ブロックチェーンが高級品の「品質」を証明|分散型管理がもたらすメリット
ブロックチェーン(blockchain)の技術は、高級品市場を大きく変える可能性を秘めています。鑑定結果や原産地などのあらゆる情報を信頼できる方法で安全に管理することができるため、「商品の品質保証」「公平な価格設定」「偽造品の流通防止」などを可能し、販売者と消費者の間に存在する多くの問題を解決することができます。
こちらから読む:高級品の品質を証明する「ブロックチェーン」の仕組み
証明書・鑑定書・品質保証書をデジタル化
高級品の市場価値は過去20年間で約3兆ドル(約330兆円)と評価されています。
しかしその一方では、高級品の「偽造ビジネス」も横行しており、リサイクルや個人間での中古品売買市場が拡大したことによって「品質保証」に関連する問題も増加しています。
これらの問題を解決するためには、商品とその流通を正確に追跡して偽造品問題を解決する、信頼性の高い検証システムが必要です。ブロックチェーン技術はこれらの問題を解決し、販売者と消費者の間に"より透明性の高い関係"を構築します。
正規店で購入したブランド物のバックであったとしても『証明書・鑑定書・品質保証書』などの品質を保証するものがなかった場合には、バックの価値が著しく低下する可能性もあり、ネットオークションや買取専門店などでの買取価格にも大きな影響を及ぼし兼ねません。
本物と見分けがつかないほどの「偽造品」が世界中に出回っている今の社会では、『信頼できる証明書』の存在が非常に重要となっています。
ブロックチェーン上で製品の生産から流通に至るまでの過程や関連企業などの情報を記録すれば、それらのデータは『信頼できる証明書』として機能します。
さらにこのデジタル化された証明書は、従来の証明書よりも遥かに安いコストで導入することができ、機能的で使いやすいというメリットも兼ね備えています。
ブロックチェーンで管理される証明書には、商品に関連するあらゆる情報が分散化された状態で記録されているため、証明書を紛失する心配もなく、スマートフォンなどのデバイスにアプリをインストールするだけで簡単に利用することができます。
生産工程や流通過程の追跡
高級品の追跡は、ブロックチェーン上で商品に関連するデータを記録することによって、従来の方法よりもはるかに効率的に行うことができるようになります。
高級品は何十年も使用される場合も多く、中古品市場の拡大に伴い、メーカー側も消費者や販売後の商品について把握する必要性が増してきています。
宅配サービスによる商品追跡機能はありますが、世界的にも有名なブランド品などの場合では、消費者は世界中に点在するため商品の流通に関わる人の数も計り知れません。従来の環境では宅配後に商品の情報を正確に追跡することは"ほぼ不可能"であり、リサイクル製品ともなれば、その商品が何人の消費者を経由したものであるのかを正確に証明するものはありませんでした。
しかしブロックチェーン技術を活用すれば、商品取引の履歴を信頼性の高い方法で記録することができます。記録されるデータには「生産工程」や「流通過程」などのあらゆる情報を含めることも可能であり、情報の改ざんなどにも対処することができます。これは商品がどこで生産され、何を経由して私たちの手元に届いたのかを知る手段となります。
またこの技術が浸透すれば、今まで各所の管理システムに委ねられていたデータを統合した情報管理が可能となり、情報の不統一や情報共有の手間を解消します。これにより商品の生産量や販売計画など、セールス戦略にも役立つことが予想されます。
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偽造品の防止
偽造品の流通は「市場の不安定化」を招く主な原因の1つであると考えられています。
若者の間で高級ブランドの「新品」を購入する代わりに高級ブランドの「中古品」を購入する人も増加している中で、それらの中古品に紛れて「偽造品」が出回ることによって、高級ブランドの評価が下がってしまうことが危惧されています。
現在では販売に至るまでの流通経路の多様化により、販売時の偽造者排除は非常に困難です。中古品市場ともなれば、統制するのはほぼ不可能な状況にあります。
販売者と消費者の間の大きな問題の一つである『信頼』の渇望は、高級品とブロックチェーン技術を結ぶきっかけとなります。
ブロックチェーンの技術は、商人だけでなく「消費者自身」が商品の品質を確認することができる環境を構築することができます。
「SEAL(シール)」というブロックチェーン企業は「NFCチップ」を用いた商品管理サービスを提供しています。このサービスでは製造工程で「NFCチップ」が商品内に埋め込まれているため、消費者は専用アプリで商品をスキャンするだけで簡単に「本物か偽物か」を知ることができるようになります。
同社は製造工程で「NFCチップ」を商品内に埋め込むことによって、消費者がアプリで商品をスキャンするだけで本物かどうか確認することができるサービスを提供しています。さらに商品の所有者は「NFCチップ」を通じてブロックチェーン上に所有者であることを記録することもできます。
SEALのサービスを利用すれば、仮に中古品であっても商品が本物かどうか簡単に確認することができ、万が一紛失した場合もそれを自分のものだと証明することができるようになります。
ブロックチェーンの実用化に取り組む企業
一般的な消費者にとって、商品の品質や信憑性を確認するのは非常に困難ですが、ブロックチェーン技術を活用すれば、不正行為を簡単に発見することができます。
販売者や消費者がこれらの高級品の履歴や起源、所有者情報などにアクセスできる仕組みが提供され、最終的には、消費者側が本物や偽造品を認識、監視することにより偽造品市場は縮小していくでしょう。
高級品を取り扱う業界でのブロックチェーン技術の活用は急速に進んでいます。
「ダイヤモンド」や「高級ワイン」などを取り扱う企業などでは、すでにブロックチェーン技術を用いたサービスの実用化が進んでおり、食品の品質保証などにも取り入れられています。