らかになりました。この中では「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の早期導入と流通を促進するために、関連する法律の改正準備を進めること」なども提案されていると報告されています。
こちらから読む:金融庁、"2021年度 税制改正要望項目"を公開「国内ニュース」
国家戦略確立に向けた「中間とりまとめ」策定
自民党の「新国際秩序創造戦略本部」は、新型コロナウイルスなどの感染拡大などによって浮かび上がった課題の洗い出しを行い、その解決策を示すことによって次なる危機に備え、コロナ後の国際情勢の変化を見据えながら、日本の国際社会における存在価値を高めていくことなどを目的として2020年6月に政務調査会の中に設立された新しい本部です。
今回の報道ではこの「自民党 新国際秩序創造戦略本部」が、経済安全保障に関する国家戦略の確立に向けて2020年内に政府に示す提言の"中間とりまとめ"を策定したことが報告されています。
「中間とりまとめ」の中では主に以下のような内容の提案が行われており、これらの提案の中では「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入に向けた法整備の準備」や、民間を含めた社会全体で取り組みを推進するための「経済安全保障一括推進法(仮称)の制定」などが求められていると報告されています。
- 中央銀行デジタル通貨の導入に向けた法整備の準備
- 経済安全保障一括推進法(仮称)の制定
- 「ファイブ・アイズ」への参画を含めた国際連携の強化
- 「6G」に集中投資を行い、国際標準を形成
- 外国資本による土地取引を規制
- 研究開発や特許の情報公開を制限
「中央銀行デジタル通貨に関する法整備」なども提案
中間とりまとめの中では、新型コロナウイルス終息後をにらんだ国際社会の動きについて『米中対立の先鋭化をはじめ、各国が国際秩序の在り方を模索している』と指摘されており、中国などで「デジタル監視型・国家資本主義型の新たな国際秩序」が伸長しつつあるとの懸念を示した上で、日本における「経済安全保障一括推進法(仮称)の制定」が必要だと強調されています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関しては、中国で中央銀行デジタル通貨「デジタル人民元」の開発・準備が着々と進められていることなどを踏まえた上で、日本銀行(日銀)がデジタル人民元の実証実験の状況を把握して、米国や欧州と協力しながら「所要の法改正に係る整理」を行い、CBDCの早期導入と流通を図るべきとの提案も行われています。
この法改正は日銀法改正を念頭に置いたものであり、日銀法で「日銀が銀行券を発行して、財務省が紙幣の製造やその手続きを承認する」と定められている中に「デジタル通貨の発行」に関する項目を加える法改正が見込まれていると報告されています。
その他の提案としては「情報収集能力を強化するために英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み"ファイブ・アイズ"への参画を含めて国際連携を強化すること」や「最先端の通信規格"5G"に続く"6G"の研究開発に集中投資を行い、世界初の製品化と国際標準の形成を目指すこと」などが挙げられており、この他にも以下のような内容が盛り込まれていると報じられています。
- 選挙のかく乱などを狙ったフェイクニュースへの対処
- 排他的経済水域(EEZ)内での資源開発
- 新たな感染症流行に備えた新型インフルエンザ対策特別措置法の改正
日本で進められているCBDC関連の取り組み
日本政府は2020年7月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の中で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する項目として『各国と連携しつつ検討を行う』と盛り込んでおり、日本銀行は2020年7月に決済システム全体のデジタル化やCBDCの検討などを行う「デジタル通貨グループ」を決済機構局に新設しています。
日銀は中央銀行デジタル通貨の国際共同研究グループを通じて欧州中央銀行(ECB)などを含めた複数の中央銀行とCBDCに関する共同研究を進めていますが、欧州中央銀行は最近EU圏のCBDCである「デジタル・ユーロ(Digital Euro)」の商標登録を申請したと報告されているため、今後は日本でも「デジタル円」の発行に向けた取り組みが加速する可能性があると考えられます。
(参照:日本経済新聞)